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0.1dB刻みのボリューム回路を新開発

エソテリックの旗艦プリアンプが正統進化。構成回路を一新し音楽の旨味をさらに引き出す

公開日 2021/03/10 06:30 角田郁雄
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■ディスクリートのアンプモジュールや重量級の外部電源を新設計

C1Xの魅力はそれだけではない。同社は半導体ディスクリート・アンプモジュール「IDM-01(インテグレーテッド・ディスクリート・アンプモジュール01)を開発。独自の電流伝送方式である「ES-LINK Analog」の入力アンプ(電流/電圧変換)と出力アンプ(電圧/電流変換)に使用したのである。

この素子はパーツを選択して使用できるディスクリート回路の特徴を備えていることが大きな特徴。しかも、回路面積が狭くでき、外来ノイズの影響を受けず、伝送距離を最短にできる優位性も備えているのである。なお、これらの技術を搭載する基板は、音質を維持し振動の影響を受けないようにするため、筐体からフローティング設置されている。

次に重量級の外部電源に注目しよう。内部には4つのトロイダルトランスと大容量ブロックコンデンサーを搭載。これも左右ホット/コールドの独立構成で、プリアンプ本体にクリーンで余裕のある高品位な電源を供給している。

電源部の内部。デュアルAC入力、デュアルDC出力のDCパワーサプライを実現すべく、4基の大容量トロイダルコアとRコア1基による5トランス構成を採用

さらにRコアトランスを使用する制御回路専用電源も搭載し、 まさにマッシブな電源回路を実現しているのである。なお、C1Xでは制御回路がアナログ回路に影響しないように光フォトカプラーを使用するほか、再生中のCPUの動作停止、天板のフローティングなど、多数の配慮がなされている。そして、底板やフットにも独創的な機構を採用しているのである。

■演奏前のわずかな空気感をクローズアップ。高解像度で空間描写に優れる

今回は同社のリスニングルームで試聴する機会を得た。最初に楽器数が少なく穏やかなヴォーカル曲『クワイエット・ウィンター・ナイト』を再生した。ここですぐさま感じ取ったことは、格別にS/Nに優れ、高解像度で空間描写に優れていることだ。

試聴は同社の試聴室で行った。スピーカーはavantgardeの「UNO XD」。SACDプレーヤーは「Grandioso K1X」+専用強化電源「Grandioso PS1」を、パワーアンプは「Grandioso M1」を組み合わせ(photo by 君嶋寛慶)

演奏前のわずかな空気感をC1以上にクローズアップし、バスドラムでは微細な響きを伴いながら、タイトに鳴り響いた。中央には微妙に身体の向きを変えながら歌唱する女性ヴォーカルが定位し、その声質には息遣いや粘るかのようなウェットな質感までも再現された。

まさにホログラフィカルな空間描写性で、聴いているとあたかも生演奏を聴くかのような感覚である。そして、右からは木質感を鮮明にしたベースが定位し、中央付近には鈴のようなパーカションの響きが倍音豊かに流れてくる。空間の幅、奥行きをよく再現することも理解できた。

次にアラベラ・美歩・シュタインバッハーの『ヴィヴァルディ:四季&ピアソラ:ブエノスアイレスの四季』を再生した。ここで私が注目したことは、極めてワイドレンジで、音の立ち上がりが素早いことであった。冒頭のピアソラでは、音数が多く膨らみのある弦楽パートが立ち上がり良く鳴り響き、その中央にストラディヴァリウスを奏するアラベラがリアルに定位。まさに切れ味が良くスリリングと言えるソロが堪能できる。

アラベラ・美歩・シュタインバッハー、ミュンヘン室内管弦楽団『ヴィヴァルディ:四季&ピアソラ:ブエノスアイレスの四季』(PENTATONE PTC5186746)

しかも、実に濃厚な響きを聴かせてくれるのである。この響きにはクラシックファンもきっと惚れ込むことであろう。立ち上がりが俊敏であっても、アタック感や硬さを不自然に強調することはなく、音楽に内包する繊細さや柔らかさや空間性、躍動感を鮮明にするのである。C1Xはこういったサウンド・テイストの再現力が素晴らしいのである。

最近発売されたブルーノ・ワルター指揮、コロンビア交響楽団による最新リマスターSACD『モーツァルト&ハイドン/交響曲集・管弦楽曲集』も聴いてみた。その音質はレコードとは味わいが異なり、ダイナミックレンジが広く、高解像度で臨場感に溢れた演奏が体験できた。C1Xの音を体験したい読者には、ぜひともこのダイナミックレンジの広さにも注目して欲しいし、音量を大小に可変しても、音像定位が変化せず、ここまで滑らかに音量可変できるのには驚いた。

最後にパトリシア・バーバーの『コンパニオン』の中から「ブラック・マジック・ウーマン」を再生した。あたかも最新リマスターしたかのような、生々しくダイナミックな演奏が空間描写され、ここでも驚愕した。

ほかにももっとたくさんの音楽を聴きたい欲求にかられてしまう。なぜなら本機、Grandioso C1Xを通した音楽は、生演奏のように昇華してしまうからだ。これは技術に裏打ちされた音楽の世界だ、と納得させられるのであった。私は本機の誕生に喝采を贈りたい。


開発者から


エソテリック(株) 取締役、開発・企画本部長 加藤徹也氏

型番にXが足されるだけで、外観はボリュームノブの仕上げが違うのみ……。簡単なマイナーチェンジと思われてしまいそうな変化ですが、中身はオリジナルC1とはまったく別物なんです。プリアンプを構成する「入力切り替え回路」、「ボリュームコントロール回路」、「出力回路」の全てを一新させる挑戦をC1Xに注ぎ込みました。

独自の電流伝送ES-LINK Analogの入出力への対応、全音量域で0.1dBステップのコントロールを可能にするオリジナルアッテネーター素子UFA-1792、ディスクリートアンプと集積回路、双方の有利な点を併せ持つオリジナルアンプモジュール素子IDM-01、各パートの振動を音質的に最適化するシャーシ構造など、エソテリックの新たな挑戦をご自身の耳で確かめてください。

(提供:エソテリック)


本記事は季刊AudioAccessory vol.178 AUTUMNからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから

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