[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第70回】高橋敦、ガチ購入第二弾!Resonessence LabsのDSD対応USB-DAC「CONCERO HP」
■続いて坂本真綾と乃木坂46を聴く
僕が特に重視する要素である女性ボーカルの感触は今回は坂本真綾さんの「30minutes night flight」でチェック。この曲では、完全に狙ってやっていると思われるが、歌い方も録音もその後の処理も、声を(言葉を)刺さらせる成分をかなり強く出している。再生環境によってはその刺さりが痛く不快なものにもなりがちだ。しかし本機を中心としたシステムではその刺さりが痛く気持ちよい。刺さらないのではなく、刺さりながら「だがそれがいい」と感じられるのだ。組み合わせたヘッドホンのK712 PROがそもそもそういう資質を持っているのだが、その点がさらに際立つ。
刺さる成分というのは、つまり人間の耳が特に敏感な帯域なので、その部分の再現性は音楽のあらゆる要素の再現性に大きく関わる。おそらく本機はそのあたりの再現性にピークや歪みがない。まだドラムスはこの曲を含めてだいたいどの曲でも全体の立体感が秀逸。音の大小の微細な再現性のおかげが大きいように思える。
もう一曲、ボーカルのアレンジやミックスのさらに確認すべく、乃木坂46「君の名は希望」を聴いてみた(公式MV)。グループアイドルの曲なので多数のボーカルが重ねられているが、その重なりの美しさは雑なシステムでは体感しにくい。
しかし本機を中心にしたこのシステムではそれを堪能できる。単なるユニゾンの部分であっても、異なる楽器を重ねた場合と同じく、異なる声質が重なることでの豊かな厚みや倍音感が生まれている。そういった一体としての魅力を実感できるのと同時に、それぞれの声の魅力も伝わってくる。僕は乃木坂のみなさんについて無知なのでわからないが、ファンの方であればどこを誰と誰と誰が歌っているのか、少なくとも推しメンがどこを歌っているのかは、はっきり認知できるだろう。
ボーカルの重ね方の妙。もしかしたら、この曲を聴くリスナーの多くはそこまでの細部は気にせず、それを感じられる再生環境で聴くことはないのかもしれない。しかしアレンジャーやエンジニアは、許された範囲、与えられた条件の中で手を抜いていない。それを実感できたのは嬉しい収穫だ。
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