「もうシルバーバージョンには戻れない」
音質にさらなる磨きをかけた「micro iDSD BL」― 旧バージョンの愛用者、高橋健太郎氏がレポート
■micro iDSDで聴けるワイドレンジで深々としたサウンド
そこでまずはデスクトップで使ってみることにした。何日間か、最近、お気に入りの曲を何気なくプレイし続けてみた。iFI-Audio製品は中域が滑らかで、そこが音楽的だと感じてきたのだが、その基本的な印象はmicro iDSD BLでも変わらない。が、シルバーバージョンに比べると、micro iDSD BLの方がより芯のある、輪郭のくっきりした音がするようにも思われた。
ただ、新製品なのでエージングで差が出ている可能性はある。借りてきたmicro iDSD BLはすでに200時間程度のエージングはされているとういことだったが、2年以上使ったシルバーバージョンに比べれば、まだ音が硬い可能性はあるだろう。
ちなみに、デスクトップで使っているスピーカーはECLIPSEの「TD510 MK2」、アンプはCONISISのプロ用のパワーアンプ。それにmicro iDSD BLの出力を直結させて、使用した。PCはiMacで、再生ソフトウェアはiTunes+iTunes integrated modeのAudirvana Plus。音量調整はmicro iDSD BLのボリュームで行う形だ。
このデスクトップのオーディオセットは、リスニング・ポジションとスピーカーの間に90センチ程しか距離がないが、タイムドメインのスピーカーを使っているので定位やステレオ感、奥行きの表現が良い。micro iDSDはステレオ感の広がりがあるDACだと感じてきたが、その印象もブラックバージョンには引き継がれているし、さらに空間の透明度が増したようにも思われる。
続いて、リビングのオーディオセットでより集中したテストをしてみることにした。リビングのスピーカーはATC「SCM100ASL」。パワードスピーカーなのでmicro iDSD BLを直接繋ぐこともできない訳ではないが、バランス接続が望ましい環境なので、プリアンプのAR「Limited Model2」を使うことにした。
micro iDSD BLは固定ボリュームのDACモードに。他の設定はというと、パワーモードはノーマル。ポラリティーは+。IEマッチはオフになっている。PCはMAC MINIで、再生ソフトウェアはAudirvana Plus。この環境でハイレゾ音源を聴いてみることにした。坂本龍一の『async』、カート・ローゼンウィンケルの『Caipi』はともに96KHz/24bitだ。
坂本龍一の『async』を聴くと、「おお、これは!」と思った。リビングのオーディオコンポーネントの中に置いた小さなmicro iDSD BLは頼りなく見えるが、クオリティはまったく問題ない。ワイドレンジで深々としたサウンド。とりわけ、低域が印象的だ。シルバーバージョンも低音が出ない訳ではなかったが、サウンドの骨格がやや細身なところはあった。対して、micro iDSD BLは骨格が太くなった感触がある。これは気持ち良い。
カート・ローゼンウィンケルの『Caipi』は細やかな楽器の絡みがよく見えるし、音色がとても好ましい。シルバーバージョンも中域が音楽的に感じられたが、そこにさらに透明感や瑞々しさが加わった。
DSDの11.2MHzも聴いてみることにする。DACのポテンシャルを見るにはうってつけの音源となると、丈青のソロ・ピアノ作品『I See You While Playing The Piano』だ。micro iDSD BLはとりわけ解像度が高いタイプではないと思うが、ピアノの音色は瑞々しく、きりっとした緊張感があるし、空間がとても奇麗だ。このあたりはクロックの改良が効いているのかもしれない。いずれにしろ、これはもうリビングの常設にしても良いDACだと確信する。