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技術的背景からそのサウンドを分析する

【レビュー】ラックスマンの最高峰SACDプレーヤー「D-08u」「D-06u」を角田郁雄が徹底試聴

公開日 2014/09/19 17:10 角田郁雄
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■DACの性能をフルに引き出すために施された配慮

ここからが、本機の大きな特長のひとつだ。SACDのDSD信号はジッター低減回路を通過し、ダイナミックレンジ132dB(性能値)を誇るバー・ブラウン社のDACチップ「PCM-1792A」(左右に各1個、モノラルで使用)を用いたD/A変換部に接続する。ちなみに、このDACチップはΔΣ 1bitDACの繊細性とマルチビットDACの力強さを合わせ持つ、いわばアナログ的な音の再現性の高い素子だ。このDACチップの性能をフルに発揮させることを狙ったのである。

DACには「PCM1792A」を、DSPには「TAS3152」を搭載

さて、一方でCDとUSB・S/PDIF入力は、別ルートを辿って、DACチップ内のデジタルフィルターを使わず、TI社の32bit DSP「TAS3152」を経由する方式を採用していることが大きな特長だ。PCM信号は、最大384kHz/32bitにアップサンプリングされるのである。

このDSPを採用した理由は、入力されるどんなサンプリングレートの信号をも均一に、歪みなく、高精度にD/A変換させるためである。24bitも試したが、32bitの方が、空間の広がりや弱音の再現性が高まったのだという(DACチップ内部のデジタルフィルターより高次の音の再現性を狙ったのだ)。なお、この32bit DSPには低位相ノイズのクロックが供給され、ジッターも低減している。

D-08uのデジタル回路の概念図

これらのPCM、DSD信号は、前述のようにDACチップ、PCM-1792Aを使用したアナログ基板に接続。D/A変換された信号は、「5532」オペアンプでI/V変換され、次にディスクリート構成のODNF回路が続き、アナログ出力される仕組みだ。

■第4世代のODNF回路を搭載したアナログ部

このODNF回路は第4世代で、6dBのゲインをもつA級増幅回路。内部には主アンプと副アンプがあり、副アンプは入力と出力の差を検知し、その差分を主アンプの2段目に戻す仕組み。つまり出力に現れる歪み成分を消滅させているのだ。実に独創的な回路である。また、これらアナログ回路には100μもの厚みのある金メッキパターンを形成するレジストを使用しないピール基板を採用。この基板は、伝送特性向上とパターン間の容量を低減し、付帯音が少ない、ピークの伸びが良い音質に貢献している。

ODFN4.0バランスアンプ回路を搭載

D-08uで採用されたピールコート基板

このアナログ回路も見ていると、1980年から90年代に登場した海外のプリアンプの名機を思い起こさせるほど、オーディオマインドを掻き立てられる思いがする。いつもカバーを開けて見ていたいほどだ。緻密かつマッシブな、こうした回路を搭載するオーディオ製品は、世界的にも実に少なくなった。

D-08uの背面端子部

これらを支える電源部にも驚愕する。中央の平滑コンデンサーも32bitDSP、DAC、I/V変換回路とODNFの3つに分かれ、それぞれの回路の直近にレギュレーター電源を配置。100Vの電源が変動しても安定したクリーンな電源を回路に供給ができるハイ・イナーシャ(高慣性)電源を構成している。非同期USBレシーバーも、PCのバスパワーを使わず、音を吟味したアナログのシリーズレギュレーター電源を採用している。電源部にも全く手抜かりなどない。

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