[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第233回】完全ワイヤレスからハイブリッド、ダイナミック一発と新イヤホン盛況!「ポタフェス2019夏」高橋敦的ベスト5
【第2位】ハイブリッドイヤホン新世代ハイエンドの攻勢!
先週のポタ研では「FitEar DC」に注目したが、実はそのポタ研にて、筆者が訪れたタイミングではブースが混みすぎていて取材を断念したのがミックスウェーブ。そこで今回再チャレンジしてみると、こちらにも注目すべきハイブリッドドライバーイヤホン新モデルが!
まずはFAudio「Project Y」。低域側からダイナミック+BA+静電型のハイブリッド。
去年末のポタフェス、先週のポタ研に続いて三度目の参考出展となるが、チューニングはそのたびに全て別とのこと。日本で展示されたその三回とも、チューニングが全て違うというだけではなく、その他にも何度も試作を重ねているとのことだが、今回のバージョンのサウンドで「おそらく九割完成」だとか。
筆者は去年末「ポタフェス2018冬」バージョン以来の試聴だったが、その感触はかなり変わっていた。その時はダイナミックドライバーによる低域の重心が高く、低音の「太さ」を主張するものだったが、今回のバージョンは重心が下がって低音の素直な「沈み」を感じさせる。静電型による超高域も主張は薄れ、質感をより自然に表現するものとなった印象だ。
思うに初期展示バージョンでの音作りは、この組み合わせのハイブリッドでの各ドライバーの特徴をまずは強調し、そこからどう作っていくかの「叩き台としてのわかりやすさ」を狙ったものだったのかもしれない。そして展示試聴でのユーザーからの感想も含めて叩き上げて今回のバージョンのように仕上げてきたのではないだろうか。以前のバージョンの音がしっくりこなかった方も、次の機会があれば改めてチェックしてみてほしい。
続いてはUnique Melody「MAVERICK III Custom」。これまでと同じくダイナミック+多数のBAによる複雑なドライバー構成だが、そのダイナミック型ドライバーを新型として担当帯域も再調整、それに合わせてその上のBA型の担当帯域も調整。さらに……
加えて同社「MAVEN」で初採用の新技術「Targeting Frequency Adjustment Technology(T.F.A.T)」も採用。BAドライバーがどうしても発生させてしまうピークノイズに対して、別途の同機能専用BAドライバーから逆位相信号をぶつけてキャンセリングするという技術だ。そのためのドライバーが、筐体から耳への音の出口の、最後の最後のところに設置されている。
サウンドチューニングにおいても、最終段階はこのT.F.A.Tの効かせ具合の調整だったというほどに、この機能の貢献は大きかったようだ。効かせすぎると音の歪みや雑味のような成分が「不自然なまでに」消えてしまうので、さじ加減が難しかったとのこと。
なお代理店としては「こんな場所にドライバーを設置して、雨とか汗とか湿気とかの悪影響を受けたりしないの?」と確認したが、開発者からの返答は「BAの頑丈さ舐めんな」だったとのことなので安心してほしい。
そのサウンドであるが、個人的には歴代MAVERICKシリーズで一番の好印象! 音作りにおいて稼ぎたくなりがちな太さや厚みといった要素を、いかにあえて削ぎ落とすか。その攻め具合が素晴らしい。例えば肉体の強さ美しさをアピールするためには、筋肉を増やすだけではなく、贅肉を削ぎ落とすことで筋肉の彫りを見えやすくすることも必要だろう。その削ぎ落とすアプローチの見事さを感じさせる、彫りが深く立体的なサウンドだ。もちろん十分な力強さも備えている。
なおカスタム版の後にはユニバーサル版も予定はしており、現時点では、音響的に、つまり「音が良いから」という理由でチタンハウジングの採用を考えているとのこと。チタンハウジングだとその分のコストアップで、カスタム版とほぼ同額くらいになりそうな予感はするが、ユニバーサルモデル好きな筆者としてはそちらにも期待!
その他には、発売以来大好評のMEZE Audio「REI PENTA」も引き続き展示されていたし、ハイブリッド型ハイエンドイヤホンはジャンルとして絶好調と言えるのでは?
次ページダイナミック一発で勝負!TAGO STUDIOやAstell&Kernから新イヤホン登場