[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第201回】これを読めばBluetoohの規格/用語/注目点が分かる! BTオーディオの基礎知識 2018
●aptX
同じく「基本的にはSBCよりも高音質」な高音質コーデック。スマートフォン向け基幹チップを開発製造するクアルコム社によるコーデックであり、その機能は同社のチップに普通に搭載されているため、スマホでの対応例も多い(iPhoneは別)。
なお音質を可能な限り保ったままデータ容量を圧縮するコーデックのaptXと、頭脳は大人のまま見た目は子どもになる薬“APTX4869”に関連があるかは不明。前者の命名理由も後者の本来の効果もまだ謎に包まれている…。
●aptX HD
aptXをベースに、量子化ビット数を24bitにまで拡張したコーデック。こちらもクアルコムが開発し推進している。最大スペックとしては48kHz/24bit。オーディオ協会の定義する96kHz/24bitには及ばないが、一般論的には「ハイレゾに値する数字」として良いだろう。
圧縮で失われる要素も加味すれば、最終的なデータ・音質としてはハイレゾと同等ではないが、既存コーデックに対して大きな優位を備えることは確かだ。ライバルの「LDAC」に対しては『576kbpsというLDACよりは低めの固定ビットレートによる安定性』が優位点か。
●LDAC
こちらはソニーが開発し推進している高音質コーデック。最大スペックは96kHz/24bit。こちらも「ハイレゾに値する数字」を確保しており、実際の音を確認しても既存コーデックに対して明確な優位を備えている。
ライバルのaptX HDに対しては『最大990kbpsという高いビットレートで96kHz/24bitまでに対応』というスペックが優位点。高速接続を確保できない状況ではビットレートが変動低下し音質も低下するが、接続は確保する。「音質優先」「標準」「接続優先」モードを任意にも切替可能だ。
●aptX Low Latency
高音質化を狙う上記の二つとは異なり、レイテンシー、つまり遅延の低減を実現するコーデック。レイテンシーとは?については後述するとしてここでは、このコーデックはどの程度の低減を実現するのかについて説明する。
各コーデックについて、それぞれその数字の前後への揺らぎもあるものとして、以下のとおり。
・SBC:220ms(0.22秒前後)
・AAC:120ms(0.12秒前後)*128kbpsの場合
・aptX:70ms(0.07秒前後)
・aptX LL:40ms(0.04秒前後)
●ハイレゾ相当
aptX HDとLDACのスペックや音質については「ハイレゾ相当」のような表現をされることも多い。しかしそれだとユーザーに「いわゆるハイレゾと(ほぼ)同等」と誤解をされてしまう可能性も高く、また誤解をされない場合は「ハイレゾに近いがハイレゾには及ばない」というネガティブな意味合いになってしまう。どちらにしても、メーカーにとっても本意ではないだろう。
筆者としては、ハイレゾと比べるのではなく「既存のBluetoothコーデックを明確に上回る」といった、ポジティブな表現や理解の方が心地良いのでは?と提案したい。
●aptX HDとLDACのエンコーダーのAndroidへの提供
aptX HD、LDAC共に、そのエンコーダーのソースコードは現在、AOSP(Android Open Source Project)に寄贈されている。つまりスマホなどのメーカー各社は、Androidの一部として両コーデックを、クアルコムやソニーとのライセンス契約を必要とせず、無料で実装できる状態だ。
ただしそれはあくまでもスマホなどに搭載するエンコーダー、送り出しの側の話であり、イヤホンやヘッドホンのデコーダー、受け取り側の製品については従来通り。
とはいえ送り出し側での採用のハードルが下がったことは事実であり、採用例は増えてくるだろう。送り出し側がそうなれば受ける側も……という流れは期待できる(関連記事「次期Android“Oreo”が対応「LDAC」「aptX HD」はどのスマホで使えるようになるのか?」)。