[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第70回】高橋敦、ガチ購入第二弾!Resonessence LabsのDSD対応USB-DAC「CONCERO HP」
■ESS社の中核メンバーによって設立されたResonessence Labs
近年のDACチップの世界で際立って高い評価を受け、採用例が多いブランドのひとつがESS Technology社。全くポータブル用途向けではない「ES9018」に惚れ込み、無理矢理ポータブルプレーヤーに搭載している例もあるほどだ。すると消費電力の多さに対応するためにバッテリー容量が必要になり、ポータブルでありながら巨大化するし発熱も目立つわけだが、しかし確かに音は素晴らしい。
Resonessence Labsは、そのESS社でまさにES9018にも携わっていた中核メンバーによって設立されたメーカー。それだけを目的や強みとしているわけではないだろうが、「自らが携わったESSのDACチップの性能を完全に引き出すオーディオ製品を生み出す」ことには、やはりこだわりと自信があるはずだ。
そのResonessence Labsの近作のひとつがこのCONCERO HPなわけだが、これには最新鋭チップ「ES9018-2M」が採用されている。
従来のES9018が8ch分の処理回路を搭載しているのに対して、こちらは2chに絞り込んである。加えて全体の最適化なども行われたのであろう、チップの小型化と低消費電力化が進み、ESS社が言うには「スマートフォンにも搭載できる」チップだ。おかげでCONCERO HPはバスパワー駆動で高音質を実現できている。コストパフォーマンスまで含めたバランスを考えると今後要注目のチップだ。
■いよいよ音質レビュー!
では!音の印象をお伝えしていこう。なおCONCERO HPには44.1kHzと48kHzのデータをアップサンプリングする機能も用意されているが、ここではその機能を使わない素の状態で音質をチェックした。組み合わせた再生アプリはAudirvana Plus 1.5.10。ヘッドホンはAKG「K712 PRO」。
最初に全体の印象を述べると、とにかく際立つポイントがふたつある。
まずひとつは、有り合わせの表現で申し訳ないが「水晶のような音色」だ。素晴らしく透明で硬質な艶があり、輝きもあるのだが、眩しすぎるそれではない。また音色に含まれる鋭さも厚みも同時に表現してくれる。喩えて言えば、上等なストラトキャスターのような音色であり、さらに言えばそのセンターピックアップのようなバランスの良さだ。
もうひとつは、定位とそして空間系エフェクト成分のクリアさ、それらによる空間性の素晴らしさだ。定位は左右はもちろん前後の関係も明瞭。前後の定位は音量バランスの他に、空間系エフェクトの具合によっても調整される。空間系エフェクトというのは、原音に遅れてやまびこのような音を付加するディレイ、人工的な残響を付加するリバーブ等だ。原音の音色がクリアであるのと同様にそれらの成分もクリアに再現されるので、前後の定位にせよエフェクト自体の美しさにせよ、その再現性が高い。
ではいよいよ次頁から、様々な音源での印象を述べていこう。
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