海外で話題の革新的音楽管理・再生ソフトをレビュー
クラウド/ローカルをシームレスにつなぐ“総合音楽鑑賞プレーヤーソフト”「Roon」の魔法とは?
■Roonの魔法
今回の記事の趣旨は、Roonというソフトの特徴を伝えること。よって今回は、詳細な使い方などの紹介はなるべく省いて、“Roonだからできること”を紹介していきたい。
これが、楽曲のインポートが終わった状態のRoonの初期画面だ。現在Roonが扱っているライブラリのアルバム数、トラック数、アーティスト数のほか、最近追加されたアルバムが表示されている。楽曲のインポートは、初期設定で既存の音楽ライブラリのフォルダを指定するだけで完了できる。
Roonは非常に多機能であるため、表層をざっくりと紹介していくだけでも膨大な量になってしまうがお付き合い願いたい。
画面左上のアイコンをクリックすることでメニューが表示される。一番上の「Overview」は、この音楽ライブラリの概要を示してくれる。
「Overview」を下にスライドすると、ライブラリの中身から「こんなのがあるよ」という形で、アーティストやジャンル、作曲者が表示される。
これはRoon自身がライブラリの中から音源をレコメンドするもので、ユーザーに音楽との出会いを提供する意味で有効と言える。
この辺りから、Roonの魔法が姿を現す。左カラムから「Genre」を選ぶ。他のソフトと比べても圧倒的に表示が賑やかであり、各ジャンルに該当するアーティストの一部が表示されていることも特徴だ。
ここから例えば「Jazz」を選択すると、ジャズというジャンルに特化した画面が現れ、アーティストハイライト、アルバムハイライト、さらにジャズのサブジャンルまでが一挙に表示される。
「Discover」はRoonによる強力なレコメンド機能。ライブラリの中のあらゆる音楽情報を基にアーティスト、アルバム、ジャンル、作曲者、演奏者などなどが切れ目なく、次々と表示される。Roonはこの機能を「ライブラリに埋もれた宝石を見つけるお手伝い」と称している。
「Artist」。他の再生ソフトであれば、アーティストのアルバムが代表としてアイコン的に表示されるのが常だが、Roonでは各アーティストの画像が表示される。この画像はRoonのデータベースに用意されているもので、ユーザー側で別の画像に差し替えることも可能。Roonが見つけられなかったアーティストについてもそれっぽい画像がデフォルトで貼りつくので、ライブラリが「?」で埋め尽くされるような悲惨な事態は起こらない。
ここで個別にアーティストを選択すると専用の画面に切り替わる。アーティストのバイオグラフィ、関連する音楽ジャンル、コンサート情報、メインアルバム、コラボレーションアルバム、近似したアーティスト、フォローされたアーティスト、影響を受けたアーティスト、コラボしたアーティストなどなど、ありったけの情報が表示される。
アルバムを再生するもよし、バイオグラフィにじっくり目を通すもよし(基本的に全部英語だが)、関連付けられたアーティストのページに次々飛んでいくもよし。Roonの言う「音楽の多面的な楽しみ」が端的に示されている。「Composer」も「Artist」と同様。作曲者の画像からライブラリをブラウズできる。
「Albums」ではアルバムアートがタイル状に並ぶ。44.1kHz/16bitの音源ならば「CD」、ハイレゾならばそれぞれのスペックが表示されているといった工夫はあるが、これだけでは他のライブラリ統合型のソフトとさして変わらない。しかし、アルバムを選択した際の挙動は別物だ。
例えば、『Frozen』(アナと雪の女王)を選択した場合。アーティストと同様、これでもかと言わんばかりに様々な情報が網羅されている。曲名、アルバムタイトル、アーティストといった情報は言うに及ばず、近似のアルバム(個人的にはRoonの選択には大いに疑問が残るが)、ライナーノーツ、極めて詳細なスタッフクレジットまで用意されている。この辺りの情報はタグとして埋め込むことが不可能であり、「音楽の多面的な楽しみ」を提供するRoonならではと言える。「音楽とは制作に携わった作曲者や演奏者、すべての情熱ある人々の成果物である」との言葉に偽りはない。青字で表示される人名はリンクとなっており、クリックすることで携わった音源を表示させることも可能。
各ディスク・曲の表示も完璧だ。日本語対応していないとは言え、表示がおかしくなることもない。
Roonのデータベースに情報があれば、曲ごとの歌詞や、同一曲のカバー一覧を表示させることもできる。
こういった音楽情報のすべてが、Roonの中で有機的に結び付き、めくるめく音楽の関係性がユーザーに提示される。単に「聴くだけ」ではなく、曲を取り巻く膨大な情報をすべてひっくるめて音楽であり、それを紐解いていくことにも大きな楽しみがある。Roonが提供するのはまさにこの部分であり、私がRoonを「再生ソフト」ではなく「総合音楽鑑賞ソフト」と呼ぶのはこのためである。
ウィキペディアである項目を調べた時、関連項目から次々に興味のある別の項目へ飛んでは長時間を過ごしてしまった……なんて経験したことがある人もいるだろう。Roonが提供する音楽体験はまさにその感覚に近い。
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