[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第90回】「リケーブル」徹底解説! 基礎知識から選び方、聴き比べまで濃密レポート
■実際の製品を試してみる
製品選びのポイント解説は以上だ。最後に、実際の製品をいくつかチェックしてみた。ポイントを踏まえての実例として読んでみてほしい。
なお今回は、採用製品が多いMMCX端子のハイエンドイヤホン代表ということで、シュアのSE846を用意。それに適合するリケーブル製品の中からピックアップし、音質評価もそれとの組み合わせで行っている。プレーヤーはAK100MKIIを基本に、バランス接続ケーブルのチェックにはAK100IIを使用した。
●SAEC「SHC-100FS」
▼チェックポイント!
・実売1万円前後(大手家電量販店価格)
*長さのバリエーションで価格が異なる
・導体素材はPCOCC-A
・耳周りは形状保持タイプ
・プラグ形状はストレートとL字を両方用意
・プラグはしっかりとした樹脂モールド
▼音質変化のポイント!
高域 |柔らかく豊かに
低域 |柔らかくしつつ切れや抜けを維持
雰囲気|透明感よりも気配感や空気感が豊かに
力強さ|ハードタッチの強さは控えめに
→総合的な印象としては、まさに上質!ほぐれた音調での優しい表現力がほしい人におすすめ!
国内オーディオアクセサリー分野における定番ブランドの製品。リケーブル製品にも早くから取り組んでいる。よりハイグレードな製品も展開しているが、このSHC-100FSは数万円クラスのイヤホンとの組み合わせるのにほどよい価格帯の定番製品だ。
PCOCC-A素材の持ち味を素直に生かした滑らかな音調は、ガツンとハードにいきたい方にはちょっとちがうかもしれない。しかし例えば、女性ボーカルの声や全体の空気のよい具合のウェットさの再現性などは明らかに好感触。定番であり続けるのも納得だ。ただ前述のようにPCOCC-Aの問題で、いつまで購入できるかは定かではない…。
●AUDIOTRAK「Re:cable SR3 」
▼チェックポイント!
・実売2万4,000円前後(大手家電量販店価格)
・導体素材は純銀(純度99.99%)+クライオ処理
・耳周りは形状保持タイプ
・プラグ形状はL字型
・プラグは直販ではストレート型のオーダーも可能
・プラグはノイトリック製
・MMCXプラグはワッシャーで確実性を高めた特製品
・ハンダはWBTの銀ハンダ
▼音質変化のポイント!
高域 |明らかに輝きを強める!
低域 |高域に対して相対的には控えめにはなる
雰囲気|照明が明るくなって見通しがよくなる感じ
力強さ|音の明確さが力強さにもつながっている
→総合的な印象としては、ブリリアント!その輝きによって細部描写もより際立たせてくれる。
ヘッドホン周りも含めて様々な分野のアイテムを提供するブランドからの製品。今回は「純銀線代表」としてピックアップしたが、チェックポイントとしてあげたところを見れもらえれば、その特徴がそれだけではないこともわかるだろう。
音の変化の傾向は僕が純銀に期待するまさにそれ。例えばシンバルの粒子のひとつひとつが輝きを増しつつも、ぎらついた派手さでにはせず、そのまばゆさは心地よい。女性ボーカルの鈴鳴り感、ギターのディレイやコーラスのクリアさも高まる。
ところでちなみに「WBTの銀ハンダ」というのはドイツのブランドの高品質ハンダ。銀を4%配合し、比較的低温で溶けるため作業性も高い。作業性の良さは仕上がりの良さ、すなわち音質の良さにつながる。
次ページ続いて、Beat Audio「Vermilion」とBispa「BSP-AK240-UCSEPM4」を聴く