従来のSDRの10倍以上の情報量
対応テレビもまもなく登場? 注目HDR技術「ドルビービジョン」の現在
■従来のSDRの100倍以上の情報量を持つ「ドルビービジョン」の映像
ULTRA HD BLU-RAYやNetflixの対応により、ホームシアター、AVファンにとって身近な技術となると考えられる「ディストリビューション」素材について詳しく解説しよう。
ドルビービジョンの映像信号が「ベースレイヤー」を「エンハンスメントレイヤー」で補間するのは先に説明した通りだが、「エンハンスメントレイヤー」に含まれる映像信号は単純な引き算で生成されるものではない。
「エンハンスメントレイヤー」の圧縮の際には「ベースレイヤー」から予測できるマスターの映像信号に対して、予測では正しく補完できない差分である“残余データ”のみを「エンハンスメントレイヤー」に映像信号として収録する、というのが基本的な仕組みだ。残余データはサイズ(解像度)も1/4程度で済み、4K信号に対して2Kでも成立するのでサイズを抑えられる。もっとも補完情報のみ、しかも低い解像度であっても、元の4K映像の25%のデータサイズになるほど大きな情報量となる…という捉え方もできるだろう。
なぜ「エンハンスメントレイヤー」はそこまで大きな情報量になるのだろうか。「ドルビービジョン」の信号は12bit、「ベースストリーム」を仮に8bitの信号だとすると、差分は4bit分のみ、あるいは映像の高輝度部分を足しただけだろう…と想像してしまう人もいるかもしれない。
しかし、100Nitsまでのベースレイヤーに対して10,000Nitsまでの情報を持つ「エンハンスメントレイヤー」は、「ベースレイヤー」の100倍以上もの輝度情報を扱っている。その情報は現行の映像方式ではカメラで撮影できていても、パッケージに収録するまでに捨てられていたものだ。これは単純に高輝度を補うだけでなく、カメラが本来捉えていた情報を、HDRでは100倍以上収録できる事になる。
ドルビービジョンの採用による高画質化は、最高画質を追求する次世代ブルーレイのみならず、ある程度ビットレートを抑えた映像配信においても有効だ。
例えば、現在の米国OTTサービスプロバイダによる4K配信は15Mbps程度で配信されているが、そこから20%の3Mbps程度でドルビービジョンのエンハンスメントレイヤーが配信できる。その「エンハンスメントレイヤー」と「ベースレイヤー」を組み合わせることで、大きな高画質化効果が得られるのだ。
「ベースレイヤー」と「エンハンスメントレイヤー」の補完によって生成される、コンシューマー向けドルビービジョンの映像も、基本的には「シネマ」と同様で、ドルビーが制作者向けに提供するHDR対応マスターモニター「パルサー」のスペック上限である4,000Nitsで収録する。次世代ブルーレイ「ULTRA HD BLU-RAY」の基本スペックは10bit/1,000Nitsであるのに対して、ドルビービジョンは12bit/4,000Nits。ULTRA HD BLU-RAYでドルビービジョンのコンテンツを収録した際には、その差分を「エンハンスメントレイヤー」として収録、あるいは配信すると考えるのが自然だろう。
ULTRA HD BLU-RAYやNetflixの対応により、ホームシアター、AVファンにとって身近な技術となると考えられる「ディストリビューション」素材について詳しく解説しよう。
ドルビービジョンの映像信号が「ベースレイヤー」を「エンハンスメントレイヤー」で補間するのは先に説明した通りだが、「エンハンスメントレイヤー」に含まれる映像信号は単純な引き算で生成されるものではない。
「エンハンスメントレイヤー」の圧縮の際には「ベースレイヤー」から予測できるマスターの映像信号に対して、予測では正しく補完できない差分である“残余データ”のみを「エンハンスメントレイヤー」に映像信号として収録する、というのが基本的な仕組みだ。残余データはサイズ(解像度)も1/4程度で済み、4K信号に対して2Kでも成立するのでサイズを抑えられる。もっとも補完情報のみ、しかも低い解像度であっても、元の4K映像の25%のデータサイズになるほど大きな情報量となる…という捉え方もできるだろう。
なぜ「エンハンスメントレイヤー」はそこまで大きな情報量になるのだろうか。「ドルビービジョン」の信号は12bit、「ベースストリーム」を仮に8bitの信号だとすると、差分は4bit分のみ、あるいは映像の高輝度部分を足しただけだろう…と想像してしまう人もいるかもしれない。
しかし、100Nitsまでのベースレイヤーに対して10,000Nitsまでの情報を持つ「エンハンスメントレイヤー」は、「ベースレイヤー」の100倍以上もの輝度情報を扱っている。その情報は現行の映像方式ではカメラで撮影できていても、パッケージに収録するまでに捨てられていたものだ。これは単純に高輝度を補うだけでなく、カメラが本来捉えていた情報を、HDRでは100倍以上収録できる事になる。
ドルビービジョンの採用による高画質化は、最高画質を追求する次世代ブルーレイのみならず、ある程度ビットレートを抑えた映像配信においても有効だ。
例えば、現在の米国OTTサービスプロバイダによる4K配信は15Mbps程度で配信されているが、そこから20%の3Mbps程度でドルビービジョンのエンハンスメントレイヤーが配信できる。その「エンハンスメントレイヤー」と「ベースレイヤー」を組み合わせることで、大きな高画質化効果が得られるのだ。
「ベースレイヤー」と「エンハンスメントレイヤー」の補完によって生成される、コンシューマー向けドルビービジョンの映像も、基本的には「シネマ」と同様で、ドルビーが制作者向けに提供するHDR対応マスターモニター「パルサー」のスペック上限である4,000Nitsで収録する。次世代ブルーレイ「ULTRA HD BLU-RAY」の基本スペックは10bit/1,000Nitsであるのに対して、ドルビービジョンは12bit/4,000Nits。ULTRA HD BLU-RAYでドルビービジョンのコンテンツを収録した際には、その差分を「エンハンスメントレイヤー」として収録、あるいは配信すると考えるのが自然だろう。