HOME > レビュー > 64 AUDIOのカスタムIEMはどれくらい変わった? 実際に作って聴き比べてみた

同一ドライバー機と比較試聴!

64 AUDIOのカスタムIEMはどれくらい変わった? 実際に作って聴き比べてみた

公開日 2016/11/11 17:51 オーディオ編集部:浅田陽介
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

一聴して分かるS/Nと解像度のグレードアップ

さて、その肝心のサウンドである。そのレベルアップの度合いははっきり言って見た目以上のものだった。なお試聴に使用したプレーヤーは、Astell&KernのAK380である。試聴曲は筆者が好きなアルバムで行っているので若干の偏りがある部分はご容赦いただきたい。


装着したところ。フィット感は「3Dフィット技術」の採用によるものか、かなり向上した印象だ
まず、一聴しただけで再生時に感じるS/Nが違う。例えば、昨年にリリースされたサキソフォニスト、カマシ・ワシントンの『The Epic』に収録された4曲目、「Final Thought」(44.1kHz/24bit ALAC)。


試聴曲1:『The Epic/Kamasi Washington』(44.1kHz/24bit ALAC)
冒頭はハモンドオルガンのソロパートからスタートするのだが、レズリースピーカーが回転している感じや、ハモンド特有のコンコンとしたパーカッション、そしてグリス時に聴ける低域のボリューム感が圧倒的だ。「この感じがあってこそハモンド」なんて思ってしまったほどである。この静寂から一気に爆発するような雰囲気は、S/Nの向上を裏付けている。

ソロの時に聴けるサックスの暴力的なブローも新しくなった64 AUDIOに軍配。カマシ・ワシントンはポスト・ジョン・コルトレーンと言われるサキソフォニストだが、感情をもろにぶつけて演奏することによる微細なニュアンスはA4でより強く感じることができた。

A4は、主にドラマーやベーシスト、パーカッショニストに向けて低域に特性を持たせているそうだが、シンバルなどの質感も優秀。その厚さも的確に描き分ける分解能も1964-Qと比較して確実にグレードアップしている。


試聴曲2:『Who Is This Bitch, Anyway?/Marlena Shaw』(192kHz/24bit FLAC)
ギターなどの中音域の質感はどうだろうか。続いて聴いたのはマリーナ・ショウが1975年にリリースした『Who Is This Bitch, Anyway?』から「You, Me and Ethel / Street Walking Woman」(192kHz/24bit FLAC)。ちなみに、このアルバムはTボーン・ウォーカーとラリー・カールトンの二人のギタリストが掛け合うという、ジャズやソウルを志したギター少年であれば涙モノのセッションで、この二人のギターの音色の描き分けが大きなポイントとなる。

この描き分けで感じたのが、使っているギターそのものの描き分けもさることながら、二人のピッキングニュアンスの明らかな違いだ。絶妙な力加減で滑らかにフレーズを重ねるラリー・カールトンと、主に指とプル奏法を活用したであろうTボーン・ウォーカー。ギタリストの個性を見事に引き出したのはA4だった。

マリーナー・ショウの声もA4で聴いた方がより実体感が感じられ、A4では芯のようなものが加わっている。全体的に1964 EARSはハイ寄りの用にも感じられ、マリーナ自身の線が細い印象を受けた。


試聴曲3:『EMILY'S D+ EVOLUTION/Esperanza Spalding』(96kHz/24bit FLAC)
よりロック寄りの音源も聴いてみた。試聴したのは、ベーシストでありヴォーカリスト、エスペランサ・スポルディングの変名プロジェクトによる『EMILY'S D + EVOLUTION』から「Funk The Fear」(96kHz/24bit FLAC)である。

実は一番、A4にアップグレードしてのメリットが感じられたのはこの曲だった。

1964-Qで聴くと、全体的な音の輪郭が細いせいか、パワー感が圧倒的に下がってくる。もともとエスペランサはジャズシーンで高い評価を受けたアーティストだが、EMILY'S D+ EVOLUTION名義では全く違うロック的なアプローチを満載した世界感を展開した。A4では、本作でエスペランサが演りたかったことが見えてくる気がするのである。

オーバー・ドライヴのかかった太いギターとパワーのあるリズム隊、その中に織り込まれるジャズ的なエッセンス。ひとりのミュージシャンが持つ多面性は、S/Nやレンジ感の面で大きな向上を果たしたA4だからこそより豊かに感じられたのである。

最後にDSDフォーマットでも聴き比べてみた。試聴ソースは、SOUL & "PIMP" SESSIONSがブルーノート東京で行ったライヴ・アルバム『A NIGHT IN SOUTH BLUE MOUNTAIN』から冒頭の「Suffocation」(5.6MHz/1bit DSF)である。


試聴曲4:『A NIGHT IN SOUTH BLUE MOUNTAIN/SOUL &
この作品のレコーディングエンジニアを務めたのは、さまざまなDSDレコーディング作品を手がけるstudio MSRの奥田泰次氏。同氏によると「ブルーノート東京という箱を録るイメージでマイキングした」とのことで、その空間性とライヴならではの臨場感がどこまで出るかが聴きどころだ。

この曲では、A4、1964-Q共に甲乙つけがたい印象だ。A4の方が臨場感の再現性に優れている一方で、全体的に細めの音場を描く1964-Qの表現も捨てがたい。確かに、SOIL & "PIMP" SESSIONSの持ち味はその疾走感だったり勢いな面もあるが、そうした意味ではA4の方が正しい表現と言えそうだ。しかし、このあたりは聴く人の好みによるところだろう。

次ページ比較試聴で分かった64 AUDIOでの再現性

前へ 1 2 3 4 5 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: