技術的背景からそのサウンドを分析する
【レビュー】ラックスマンの最高峰SACDプレーヤー「D-08u」「D-06u」を角田郁雄が徹底試聴
オーディオ評論家の角田郁雄氏が、ラックスマンよりこの春に発売されたCD/SACDプレーヤー「D-08u」と「D-06u」の2機種を徹底試聴。ラックスマンの歴史を振り返りながら、2機種のサウンドの内奥に迫っていく。明日から始まる東京インターナショナルオーディオショウを前に、ぜひご一読いただきたい。(編集部)
■ラジオ放送開始の熱狂と共に誕生したラックスマン
今、私が「D-08u」と「D-06u」というラックスマンの2つの新世代ディスクプレーヤーを前にして思うのは、ラックスマンという企業が、ラジオ放送が開始された時期に創業してから、そして日本のオーディオにおける中心的な存在となった、現在に至るまでの流れである。
創業当時、人々は、ラジオから流れるニュースやひとときの安らぎを感じさせる音楽に、どれだけ期待を寄せていたことだろう。そしてラジオという不思議な受信機そのものにも関心を抱いていたはずだ。ラックマンは1925年の創業当時、洋画や額縁など海外の美術品を輸入する一方、ラジオに関する技術資料も入手し、研究を開始した。ラジオ技術書籍まで発行していたそうだ。
やがて1928年になると、「LUX-1730」や「LUX-735」というデザインにもこだわったハイファイラジオを手がけた。その後、独自のトランスなど海外に負けないパーツを開発し、数々の銘機を登場させた。1962年には、音もさることながら、美しいデザインを湛えた真空管プリメインアンプが登場した。個人的にも非常に印象に残るモデルである。
こうして振り返ってみると、単にラジオ技術を進化させたメカニカルなアンプを作るのではなく、創業当時の絵画の輸入も重ね合わせられる美しい音、美しいデザインを大切にしてきていることが理解できる。それは、現在に至るまでの一貫したポリシーのように思える。
■デジタル時代の到来後もアナログ再生に迫る再現を追求
CDの誕生後も、ラックスマンは従来からのアナログ再生に迫るCD再生とはどういうものなのか、深く研究してきた。象徴的なのは、1987年に登場したCDトランスポート「DP-07」とDAC「DA-06」である。本機には、CDには記録されていない可聴帯域以外の帯域を関数補完により再生成する技術(筑波大学の寅一教授による関数補完理論を応用した「フルエンシーDAC」)が搭載された。その理由はCD再生においても、サンプリングレート無限のレコード再生に迫るアナログ音を実現する必要があったからである。ゆえに楽器や声には、生音に迫る豊かな倍音が聴け、繊細なステージの空気感、臨場感に溢れた演奏の再現まで追求したのである。
ラックスマンはその後、CDプレーヤーのみならず、ユニバーサルプレーヤーまでも同様のポリシーで手がけ、その技術を進化させてきた。一世代前のSACDプレーヤーのフラグシップモデル「D-08」と「D-06」も、高い評価を手中にしてきた。
そして今年、この2モデルが大幅にリファインされ、「D-08u」と「D-06u」として登場した。そのデザインは、現代のインテリアにふさわしく、シンプルかつ洗練されたブラスターホワイトのボディーが美しい。ラックに押し込めず、オーク調の低く、長いラックやサイドボードの上にコントロールアンプ「C-900u」とともに並べて、その筐体をいつも眺めていたいほどである。
■最上位モデル「D-08u」のサウンドを実現した技術革新に迫る
ところで、私は各モデルを紹介するにあたり、大切にしていることがある。それは担当したエンジニアが実現させた技術そのものをしっかりと伝えるということである。オーディオ製品が表現する音は、そこに搭載された技術の反映である。まずD-08uについて、私はラックスマンに伺い、主たる内部技術の説明を受けた。そこで感じたことは、冒頭に記したように、ディスクメディアで極限までアナログライクな音を実現することに加えて、USB再生による5.6MHz DSDや192kHz/24bitのハイレゾファイルにおいても、理想のアナログ再現を目指しているということだ。
■高精度読み取りを実現するオリジナル・メカドライブ
まずはD-08uに搭載されたディスクドライブに注目してみよう。同社のメカは「LxDTM」と呼ばれている。両サイドを8mm厚のアルミ板で強固に挟み、上部と下部は5mm厚のスチール板で抑える構造だ。この異種金属の組合せは、振動や共振をキャンセルでき、音質もベストであったそうである。アルミ切削のディスクトレーが出入りする開口部には、下からシャッターが開閉する仕組みで、何ともファンタスティック。防塵と静寂性を高め、音圧の影響も防ぐ。高速回転するSACDから確実に高精度の読み取りを実現する構造である。
なお、DA-08uのディスクドライブ制御基板と電源は、アナログ回路から分離され、ケースの下部に収容。ここで読み取られたCD(PCM)とSACD(DSD)のデジタル信号は、2ルートに分かれる。
■ラジオ放送開始の熱狂と共に誕生したラックスマン
今、私が「D-08u」と「D-06u」というラックスマンの2つの新世代ディスクプレーヤーを前にして思うのは、ラックスマンという企業が、ラジオ放送が開始された時期に創業してから、そして日本のオーディオにおける中心的な存在となった、現在に至るまでの流れである。
創業当時、人々は、ラジオから流れるニュースやひとときの安らぎを感じさせる音楽に、どれだけ期待を寄せていたことだろう。そしてラジオという不思議な受信機そのものにも関心を抱いていたはずだ。ラックマンは1925年の創業当時、洋画や額縁など海外の美術品を輸入する一方、ラジオに関する技術資料も入手し、研究を開始した。ラジオ技術書籍まで発行していたそうだ。
やがて1928年になると、「LUX-1730」や「LUX-735」というデザインにもこだわったハイファイラジオを手がけた。その後、独自のトランスなど海外に負けないパーツを開発し、数々の銘機を登場させた。1962年には、音もさることながら、美しいデザインを湛えた真空管プリメインアンプが登場した。個人的にも非常に印象に残るモデルである。
こうして振り返ってみると、単にラジオ技術を進化させたメカニカルなアンプを作るのではなく、創業当時の絵画の輸入も重ね合わせられる美しい音、美しいデザインを大切にしてきていることが理解できる。それは、現在に至るまでの一貫したポリシーのように思える。
■デジタル時代の到来後もアナログ再生に迫る再現を追求
CDの誕生後も、ラックスマンは従来からのアナログ再生に迫るCD再生とはどういうものなのか、深く研究してきた。象徴的なのは、1987年に登場したCDトランスポート「DP-07」とDAC「DA-06」である。本機には、CDには記録されていない可聴帯域以外の帯域を関数補完により再生成する技術(筑波大学の寅一教授による関数補完理論を応用した「フルエンシーDAC」)が搭載された。その理由はCD再生においても、サンプリングレート無限のレコード再生に迫るアナログ音を実現する必要があったからである。ゆえに楽器や声には、生音に迫る豊かな倍音が聴け、繊細なステージの空気感、臨場感に溢れた演奏の再現まで追求したのである。
ラックスマンはその後、CDプレーヤーのみならず、ユニバーサルプレーヤーまでも同様のポリシーで手がけ、その技術を進化させてきた。一世代前のSACDプレーヤーのフラグシップモデル「D-08」と「D-06」も、高い評価を手中にしてきた。
そして今年、この2モデルが大幅にリファインされ、「D-08u」と「D-06u」として登場した。そのデザインは、現代のインテリアにふさわしく、シンプルかつ洗練されたブラスターホワイトのボディーが美しい。ラックに押し込めず、オーク調の低く、長いラックやサイドボードの上にコントロールアンプ「C-900u」とともに並べて、その筐体をいつも眺めていたいほどである。
■最上位モデル「D-08u」のサウンドを実現した技術革新に迫る
ところで、私は各モデルを紹介するにあたり、大切にしていることがある。それは担当したエンジニアが実現させた技術そのものをしっかりと伝えるということである。オーディオ製品が表現する音は、そこに搭載された技術の反映である。まずD-08uについて、私はラックスマンに伺い、主たる内部技術の説明を受けた。そこで感じたことは、冒頭に記したように、ディスクメディアで極限までアナログライクな音を実現することに加えて、USB再生による5.6MHz DSDや192kHz/24bitのハイレゾファイルにおいても、理想のアナログ再現を目指しているということだ。
■高精度読み取りを実現するオリジナル・メカドライブ
まずはD-08uに搭載されたディスクドライブに注目してみよう。同社のメカは「LxDTM」と呼ばれている。両サイドを8mm厚のアルミ板で強固に挟み、上部と下部は5mm厚のスチール板で抑える構造だ。この異種金属の組合せは、振動や共振をキャンセルでき、音質もベストであったそうである。アルミ切削のディスクトレーが出入りする開口部には、下からシャッターが開閉する仕組みで、何ともファンタスティック。防塵と静寂性を高め、音圧の影響も防ぐ。高速回転するSACDから確実に高精度の読み取りを実現する構造である。
なお、DA-08uのディスクドライブ制御基板と電源は、アナログ回路から分離され、ケースの下部に収容。ここで読み取られたCD(PCM)とSACD(DSD)のデジタル信号は、2ルートに分かれる。