PCM768kHz/DSD512対応、MQAレンダラー機能も搭載
ポケットサイズのDAC内蔵ヘッドホンアンプ、iFi audio「xDSD」。海外出張で使い倒した
■旅先でも快適にハイレゾを楽しめる「xDSD」
今回は中国のシンセンが目的地だったが、往路に韓国・仁川でのトランジットを挟む旅程だった。途中乗り換え便の待ち時間が3時間もあったので、iPhoneとxDSDの組み合わせで早速試してみた。アップル純正のLightning変換アダプターと比べるまでもないが、xDSDのエネルギッシュでパワフルな音質には圧倒されるばかりだった。
仁川空港では無料のWi-Fiサービスが時間無制限で利用できたので、Spotifyの音楽配信を聴きながら待ち時間を有意義に過ごせた。生々しいボーカルの実在感、ナチュラルな楽器の音色はiFi audio製品が共有する持ち味。階調感がとても滑らかで、密度も濃い。楽曲がはまると、リアルなステージの情景が目の前に浮かび上がってくる。
アリス=紗良・オット「ショパン・ワルツ集」の『ワルツ第2番 変イ長調 華麗なる円舞曲 Op.34,No.1』では、最初はツンとしていたピアノが少しずつほころびはじめて、優し気な表情が顔をのぞかせる。クライマックスでは温かみ豊かな和音に包まれた。中高域の繊細なニュアンスを緻密に、かつ滑らかに引き出すxDSDとCL1との相性は抜群に良かった。タイトでシャープな低音は色んなジャンルの音楽から心地良い緊張感を引き出せるだろう。
仁川空港は各搭乗ゲートの周辺に充電スポットが充実していたので、xDSDを充電しながらのんびりと音楽を聴いて過ごした。Qi規格に対応するワイヤレス充電パッドもあったので、ついでにiPhone Xを置いてアンプとスマホを同時にチャージ。続きのリスニングは音源をキャッシュして、機内でゆっくり楽しんだ。
iFi audioの製品が共有するエフェクト機能である「3D+Matrix」と「XBass+」は、xDSDの場合本体フロントパネルのボタンから操作する。それぞれを片方ずつ、または両方同時に効かせることができる。飯島真理のライブアルバムから『天使の絵の具』を選んで、3D+Matrixをオンにしてみると、中高域の見晴らしが一気に広がった。特にボーカルの高域が伸びやさを増してくる。これはライブ音源との相性が特に良さそうだ。
ベーシストのマーカス・ミラーのアルバム「AFRODEEZIA」の楽曲を再生しながらXBass+の効果を試すと、オンとオフの状態では低音の肉付きに明快な差が表れた。元もと低音成分を多く含む楽曲を静かな環境で聴く時には、機能をオンにすると膨らみすぎる感もあるが、飛行機の中など騒音に囲まれる屋外でのリスニング時には敢えてオンを選んだ方が全体のバランスが整うかもしれない。リスニング環境や楽曲ごとに、聴感の好みに合わせながら柔軟に使い分けたい。
飛行機の長旅を終えてホテルに到着。夕食を済ませて部屋に戻り、翌日から始まる展示会の取材を迎える前に音楽を聴いてリラックスしてから眠ろうと考えた。スーツケースからxDSDでデスクトップリスニングを楽しむための一式を取り出した。と言っても、用意したものはUSBケーブルとUSB OTGケーブルぐらいで、セッティングも非常にシンプルだ。