有機ELならではの高い黒の表現力
【測定】ベゼルレスが斬新な「Galaxy S8」。有機ELディスプレイの画質を徹底チェック!
■目視評価
上記の測定結果が、実際の映像でどのように見えるか確認した。
「標準」
色再現はBT.709相当で派手さのないナチュラルな色味だが、ホワイトバランスは緑味が不足してマゼンタ(紫色)方向へシフト。結果、白色やスキントーンに赤みが乗ったように見える。
「AMOLEDシネマ」
全体の赤味に加え、ピンクの蛍光感がかなり強くなる。
「表示を最適化」(色温度調整後)
ピンクに加えて緑も蛍光感が強く、色再現はなかり派手になってしまう。ホワイトバランスはD65に近く修正できているので、スキントーンの赤味も弱まりナチュラルなイメージになる。
【使用している映像素材について】
フリー写真素材を用いて作成した画質テスト用映像[1080p](YouTube)を用いてチェック。
■総合評価/判定
測定の結果より、本機の設定項目ではHDTV基準に追い込む事ができず、マスターモニター的な利用は難しい。一方でBT.709に近い色域設定の「標準」モードを備えているのも事実で、「標準」でも色温度が設定できるようにさえしてくれたら、かなり良い線まで追い込める可能性がある。今後のファームウェアアップデートでの対応を期待したい。
現状でベストな設定を考えると、ホワイトバランスを優先するなら「表示を最適化」で色温度の調整を、赤や緑の蛍光感が気になるユーザーの場合は「標準」モードを選ぶのが良いだろう。
■HDR映像を目視チェック
せっかくなので、目視ではあるがHDR映像も確認した。Xperia XZ Premium測定時と同様に、Amazonビデオの4K/HDR作品からオリジナルドラマ「弁護士ビリー・マクブライド」で試聴した。
シーズン1、エピソード1の冒頭、暗い海を行く漁船の上でライトの輝きが印象的。この時点でHDRと分かる。海や背景といった暗部は有機ELパネルのお陰で深く沈み、吸い込まれるような「黒」が感じられ、そこに作業用のライトがピーク輝度の高さを活かしてキラリと輝く。光源の周りにハレーションもなく、ライトの形もはっきり分かり、実際の風景を目の当たりにしているかのような雰囲気が味わえる。ダイナミックレンジの広いハイコントラストな映像美が堪能できるのだ。黒から光始めの階調(1〜3%程度)が潰れてしまっているようでパーフェクトでないものの、見とれてしまう美しさだ。
参考までに、同じシーンを暗部から中間分の輝度が同等に見えるように調整したiPhone(SDR版)で見ると、黒が浮いていて更にそれが色を薄めてしまっていることに気が付く。明るい部屋で見ればあまり気にならないが、暗室では、やはり液晶の弱点が露呈する。そしてやはり最大の相違点はピーク輝度。iPhoneではライトが光源であることは分かるものの、心を揺さぶるような力はない。
ちなみに本機では、SDR映像でもピーク輝度の高さを感じることができた。測定データ上では特異な点は見つからなかったので、黒の沈みによる絶対的なコントラストの高さがもたらしたものと思われる。平均輝度が高いシーンでも色乗りの良さが心地良い。「標準」モードでは色域はBT.709相当でiPhoneと同等のはずだが、本機は明らかに色の純度が高い。測定用の単色カラーパッチを測定した値は同じでも、実際の動画映像では明暗の入り交じる複雑な画柄が動くので、黒が沈んで色が薄まらず残像も少ない有機ELの本機が有利なのだろう。
分析した結果、マスモニ的に用いるのは難しいが、有機ELパネルによる黒の沈みは、やはり見ていて気持ち良い。参考までに夜景シーンをiPhone 7と比較してみた。写真では少し分かりづらいが、iPhone 7は暗部が浮いているとまでは言わないものの、画面左上の空に注目するとうっすら青味が乗るのに対し、本機はニュートラルな黒が心地良い。iPhoneに比べて黒が潰れるような印象もなく、有機ELによる黒の表現力の高さは見入ってしまうほど美しい映像を作り出している。
明部でグラデーションに色転びが見られるなど完璧とは言えないものの、高コントラスストで色の純度も高く、映像を艶やかかつ色彩豊かに楽しめるという点では非常に良い端末と感じた。また余談ながら、スリムで洗練されたボディーは魅力的でUIも美しく、Android端末が苦手な筆者も個人的に使用してみたいと思った。