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小野島 大がインタビュー

ハイレゾ化でフィッシュマンズの音楽にもっと近づける − 茂木欣一がそのサウンドについて語る

公開日 2016/11/30 09:58 小野島 大
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―― 特にハイレゾ音源についてお訊きします。フィッシュマンズ的な音づくり(音を重ねた、独特の浮遊感ある音場など)にとって、ハイレゾ化の恩恵はどういうところにあると感じましたか?

茂木 必要最低限の音数でのアレンジ、シンプルで強いフレーズの構築。それらがフィッシュマンズ的空間を作り上げていますね。音の上下左右の配置、前後の奥行きの立体感、それらがハイレゾによってさらに浮き彫りになったのではないでしょうか。一人一人の演奏やアレンジが明確になることは音響的な楽しみにもなるし、佐藤伸治の歌声とリスナーとの距離が近づくことで、楽曲の世界観にさらに深くのめり込むことができる。レコーディング・スタジオで最初にT.D.を聞いた時の感動が蘇ってきます。フィッシュマンズの音楽に1対1でじっくり向き合う空間づくりとして、ハイレゾ音源の恩恵はとても大きいと感じます。


―― フィッシュマンズのレコーディングは大雑把に言って、zAkさんが手がけるようになった「ネオ・ヤンキーズ・ホリデイ」以降とそれ以前に分かれると思います。そしてzAkさん時代もプライベート・スタジオ(ワイキキ・スタジオ)でレコーディングするようになった「空中キャンプ」「ロング・シーズン」「宇宙 日本 世田谷」と、それ以前に分かれます。それぞれの時代においてレコーディング/制作に臨む態勢や心構え、狙っていた音作り、できあがった音について、違いを教えていただけますか。

茂木 全ては、佐藤伸治が作ってきた楽曲の素晴らしさに対して、それぞれがベストを尽くして一丸となった結果だと思います。一段ずつ階段を上って少しずつうまく描けるようになった、個人的にはそう感じています。〈自分は楽器をプレイする1ミュージシャン〉という立場から〈自分はフィッシュマンズサウンドの素材そのもの〉に変化していったのかな? 恋愛や生活スタイル、メンバーが脱退していったり新たなサポート仲間と出会ったり……そのときそのときある環境の中で音楽の可能性を追求しあった歴史が音として残っている。(ん〜、答えになってないかな〜)。

―― またそんな変遷の中で、変わらなかった「フィッシュマンズらしさ」とはなんでしょうか。

茂木 時間を惜しまず、自分たちの音楽に徹底的に向き合ったこと。

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