高橋敦のファーストインプレッション
ティアックのハイレゾ対応ポタアン/プレーヤー「HA-P90SD」の音をいち早く聴いた!
■シンプルながら軽快な動作が特徴のプレーヤー部
次に、シンプルかつマニアックなプレーヤーとしての側面を見ていこう。
操作インターフェースはハードウェア的には小型有機ELモノクロディスプレイ、サークル配置の再生/ホーム/曲送り/曲戻しボタン、側面マルチウェイ・スイッチ。側面スイッチは上下レバーと押し込んでの決定ボタンを兼ねる。
ソフトウェア的にはテキストベースの階層メニュー方式。音楽ファイルのタグ情報を読み込み、曲、アルバム、アーチスト、ジャンルで分類してくれるし、後日行われるファームウェアアップデートで、フォルダ階層とファイル名での選択も可能になる予定。テキストメニューと物理ボタンのインターフェースは最小限のリソースで軽快に動作する。さらに現段階では未実装だが、本機内でお気に入りの曲のプレイリストを作ることも可能とのこと。
なおストレージとしてはmicroSDカードスロットを搭載。再生対応形式はWAV、MP3、AAC、FLAC、DSF、DFF。ALACのほかは主要形式を網羅している。
■ポータブルヘッドホンアンプとしての実力をチェック
ではその音を実際にチェックしていこう。今回は開発中の試作機でチェックしたため、その時点で動作が最も安定していたUSB-DAC接続時の音を中心に確認した。
まずはいきなり本命。ティアック/タスカムが取り扱うベイヤーダイナミックのラインナップから密閉小型ヘッドホン「DT 1350」との組み合わせだ。「ポータブルなんだけれどアンプの力を大きく要求する」このタイプのヘッドホンやイヤホンのユーザーこそ、本機のようなモデルを必要とするはずだ。
聴き始めて最初に「なるほど」と感じ入ったのはその駆動力。DT 1350はベイヤーにしては駆動しやすいモデルだが、それにしてもゲインスイッチはロー側、ボリュームノブは10時の位置で試聴に十分な音量を確保。余裕ある駆動力でエレクトリックベースのミッドの帯域の押し出しも力強く、ボンと膨らませることなくソリッドな芯もある。ロックでもジャズでもドライブ感を高めてくれる感触だ。
シンバルや女性ボーカルのシャープな描写はベイヤーらしさを引き出し、美しい薄刃さ。特に声のシュッと刺さる成分の心地よさがポイント。これぞベイヤーらしさだが、引き出し方が良くないと、単に耳に痛いだけになることもある。本機はアンプ部の余裕に加えてDACとしての精度、音の整え方がハイレベルで、そこが実に好感触なのだ。
それらの特長、中低域の制動や高域のシャープさ、音色の透明感によって、密度感を出しつつも狭苦しさはない。この点もこのヘッドホンの「らしさ」を存分に生かしてくれている。