HOME > レビュー > ハイレゾ化でフィッシュマンズの音楽にもっと近づける − 茂木欣一がそのサウンドについて語る

小野島 大がインタビュー

ハイレゾ化でフィッシュマンズの音楽にもっと近づける − 茂木欣一がそのサウンドについて語る

公開日 2016/11/30 09:58 小野島 大
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

―― リマスター作業はキムケンさんとzAkさんが手分けしてやっていますが、リマスターにあたり、茂木さんから具体的な指示や希望などは出されたんでしょうか。

茂木さん(以下敬称略) 今回のリマスターの話をいただいたとき、zAkから"自分がレコーディングに携わった作品のリマスターを是非やらせてほしい"との話をもらい、僕も“そんなの聴いてみたいに決まってる!!"と思い、お願いしました。そして、彼が録音に関わる以前の作品に関しては、最近のスカパラ作品でお付き合いのあるキムケン(木村健太郎)さんにお願いすることにしました。みんなの共通見解としては、もともとのマスタリングの状態は決して悪くない。なので、オリジナル・リリース時のマスタリングの雰囲気は壊さずに、現在のお二人の感覚で自由に進めてほしいと伝えました。


―― 実際にリマスターされたものを聞いてみて、どんな感想を持たれましたか。また、zAkさんとキムケンさんのマスタリングの違いについても気づいたことがあれば。

茂木 今まで聴こえてこなかった細部の音が見えてきて、ミックスのきめ細やかさをより感じてもらえるようになったと思います。音量感も自然に上がった印象で気持ち良い。キムケンさんは、オリジナル音源を大切にしつつ音全体が鮮明に、そして低域の力強さがより前に出てきた印象があります。

zAkに関しては、彼自身が全面的に関わっている作品だけあって、今の彼の気分がリマスターに表現されていると感じました。特に『ORANGE』、このリマスターは攻めてますね!!音同士のせめぎ合いがさらに刺激的になり、非常にアーティスティックなマスタリングだと感じました。

―― 今回はCD、アナログ、ハイレゾと3種類のメディアでリリースされたわけですが、それぞれの音の違いなどについて、どう感じられましたか。

茂木 どのメディアに関しても、ベストを尽くした作業がなされていて嬉しい限りです。CDでは、ポニーキャニオンのHQCDの音が印象的でした。非常にまとまりのある再生音で聴き心地が良いですね、好きです。アナログはカッティング作業に立ち会えたこともありますが、やはり特別。フィッシュマンズに限らず、本来耳にはこんな風に音が届くと気持ち良いのになと、改めて感じました。ハイレゾに関しては、当時録音していたスタジオの景色やバンドのムードまで思い出せるくらいの鮮明度を感じましたね!!これは驚きです。アナログとはまた違う魅力的な音楽体験だなと思います。

―― 特にハイレゾ音源についてお訊きします。フィッシュマンズ的な音づくり(音を重ねた、独特の浮遊感ある音場など)にとって、ハイレゾ化の恩恵はどういうところにあると感じましたか?

次ページフィッシュマンズの音楽にとって、ハイレゾ化の恩恵とは?

前へ 1 2 3 4 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE