海上忍のラズパイ・オーディオ通信(19)
5ドルで買える「Raspberry Pi Zero」はオーディオ機器として使えるか?(後編)
■いざRaspberry Pi Zeroで再生!しかし…
/boot/config.txtを書き換え後にシステムを再起動し、「aplay -l」を実行してサウンドデバイスを確認すると、PHAT DACは「HifiBerry DAC」として認識されていた。オーディオデバイスは他に検出されていないため、MPDの設定(/etc/mpd.confの編集)は必要ない。USBポートに空きがないため、micro SDカードにコピーした音源を聴くことになるが、安定運用期に入ればNASの利用を検討したいところだ。
真夜中だったこともあり、試聴はポータブルアンプ(TEAC「HA-P5」とOPPO「HA-2」)にLINE出力のうえ、開放型ヘッドホンのSHURE「SRH1840」で行った。PHAT DACはRCA出力も可能だが、端子をハンダ付けすることを失念していたため、ステレオミニ以外に選択肢はない。
その音だが、「可もなく不可もなく」が正直なところだ。確かに、パーカッションやブラスはI2Sらしいキレと瑞々しい輪郭を感じさせ、ボーカルの定位も鮮明だが、ベースやバスドラの疾走感はもうひと声といったところ。S/Nも取り立てて良好とは言い難く、音色には艶めいた部分が欠けている。
ポータブルアンプを替えても基本的な印象は変わらないため、これがPHAT DACというDACボードの音なのだろう。基板の部品構成を見ればシンプルというより必要最低限で、これといった音作りがなされていない(ように見受けられる)ことが、惹きつける部分に乏しい理由なのかもしれない。
一方、動作の安定性はまずまずといったところ。PHAT DACが扱える上限のPCM 192kHz/24bit(FLAC)を再生しても破綻はなく、topコマンドでシステム負荷を調べても瞬間的に十数パーセントに上昇する程度だった。試してはいないが、ハイレゾ品質のストリーミング再生もソツなくこなせるに違いない。
音質に関しては少々残念な結果に終わったが、いくつか判明したこともある。
当然といえば当然だがI2S出力は手段に過ぎず、実際の出音はDACボードの設計に大きく左右されるということ、Zeroの処理能力は高く、Volumio 2で動作させるかぎり192kHz/24bitの再生は余裕でこなせること、再生操作の都合上LAN接続が必須のラズパイ・オーディオでは、USB OTGケーブルとWi-Fiアダプタの組み合わせかUSB-Ethernet変換アダプタを使うしかないことなど、これらの知見を得られたという意味で収穫は大きかったように思う。
やはり、オーディオ用途ではRaspberry Pi 2/3(推奨は「2」だが理由は後日)を選択すべきと考えるが、いかがだろう。