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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第79回】宇多田ヒカル「First Love」ハイレゾ音源全曲徹底レビュー!

公開日 2014/03/10 12:33 高橋敦
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■「ハイレゾにするにあたってこの音に“しました”」な、ほどよいリマスタリング

なお周波数分布解析も、さらに簡易的ではあるが、同じアプリで実施はしてみた。マスタリングにおいてコンプと並んで重要なツールであり過程である、「イコライザーによる周波数バランスの調整」の具合の確認だ。ただし前述のようにハイレゾ版はアプリの都合(扱える上限)でサンプリングレートを落としてあり、その処理精度等の問題もあるだろうから、本来の状態では全くない。”超”参考までに程度の情報として受け取ってほしい。

オリジナル盤「Automatic」。中段グラフの左側が低域で右側が高域。全帯域の音がぎゅっと詰め込まれている

ハイレゾ版「Automatic」。高域については参考にならないとして、全体的には大きな違いはない


オリジナル盤「First Love」。こちらも綺麗な周波数分布

ハイレゾ版「First Love」。こちらはややなだらかに高域側が落ちているか

…というわけで周波数分布は、前述の理由で高域側の結果は信頼性に乏しいのでここでは無視すれば、全体的には大きな違いは見られない。また実際に聴いた印象でも帯域バランスの極端な変化は感じられない。強いて言えば高域は少し柔らかく感じるが、それはコンプとの絡みでの耳当たりの変化という要素かもしれないし、ハイレゾの恩恵かもしれないので、イコライジングだけが理由とは断言できない。

いずれにせよ今回のハイレゾマスターでのイコライジングは、いかにも「イコライジングしました!」的な派手なものではなく、ほどよい調整の範囲に収まっていると言える。というわけでハイレゾ版の概要としては、

・音圧は控えめでダイナミクスレンジ重視
・結果、空間性に余裕がある

…というのが全体を通して共通する印象だ。それをもたらしている第一の要素はマスタリングの方針がオリジナル盤とは大きく異なることだと言える。もちろんハイレゾという器のスペックの意義も大きく、それを前提としたからこそのこのマスタリングでもあるだろう。しかしニュアンス的には、「ハイレゾにしたらこの音に”なりました”」ではなく「ハイレゾにするにあたってこの音に”しました”」の方が、より適当な理解だと思う。

なおハイレゾ配信と同時に15周年記念CDボックスも発売され、圧縮フォーマットでの新版の配信も開始。それらも新たなマスタリングとなっているので、オリジナル盤とは音が変わっているはずだ。興味があって予算に余裕のある方は、各フォーマット各マスタリングの違いを比べてみるのも面白いだろう。

First Love -15th Anniversary Deluxe Edition-

僕が「Automatic」「First Love」についてiTunes StoreのAAC/256kbps(Mastered for iTunes)を同じくグラフ化&実際に聴いて確認した限りでは、iTS版は「オリジナル盤よりは少し音量レベルと落として少しダイナミクスに余裕を持たせているが、ハイレゾ版ほど大胆な変化ではない」といった印象だ(オリジナル盤はCDフォーマットからのロスレスでiTS版はAACなので厳密な比較としては成立しないが)。

では、次頁からは本記事の本編である全曲レビューに突入する!(やっとかよ…)試聴にはヘッドホンとスピーカーを併用した。

次ページお待たせしましたハイレゾ版「First Love」全曲レビュー!衝撃のデビュー曲「Automatic」から

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