[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第97回】ここらでまとめてみようか? いまのイヤホンドライバーの種類と特徴を!
▼BA型のドライバー構成
バランスド・アーマチュア型の場合、ドライバー単体の「振動板に何を採用!」とかいった要素が打ち出されている例はあまり多くはない(Sony「XBA-H3」のような例もあるが)。こちらでメーカーが大きく打ち出し大きな注目を集めているのは、ドライバー構成だ。何基のドライバーを各帯域にどのように割り当てているのか。そこがポイント。
●フルレンジ〜4ウェイ
帯域の分割ということで言えば、
・フルレンジ:全帯域を1基または1郡のドライバーで駆動
・2ウェイ:低域側と高域側をそれぞれ以下同文
・3ウェイ:低域と中域と高域をそれぞれ以下同文
・4ウェイ:低域と中域と高域と超高域をそれぞれ以下同文
…といったように、帯域分割をするならばそれをどれだけ細分化するかというのが最初のポイント。細分化すればするほどの利点は、
・各帯域のドライバーごとの負担(担当帯域)が狭まる
・各帯域のドライバーを各帯域に特化したチューニングにできる
…といったところ。いずれもそれぞれの帯域内での再現性の向上につながり、それが合わされば全体の再現性が向上する。一方で細分化する際の難点は、
・帯域(各ドライバー)のつなぎ目の処理の難しさ
・ドライバーの配置による位相等の調整の難しさ
・音声信号の帯域分割を行うネットワーク回路の複雑化
…といったところ。複雑な仕組みによって得られる利点もあれば、複雑さ=難しさという単純な図式もやはり成り立ってしまうということだ。その難しいところをいかにクリアするかが、各メーカー各技術者のセンスと腕の見せ所。
●どの帯域に何基のドライバーを割り当てるか
続いてのポイントはこちら。例えばShure「SE846」は3ウェイ4ドライバー構成。低域×2基+中域×1基+高域×1基という割当だ。Ultimate Ears「900s」も同様の割当。空気をより多く動かすことがその再現性の向上につながりやすい低域に2基のドライバーを割り当てるというのは、オーソドックスな考え方であり、実際に効果を発揮している。これがさらに多数のドライバーを搭載するモデルとなると、その割当の個性の幅が広くなる。
・JH Audioの12ドライバー機「Roxanne」は低域×4基+中域×4基+高域×4基。
・Unique Melodyの12ドライバー試作機は低域×4基+中域×4基+高域×2基+超高域×2基。
・カナルワークスの8ドライバー機「CW-L71」は低域×2基+中域×2基+高域×4基。
ドライバー数の割当だけで「このモデルはこの帯域重視!」とかを判断することはできない。しかしそれにしても考え方とか狙いのちがいが現れているようで興味深い。