[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第142回】迷えるあなたへ! オンキヨー「DP-X1」とパイオニア「XDP-100R」徹底比較
■音質チェック|DP-X1の2つバランス?駆動
ここからはDP-X1のみのポイントである2つの駆動モードについて。
このモデルの2.5mm/4極のイヤホン出力は2つの駆動モードを使い分けることができる。
▼BTL駆動
こちらは一般的に「バランス駆動」と呼ばれているそれ。左右のイヤホンを左右独立のアンプ回路で完全に左右独立でプッシュプル駆動。パワーやLRセパレーション等を向上させる。
▼ACG駆動
こちらは新機軸「アクティブコントロールグラウンド駆動」の略記だ。左右の独立性の向上は共通だが、プッシュプルで増幅の振幅を稼ぐのではなく、動作基準となるグラウンドの安定化のためにアンプ回路を投入する。
見難いこと必至の記号書きで伝えてみよう。△がアンプ、〜またはーがGND(グラウンド)だ。
●シングルエンド
〜△〜
●BTL
〜△〜
▽
△と▽のプッシュプル合算でパワーアップ!
●ACG
_△_
余った▽の力でGNDの〜をーに安定化!
喩えるなら凸凹道で2台の車を使って1つの荷物を引っ張るのに、
●BTL|凸凹道はそのままに2台のトラックのパワーで引っ張る
●ACG駆動|1台のロードローラーで整地して運びやすくした上で1台のトラックで引っ張る
といったところか。どちらにしても通常の、
●シングルエンド|凸凹道のまま1台のトラックで引っ張る
よりも良い結果を生みそうだとは想像してもらえると思う。
という理屈は理屈として、音は確かに違う。シングルエンド駆動からの音質向上の方向性を矢印で表現すると、
●BTL駆動 ↗︎ 低域はぐっとパワフルで高域もくっきり
●ACG駆動 ↑ 何か普通に良くなってる
みたいな感じだろうか。BTLはシングルエンドとは方向性を少し変えつつのクオリティ向上、ACGはシングルエンド駆動とだいたい同じ方向性のままでのクオリティ向上、みたいな。
従来、グラウンド電位の安定は主に、アース配線やシャーシの質量や導電性の強化といった「物量」によって実現されていた。でかくて重いハイエンドオーディオ機器の音の良さの理由のひとつでもあったわけだ。DP-X1のACGはそれを電気的にコンパクトに実現したものと言えるかもしれない。手法は異なるが効果は「グラウンド電位の安定」という普通で基本的なことであるので、音質向上の方向性も好ましい意味で普通ということだろうか。
いずれにせよ、このふたつのオプションを備えてこの価格差しかないというのは、DP-X1側の大きな優位だ。
■終わり
ということで今回は注目のOnkyo「DP-X1」とPioneer「XDP-100R」を同時に、そして「その違い」の部分を主にチェックした。最初にいきなり力強く断言した通り僕は立場上「こっちがいい!」との断言はできないが、「違う」ということはお伝えできたと思うので、あとは各自の判断にお任せする。
もちろん「もっと違う」モデルであってくれたらユーザーとしては選択の幅が増えて嬉しかったが(例えばオンキヨーはもっとハイエンドなモデルでパイオニアは機能を絞った小型モデルとか)、そういった展開は第一弾としてのこれらが成功してからの話だろう。そして第一弾としてのこれらは、それを期待させるだけの可能性は確かに秘めている。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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