[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第179回】高橋敦が指南! エントリークラスBluetoothイヤホンを買うときのポイント
■エントリーモデルは左右ワイヤードスタイルが基本
まず傾向として、エントリークラスイヤホンでは普通に、『左右のイヤホン本体同士はワイヤード接続』なスタイルの製品が主流だ。今回は定番ブランドのこの価格帯そのスタイルの製品として、JBL「E25BT」をサンプルとして見ていこう。
単純に現時点では、完成度の高い「左右独立True Wireless」をこの価格帯で実現することは技術的コスト的に難しいのだろう。完成度を度外視するなら、この価格帯で左右独立型の製品もすでに登場してきてはいる。
しかし、使い勝手や装着感が洗練されていない製品を安いからという理由で購入しても、「左右独立型にしたら使いにくくなった。左右独立なんてこんなもんか」と、左右独立型そのものへの悪印象が生まれるだけではないだろうか。新しいもの好きとして購入するなら今だが、実用品として購入するならまだ様子見。個人的にはそのような印象だ。
一方、左右のイヤホンが普通にケーブルでつながっていて、その途中にリモコン&マイクが用意されているトラディショナルなスタイルの製品を見ると、ここ一年ほどでこの価格帯の製品の実力は目に見えて耳に聴こえてぐっと向上している。
チップレベルでのアップデートなど、技術面での細かな進化は常にあっただろう。しかし音質にしても使い勝手にしてもだが、その向上を実現させたより大きな要素は、「各メーカーがこのスタイルのBluetoothイヤホンを作り慣れてきた」からだと思う。
■エントリークラスBluetoothイヤホンのサウンドは?
それではまず音質面をチェックしていこう。この価格帯の製品はaptX HDどころか、aptXや下手をしたらAACにさえ対応していないモデルもある。しかし数年前にもう少し高価だった頃のモデルと比べても、現在のエントリークラスの方が耳心地のよい音に仕上がっている例も少なくない。
ハイエンドモデルでは高音質コーデックを採用し、伝送時の音質ロスを減らすことが正道だ。しかしエントリークラスにして良い音のモデルだと、標準的なコーデックを使いつつも、そこでの音質ロスを含めた上でエレクトリックとアコースティックの両面からチューニングして音をまとめ上げている。そのような手法を感じるものが多い。「再生の精度を上げることよりも、耳障りな音を出さないことを優先する」と割り切って音を仕上げてあり、それが功を奏しているといった具合だ。そういった判断であるとか、その判断に沿って仕上げるノウハウであるとかが、各メーカーに十分に蓄積されたのではないだろうか。