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<山本敦のAV進化論 第69回>

Ultra HD Blu-rayで「技術資産をフル活用」。パナソニック製プレーヤーの開発状況を聞く

公開日 2015/09/09 14:29 山本敦
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■Ultra HD Blu-rayソフトの現状とは?

IFA2015ではサムスン電子のプレスカンファレンスに20世紀FOXのキーパーソンが登壇し、来年初頭にUltra HD Blu-rayの対応パッケージソフトを発売することを明らかにした。Ultra HD Blu-rayのコンテンツ制作の近況については森氏に訊いた。

森氏によれば、ライセンシングのスタートとともにソフト周辺の技術開発も順調に進行しているという。

Ultra HD Blu-rayソフトの現状を語る森氏

「Ultra HD Blu-rayといっても、従来のBlu-rayに記録されるデータと大きく変わるのはビデオが4Kになり、圧縮コーデックがHEVCに変わるという部分だけです。オーディオは基本的に一緒で、字幕やメニューなどのグラフィクスは従来のBD用のデータがそのまま使えるので、最終的にはコストを抑えながらパッケージソフトをつくることができます」

メニュー画面などのグラフィクスを4K化する必要性については、以前BDA(Blu-ray Disc Association)の中でも検証が行われたという。その結果、森氏をはじめ関係者は2Kのままのグラフィクス系データをアプコン処理により4K化しても問題がないと判断した。

「もしグラフィクスも含めて全て4Kで作り直しとなれば、コストや制作の手間が余りにも大きくなってしまいます。その負担を極力減らすため、ビデオのデータを差し替えればUltra HD Blu-rayになる、という構造にしています。細かな所ではコピープロテクションの技術要件などが異なっていますが、大枠のワークフローはほぼ変わりません。新作タイトルのUltra HD Blu-ray化を促進できる環境作りを整えたいと考えています」

ビデオ信号が4K/HDRになるので、従来のBlu-rayディスクと比べて転送ビットレートもかなり上がるはずだ。この点についてもBDAでは様々な条件を想定したシュミレーションを行った。その結果4K/HDRの信号出力時にも、ピーク時を除けばビデオ信号の転送ビットレートを平均40Mbps程度に収められることがわかったという。

これは平均的な映画程度の尺度を持つコンテンツであれば、だいたい66GBのディスクに保存できる計算だ。さらに、66GBのディスクに格納するためのデータであれば、現在の主流である2層・50GBのディスク製作のプロセスがほぼそのまま応用できる。つまりディスク製作時の大幅コストアップにはつながらないと森氏は説明する。

Ultra HD Blu-rayの規格が定まり、ドキュメントが固まってライセンスが提供が始まればすぐに商品が出るというものではない。それぞれの素材を市販のパッケージに収録し、対応機器で再生できる形式に変換するための商用オーサリングのプロセスを固める必要もある。現在パナソニックはUltra HD Blu-rayのオーサリングに対応するツールを、アメリカのソフトウェア企業であるJargon Technologies社と協力しながら開発中だ。森氏は、現在ベータ版だが、アメリカと日本で10月頃から本格導入ができるはずとスケジュールを見込んでいる。

森氏は現状でのUltra HD Blu-rayへの反響について次のように語っている。

「規格のライセンスが始まって以後、引き合いは増えています。ネットワークの品質や環境に依存することなく、パッケージを買うだけで安定して高品位な4K/HDR映像が楽しめるディスクへの期待感は高いと実感しています。解像感だけでなく映像の色合いや明るさまで、4K/HDRの映像は肉眼で見る風景と変わらないほどのリアリティを持っています。ご覧になった方からは、本当の4Kテレビの良さが活きていくる技術として、好意をもって受け止められているようです」



4K/HDRは、テレビやプレーヤーの画質における王道の進化として、各ハードメーカーやコンテンツメーカーが力を入れて取り組んでいくテーマになることは間違いない。

これまで真摯に画質を練り上げ、それぞれの独自技術と経験を積み重ねてきたパナソニックをはじめとする日本メーカーの飛躍が楽しみだ。

(山本 敦)

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