[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第201回】これを読めばBluetoohの規格/用語/注目点が分かる! BTオーディオの基礎知識 2018
■その他のBluetoothにおけるポイント
その他、知っておいた方が便利だったり、知らなくても別に不便ではない(が、知っていて損はない)事項などをご紹介。
●ペアリング
Bluetoothイヤホン/ヘッドホン等を利用開始する前、スマートフォンなどとBluetooth設定画面で登録する、あの作業。イヤホンなどオーディオ製品の側では製品ごとにペアリング開始の操作が異なり、正直分かりにくいことでもおなじみ。
もちろん操作方法は説明書を読めば書かれているが、「ペアリング専用ボタンが見当たらない場合、“電源オフの状態から電源ボタンをしばらく押しっぱなしにして、ランプが赤青などで点滅し始めたらペアリング準備が完了する”ことが多い」というのは覚えておいて損はないだろう。
●NFC(Near Field Communication)
Bluetoothよりもさらに超短距離、低速、低消費電力に特化した無線通信規格。身近なものとしては、SuicaやPASMOといった電子マネーカードもNFCを基盤としたFelica技術を用いている。
オーディオにおいては、「NFC対応のスマホとヘッドホンをちょこんと近づけるとBluetoothでペアリングされる」という、ペアリング簡略化の仕組みとして利用されている。NFCの通信が「超短距離」でしか成立しないことを利用し、意図しない勝手なペアリングは起きないようにしてあるわけだ。
なお近年のiPhoneシリーズにもNFCチップは搭載されているが、一般的なNFC機能は現時点で実装されておらず、前述のような利用方法はできない。
●マルチペアリング
イヤホンやヘッドホンなどを複数台のスマートフォンやパソコン、DAPとペアリングしておける機能。ペアリングはしておけるが同時に接続できるわけではない。例えば「スマホ側で接続を解除してパソコンから接続する」といった手順で、その時に使いたい方の機器との再接続は必要。つまり「毎回の接続切り替えは必要だが毎回のペアリングは不必要」というのがマルチペアリングの利点だ。
●マルチポイント
細かなところをすっ飛ばして実用的な話としては、「通話用ヘッドセットなどを複数台のスマートフォン等と接続しておき、どちらのスマートフォンへの着信も待ち受けられる状態にできる機能」だ。オーディオとはあまり関連がないので、スペック表で見かけた場合には「そういうもの」とだけ思っておけば良いだろう。
●SCMS-T
デジタルコンテンツ保護システムの一つ。ポータブルオーディオにおいては「ワンセグの音声をBluetoothで送受信する際にはこの方式への対応が必須」だ。…なのだが、今や「ワンセグって言葉、久々に見たな……」くらいの感じだと思うので、もはやさほど気にしないでも大丈夫(だろう)。
●Class
Bluetooth送信側製品の電波の最大出力と到達距離のおおよそのクラス分け。電波出力の区分けも大雑把で、また到達距離にはアンテナ設計等も大きく関わるので、数値は大まかな目安程度と考えて良い。送信出力を上げれば到達距離や伝送の安定性の面では有利だが、消費電力の面では不利になる。
・Class 1:100mW/100m程度
・Class 2:2.5mW/10m程度
・Class 3:1mW/1m程度
■イマココ!キーワード
最後に、今特に注目される「完全ワイヤレス」、そしてNFCを超える利便性をもたらしてくれる、ペアリング周りの新技術について紹介したい。
●Bluetooth 左右連結方式(仮)
名称は本記事における便宜上のもの。英語っぽくするなら「Bluetooth LR Linking(BtLRL)」方式とかだろうか。
完全ワイヤレスの実現において、左また右のイヤホンをスマートフォン等とBluetooth接続し、そちら側のイヤホンから逆側のイヤホンへもBluetoothで接続する方式。現時点での主流だが、現時点では接続の安定性などに不安を抱える製品も多い。
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