[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第114回】FitEarの「fitear」が僕のイヤーにフィットした件
…ということで色々異例なイヤホンだが、それぞれ理由のあることだろう。製品名については、開発中においては覚悟、完成後においては自信が表れたものだろう。ユニバーサルなのに受注生産品というのは、数を出せる作りやすい製品でも、数を出すつもりの製品でもないということか。
ドライバー構成とかその手のスペックの非公開は、「試聴必須」な状況を意図的に作り出す狙いと推察する。ドライバー構成等の情報があると、実際にはそこから音を推測するのは至難とはわかっていても、どうしても大なり小なり「こういう音の傾向かな?」と考えてしまいがちだ。あえて情報を出さないことで「気になるなら聴くしかない」という状況に誘導しているのではないだろうか。
…だったらレビュー記事とか邪魔だろ!というのは見逃していただきたい。記事を読んで気になったらぜひ試聴を。地理的に試聴が難しい方は、普通に参考にしていただければと思う。
■FitEarのfitearの見える部分を見る
そんなわけで、ドライバー構成を含めて内部構造等は公開されていないので、公開されている一部の情報や実物の外観から想像できる部分を見ていこう。
まずケーブル周り。これは「FitEar Cable 006」と名前は明かされている。細身だが芯というか腰というかは強めで、取り回しの良さと絡みにくさのバランスが良い。プレイヤー側のプラグも「でかくて頑丈!」タイプではなく「ポータブルとして普通に使いやすい感じ」な形状やサイズだ。
耳周りにはワイヤー(針金)が入っているタイプ。しかしそのワイヤーは細めで柔らかめ。その存在をさほど意識せずに耳周りに自然に沿わせることができる。
イヤホン側のプラグ、つまりリケーブル端子は、他社の多くの端子よりも大柄なFitEar独特の2ピン。小柄な端子にすればデザインの自由度の高さなどの利点を得られるだろう。しかしFitEarはそもそもプロユースのカスタムIEM、扱いが荒くなってしまう場面もあるステージ用のカスタムイヤホンを本業とするブランド。導通の確実性やあらゆる方向からの負荷や衝撃への耐久性等を考慮して、この端子に行き着いたものと思われる。それらの利点は一般ユーザーにも同じく利点となってくれるはずだ。付け外しの際の、パチンと心地よいスナップ感からもこの端子の信頼性が伝わって来る。
イヤーピースは通常型3サイズとダブルフランジ1サイズが付属。通常型は高さ(深さ)は控えめで、傘の部分は意外と薄く、ノズル部分はしっかりとした厚み。
そのほか「これでもか!」レベルで頑丈なPELICAN製ハードケース、ポーチタイプのソフトケース 、クリーニングブラシが付属する。
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