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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第233回】完全ワイヤレスからハイブリッド、ダイナミック一発と新イヤホン盛況!「ポタフェス2019夏」高橋敦的ベスト5

公開日 2019/07/18 06:30 高橋 敦
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【第1位】ダイナミック一発!の三連発!

しかし、だ。ダイナミック型一発! も、もちろん負けてはいない! 特にTAGO STUDIO TAKASAKI「T3-02」とAstell&Kern「AK T9iE」は長い行列を作っていた。

TAGO STUDIO TAKASAKI「T3-02」は、おおよそ4万円未満程度の価格を予定しており、今夏にまずクラウドファンディングから展開を始めるとのこと。

こちら右側のヘッドホンT3-01の好評を受けて……

イヤホン始めました!

派手な宣伝なしにジワジワと評価を高め、人気モデルとなった同社モニターヘッドホン「T3-01」のサウンドを、屋外でも楽しんでもらうためのイヤホンとして開発したのこと。そのためにまずはレコーディングスタジオの「部屋の中に部屋を作るBOX-IN-BOX構造」をイヤホンに応用。

アウターハウジングの中にステンレス製のコアユニットを収納することで遮音性をぐっと高めたとのこと。その上で、それでも侵入してくる騒音にマスキングされやすい帯域をやや強めにチューニングすることで、最終的にユーザーに届くサウンドをT3-01と同じくナチュラルなものに仕上げてある。

言葉のニュアンスの話になってしまうが、音の表現として、例えば「クリア」ではなく「ナチュラル」という言葉を同社自らが選んでいる、その意味がわかるようなサウンドだ。あるいは「プレーン」という言葉も当てはまるかもしれない。そういった感触とモニターとしての正確性を巧みに同居させてあることがTAGOサウンドの特徴だ。

なお、リケーブル端子はMMCXをベースに埋め込み型的な形に仕上げられている。端子をグニグニこねるように抜き差しされてしまうと端子に負荷がかかり故障につながりやすいため、それを防ぐ方策としてこの形を採用したとのこと。

代わりにリケーブル製品一般との互換性は損なわれているが、同社はヘッドホンT3-01に純正アクセサリーとして各種バランス接続端子版ケーブルを用意。なのでイヤホンでの純正ケーブル展開も期待できる。その点はさほど心配しなくてよいだろう。

もう一つに注目イヤホン、Astell&Kern「AK T9iE」は、beyerdynamicとのコラボレーションで生み出された「AK T8iE」の後継となるモデル。

フェイス面のデザインはリフレッシュされているが全体としてはT8iEを継承

イヤホン用としては太い!太すぎる!ケーブル、ヘッドホン「AK T5p 2nd Generation」のものと同等とのことで納得

後継とはいうものの、T8iEがおおまかには「beyerdynamic設計モデルのAKチューニングバージョン」といったコラボレーションでの製品だったのに対して、こちらT9iEは、T8iE開発の成果であるドライバーや設計や「Made by beyerdynamic」は継承しつつ、頭っからAK製品として設計されたものとのことだ。

音響機構としては、ステム先端に新開発2層構造アコースティックフィルターを搭載し、高域特性をよりスムーズに。ハウジングの「アコースティックベントポート」も改良し、よりレスポンスに優れた低域再生を実現。その他、例の独特な形状のイヤーピースはT8iEは5サイズ付属だったところ今回は7サイズに。

実際に聴いてみると、普段からT8iE MkIIを愛用する筆者としても「これは確かなアップデート!」と納得。イベント会場での試聴は細かなところまでは評価できないが、「よりスムーズな高域とレスポンスに優れた低域」という狙いは見事に達成されていると感じられた。これは登場が実に楽しみ! 早くしっかり聴き込みたいモデルだ。

最後にもうひとつ、毛色の異なるタイプのダイナミック型一発モデルも紹介しておこう。astrotec「Lyra Nature JP Version」だ。2万円以下くらいで発売予定。

非カナル型にしては珍しいケーブル耳掛けスタイル

マイクロ多孔質フィルターとMMCXリケーブル端子もポイント

非カナル型スタイルを採用し、カナル型では難しい15mmという超大口径ドライバーを搭載。ハウジング背面にはマイクロ多孔質フィルターを採用しており、「そのフィルター効果で最適化された背面半開放型」といった感じだ。

カナル型ではないのだが、その割には騒がしいイベント会場でも妙に心地よく試聴できた。周囲の音とうまく調和するような音作りが功を奏しているのかもしれない。低域から高域まで素晴らしく豊かな厚みがあるのだが、もっさりとせずにしなやかなサウンドで、上記のようなモニター的あるいはハイエンド的な極上サウンドとはまた別の魅力がある。



今回の「ポタフェス2019」では、完全ワイヤレスイヤホンも「定着した普通のアイテム」となり、そこに注目が集まりすぎることもなく、様々なジャンルに魅力的な製品が溢れていてバランス良好! この夏、そしてそれ以降への期待が膨らむイベントであった。

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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