[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第71回】'13年登場の「Lightningでミニマムなヘッドホンアンプ」2大機種を徹底比較!
■リモコンそのもの! Deff Sound DDA-L10RCBKのスペック
Deff Sound DDA-L10RCBKは、デザインもサイズ感も本当にリモコンそのものだ。
フロントフェイスにこそヘアライン加工が施されているものの、質感というか仕上げは値段なり。特に良くはないが悪くもない。ここで金属筐体にされたりすると重くなるし値段も上がるだろうし、実用的にはこれで良しと思う。
直付けケーブルの長さは60cm。ケーブルの太さ硬さは、一般的なイヤホンケーブルよりはやはり太く硬い。しかし取り回しに苦労するほどではないと感じる。取り回しのことで言えば、組み合わせるイヤホンのケーブルの方の長さが余ることになりそうだ。ケーブルワインダー等を使った方がよいかもしれない。
■Deff Sound DDA-L10RCBKの音質をチェック!
では試聴しての印象。数モデルのイヤホンやヘッドホンで試したがここでは特に、この連載で取り上げたばかりのDynamic Motion DM008での印象をピックアップ。「イヤホン自体の音調についてはリンク先参照」ということにできる都合の良さもあるし、もちろんこういった試聴のリファレンス機器たり得る実力も備えている。
まずは印象の概要をまとめると、iPhone 5に直挿しで聴いたときよりもやや硬質で明確な音像を得られることが大きな特長。特に中低域のリズムセクションはソリッドでガツンと来る強さを発揮。アンプとしての駆動力の十分さを感じられるところだ。その明確さは中高域でも共通で、おかげでクリアさや解像感といった要素も引き上げられる。
詳しく見ていこう。
上原ひろみさんのピアノトリオ作品「MOVE」は特に、iPhone 5直挿しでは音調がソフトというか甘くなってしまっている印象があった。
DDA-L10RCBKを挟むとそこは一気に改善される。前述のソリッドでガツンと来るというのはまさに特にこの曲で際立つ。ガツンというのは具体的に言えば音色のアタックの感触。個々の楽器のアタックが気持ち良いのはもちろんだ。そしてドラムス、ベース、ピアノ、全ての楽器のアタックの強さ速さが揃うことで、ユニゾンやリズムの決めがビシッと明確になる。この曲はリズムの構造が複雑なので、そこの表現の明確さは重要だ。DDA-L10RCBKはそこをしっかりとサポートしてくれる。
またハイハットやライドなどシンバルは硬質に明るい音色で音抜けが良い。クラッシュシンバルやスネアドラムのバシャーンバシッといった音色の濁点の歪みを、妙な表現だが「綺麗に荒っぽく」出してくれるのもポイントだ。この演奏のロック的なダイナミクスも引き出してくれる。
Perfumeのハードエレクトロな曲「Enter the Sphere」でも、まずはバスドラムを筆頭に中低音のリズムのキレが良い。やはり駆動力、制動力は十分だ。この曲ではシンセのジリジリとしたエッジ感もポイントだが、それもよく再現してくれる。粒の粗さや質感の荒さを出しつつも、下品ではない。ここもiPhone 5直挿しでは表現が甘くソフトになってしまっていたところだ。
ボーカルもやはり、硬質な透明感を得る。iPhone直挿しでは単にフォーカスが甘い感じだったのが、何というかホログラフィックな立ち姿を想像させるような、この音源本来の見え方に近づく。ここでも音像の明確さの向上が大きい。
最後に坂本真綾さん「30minutes night flight」でのボーカルの感触。iPhone直挿しだと声の刺さる成分が、適当に和らいでいるというよりは単に弱くて物足りないのが残念。DDA-L10RCBKを挟むとそこがちゃんとしてくれる。意図的にそのように歌われているであろうシャープさが生かされ、歌が耳に、言葉が心に刺さる。それでいて刺さりすぎて痛いこともない。
総じて最初に述べたように好印象だ。ただしハードタッチ傾向ではあるので、そこは好みが分かれるかもしれない。
次ページ続いてAstell&Kern「AK10」をチェック!