【特別企画】操作感/音質が強化された“Mシリーズ” の代名詞
今欲しい機能が“全部入り”の先進DAP。4.4/2.5mmバランス端子搭載、FiiO「M11」レビュー
OSはAndroid 7.0をベースに、サンプリングレートまわりの仕様などオーディオ向けにカスタマイズしたもの。そのため、操作感は一般的なAndroidスマホとほぼ変わらない。唯一スマホと異なるのは、Google Playストアを搭載しないためアプリのインストールに制限があるという点。ただ、主要な音楽ストリーミングサービスなどのアプリは専用のホワイトリストからダウンロードできる他、他社製DAPでも採用実績のある「APKPure」といったアプリ提供サービス等も利用できるそうなので、DAPとして利用する上で困ることはないはずだ。
■端子の “全部盛り” をはじめ、“Xシリーズ” のエッセンスも見え隠れする
出力端子以外のオーディオ面も、これまでのMシリーズから一段進んだ充実ぶりが見て取れる。DACには旭化成エレクトロニクスが昨年発売を開始したばかりのポータブル機器向けチップ「AK4493EQ」をデュアル構成で採用。アナログ回路には、ノイズフロアと消費電力の低減を重視した特注オペアンプ「OPA926」をはじめ、抵抗やコンデンサーなどに高品位なオーディオ部品を使ったチューニングに余念がない。
M11のオーディオ面、および外見上もっとも大きなポイントは、ボディ下の端子部にある。基本となる3.5mmアンバランス出力はもちろん、2.5mm 4極/4.4mm 5極 両方のバランス出力を搭載しており、ポータブルオーディオで広く使われている3種のジャックを1台でカバーするのだ。
2.5mm/4.4mmそれぞれの規格にそれぞれの利点があり、メーカーごとにどちらを取るか意見が異なるのも頷けるが、ユーザーからすれば規格の分裂は悩みのタネ。筆者も、4.4mmジャック搭載のプレーヤーを愛用しているのに、新しく買ったイヤホンに付属するバランスケーブルが2.5mmプラグだったとか、気になるリケーブルが2.5mmモデルしかラインナップしていないとかいう場面によく出くわす。プラグ変換ケーブルはあるが、ケーブル長をむやみに伸ばしたくないというのが本音だ。
FiiOはこの問題に対し、“Xシリーズ” のトップエンドモデル「X7」「X7 Mark II」やポータブルアンプ「Q5」で、出力端子とアンプ部をモジュール化・交換式とする解決法を提示した。これはユーザーごとに本当に必要な仕様だけを取捨選択できる優れたシステムだが、内部スペースの確保など設計上の困難もあったようだ。
そこで、M11ではさらに思い切ってモジュール交換すら不要の “全部盛り” にしてしまった。これならもう、イヤホン/ケーブルメーカーがどちらの規格を好もうが、ユーザーが気を揉むことはない。イヤホンマニア的には、新しいイヤホンやケーブルを購入した場合はもちろん、店頭でイヤホンの聴き比べをする際に端子のマッチングを考慮しなくて良いのが嬉しいところ。
マニア心をくすぐるのは、3.5mm端子がヘッドホン出力だけでなくライン/同軸デジタル出力を兼ねている点も同様だ。特にライン出力は、設定画面から「ラインアウト」をオンにすることで、音声信号がヘッドホン用回路をバイバスする本格的な設計を行っている。外付けのポータブルアンプを利用するユーザーにも最適ということだ。
このクラスで音質も利便性も高いレベルで両立させようとする姿勢は、Xシリーズの中堅モデルとして人気を博していた「X5」を思い起こさせる。実際、FiiOではM11を、X5の第3世代モデル「X5 3rd」に置き換わるものと見なしているとのことで、“Mシリーズ” を代表するミドルクラスのモデルと捉えて差し支えなさそうだ。
■再生アプリとの組み合わせでネットワーク機能も充実。屋外から屋内まで使い所は多い
Mシリーズのもうひとつの柱である、充実したワイヤレス機能も健在だ。Wi-Fiは高速通信の5GHz帯/汎用性が高い2.4GHz帯のデュアルバンドに対応。Bluetoothはバージョン4.2に準拠し、LDAC/aptX HD/aptXといった主な高音質コーデックをひと通りカバー。さらにプリインストールの再生アプリ「FiiO Music」を使用することで、もう1つの高音質コーデック・LHDC(HWA)の送信にも対応できる。
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