[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第137回】“花澤病ライター”が花澤香菜ソングスにぴったりなヘッドホンをコーディネート!
■ほほ笑みモード×beyerdynamic T 51 p
2ndアルバムとそれに伴うツアーを経ての、花澤香菜音楽活動3rdシーズンの始まりを鮮やかに告げた曲。アルバムでも武道館でも二曲目で、開放的な「I LOVE NEW DAY!」との対比も鮮やかだ。
というのもこの曲はそれまでの花澤香菜さんの音楽活動では扱ってこなかったしご本人も縁がなかったというクラブミュージックのサウンドを取り入れて…というか完全にそのサウンドの曲になっている。なので他の曲とのコントラストも、この曲の中での密で重いベースサウンドと花澤さんの天使の歌声とのコントラストも際立つのだ。さらにしかも、この打ち込み系のビートをバンド編成のライブではどうするんだろう?と楽しみにしていたら、アレンジの大枠はそのままにベースはむしろ逆にウッドベース!という意表も突かれて、それもまたスタジオ版のシンセベースとのコントラストが鮮やかだった。
ということでヘッドホンも「コントラスト」を意識して選んでみたのがbeyerdynamic「T 51 p」。実売3万2,000円程度だ。
まず最初のコントラスト。ベイヤーの「テスラドライバー」搭載ヘッドホンというと透明で鋭い高域描写の方の印象が強いが、このモデルは小型なのに低音もかなりグイグイ来る。沈み込む本当に低い帯域の重低音までフラットに出ているというよりは、ベースやドラムスなど低音楽器の「おいしい重み」をぐいっと出してくれている感じだ。四つ打ちバスドラムのドシンとしたところなど特に見事。シンセベースの唸りやうねりも実によい感じだ。しっかりとしたアンプで駆動すれば緩みなく密な低音を叩き出してくれる。
次のコントラストは、その強烈な低音に対してしかしやっぱりベイヤーテスラドライバーらしいシャープな高域も拮抗するというその対比。細かなリズムを刻むハイハットシンバルの薄刃さ、アコースティックギターの印象的なリフの輝き具合などさすが!
そしてそのおかげで花澤さんの歌声との相性もトップクラス。息の刺さる成分を、ほぐすのではなく研ぎ澄ますことで、耳に痛いものではなく心地よく耳と心に刺さるものにしてくれる。
ヘッドホン単体で見ると音場が広くはなく密でダークなところで好みが分かれるかもしれない。しかしこの曲との組み合わせでは、その密でダークなところがクラブっぽいし、その密でダークな音場を背景にアコースティックギターが輝き、花澤さんの声が立体的に浮かび上がるという、そのコントラストが美しい。
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