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従来のSDRの10倍以上の情報量

対応テレビもまもなく登場? 注目HDR技術「ドルビービジョン」の現在

公開日 2015/04/03 10:14 折原 一也
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1つのドルビービジョンマスターから2つの

ドルビービジョンのフォーマットで用いられる1つのマスターが制作されると、その後の配給に対しては要求するクオリティに応じ「シネマ・エンコーダー」(劇場)と「ディストリビューション・エンコーダー」(配給)の2種類が使われる。

「シネマ・エンコーダー」と「ディストリビューション・エンコーダー」と2種類のマスターが制作される

「シネマ」に向けたマスター制作では、最も高画質が要求される大画面の劇場上映を想定するため、映像圧縮には画質を最優先した「JPEG2000」が用いられる。劇場上映では、最終的なクオリティは各劇場のプロジェクターに応じて「ドルビービジョンプロジェクター」用素材と、一般的な「DCI」用の素材が制作される。この映像信号に含まれるのは制作過程で作られるものと同じく0.005Nits〜4,000Nits、12bitのものだ。

劇場上映では「ドルビービジョンプロジェクター」用マスターと「DCI」用マスターが制作される

「シネマ」向け素材については、その画質を再現するために、ドルビービジョン対応のプロジェクターが必須。対応プロジェクターは昨年12月にクリスティ社が発表している。

ドルビービジョン対応プロジェクターでは、ドルビービジョンの性能を満たす画質が実現され、高輝度の映像体験はもちろんのこと、暗部の情報量も増す。そのクオリティについては「現在のシネマプロジェクターでは全黒でもうっすら光が見えますが、ドルビービジョン対応プロジェクターでは全黒の映像を上映した状態でスクリーンの前に立っても影が出ないほどで、映画の持つ艶やかな黒を再現できます」(真野氏)という。

ドルビービジョンのコンシューマー向け機器、またULTRA HD BLU-RAYやNetflixなどAVファン/ホームシアターファンに届けられるソースは「ディストリビューション」として分類され、次世代ブルーレイなどのパッケージ、映像配信、放送波が該当する。

その伝送の際に用いられるドルビービジョンの信号は、「ベースレイヤー」と「エンハンスメントレイヤー」の2つから構成される。

「ドルビービジョン」の信号は「ベースレイヤー」と「エンハンスメントレイヤー」の2つから構成される

「ベースレイヤー」に含まれるのは、例えばHEVCの8bit/10bitの映像信号といった、その伝送経路にとって標準的な映像信号となる。

「ベースレイヤー」に含まれるのは標準的な映像信号。「エンハンスメントレイヤー」にはその補完映像を収録。

そして、他方の「エンハンスメントレイヤー」にその補完情報を収録し、マスターと同じく0.005Nits〜4,000Nits、12bitの映像を作り出すことができる。

ドルビービジョンの映像コンテンツ制作者側から見ると、1つのマスターを制作すれば、「シネマ」も「ディストリビューション」も1つのマスターから自動的に生成できる。

なお、グレーディングのツールはFilm Light社の「Base light」といったメジャーなグレーディングツールが既に対応しており、ソフトウェアの中でドルビービジョンを選択して出力すれば、正しく制作者の意図に合致する形で半自動的にグレーディングを行える。もちろん、自動化されたグレーディングが映画監督や製作者のチェックにより意図に反していれば、手動でカスタマイズして調整する事も可能だ。

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