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レコードの「本当の音」を聴くために

レコード再生におけるEQカーブとは? 3種類のRIAAカーブを「micro iPhono2」で探る

公開日 2016/11/08 17:38 菅沼洋介(ENZO j-Fi LLC.)
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■実はRIAAカーブも複数存在する

このようにレコード再生にとって重要な役割を担うイコライゼーションは規格化され、時代を遡れば、その数は数十種類にもおよぶ。

現在、スタンダードとなっているのは「RIAA」と呼ばれるイコライザーカーブである。あまり知られていないかもしれないが、このRIAAカーブにもいくつかの種類がある。

まず、音楽情報を盤面に刻む、つまりカッティングする際のイコライゼーションは「Inverse RIAA」カーブといい、これを再生時に補正するのが「RIAA」カーブである。冒頭で述べたとおりInverse RIAAは低域が小さく、高域が大きいという特性を持ち、再生時のRIAAカーブではその逆の特性を持っている。もちろん、それぞれの和はフラットになる仕組みだ。

この再生用のRIAAおよびカッティング用のInverse RIAAは、1953年に米RIAA(Recording Industry Association of America=アメリカレコード協会)によって標準規格として制定されたものだ。

1953年に米RIAAが策定したRIAAカーブとInverce RIAAカーブ。双方は逆の特性を持っており、それぞれの和はフラットになる

Inverse RIAAについては現在に至るまでその規格は変更されることなく続いているが、再生する側のRIAAについては、半世紀を越える間にさまざまな変遷があった。

IEC(国際電気標準会議、電気分野におけるISOなどの標準規格をまとめる国際業界団体)は1963年、このRIAAカーブに異論を呈した。RIAAカーブは低域を大きくしすぎて、再生する時の物理的なノイズまでも大きくしてしまい、再生に支障があるのではないか、というものであった。

RIAAカーブでは、レコードが反っている時のランブルノイズや、アナログプレーヤーの周りを歩いたりした時に生じる振動まで大きくしてしまうので、再生する時にウーファーが大きく揺れてしまったり、「ゴロゴロ」「ゴオッー」というノイズが目立ったりしてしまうというのがIECの主張である。このIECの主張を受けて、1976年にRIAAカーブの特性から低域を下げた「RIAA-IEC」カーブが策定された。おおむね100Hzからイコライゼーションが始まり、前述のノイズが聴こえないように設定されたのが大きな特徴となる。

RIAAカーブとRIAA-IECカーブの比較。RIAA-IECは低域のノイズの抑制を狙い100Hzからイコライゼーションが始まっている

さらに別の提言もあった。オーディオメーカー、バキュームステイトの創設者でありメインエンジニアであるアレン・ライトによるものである。

彼は1995年に出版した著書『真空管プリアンプ設計』において、「長年、多くのカッティングに使われていたノイマンのカッティングアンプは、Inverse RIAAカーブを正しく再現できていない」と提唱したのである。仮にInverse RIAAカーブが正しくないとすれば、それに基づきRIAAカーブも変えなければならないのは明らかだ。

RIAAカーブとEnhanced-RIAA(eRIAA)の比較。こちらは高域特性に違いがある

そんなアレン・ライトの意見を盛り込んだのが、「Enhanced-RIAAカーブ(eRIAAカーブ)であり、通常のRIAAカーブとは高域特性に違いが現れている。

次ページ3種類の「RIAA」で聴ける音の変化

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