公開日 2014/01/28 12:24
Audyssey CTOインタビュー − クラウド活用のヘッドホン高音質化技術などデモ
テレビ向けの新高音質技術も紹介
1月初旬に米ラスベガスで開催されたCES 2014では、様々な新製品に加え、新たな音響技術の発表や出展も行われた。サラウンド技術や音場補正技術で知られるAudysseyは、会場のひとつであるLVH(ラスベガス ホテル&カジノ)のスイートルームにブースを設け、同社の最新技術の展示を行った。
今回、Audysseyの設立者であり、最高技術責任者を務めるChris Kyriakakis氏に、同社の最新技術について話を聞いた。その模様をお伝えしたい。
当サイトの読者ならご存じの方も多いだろうが、念のため改めてAudysseyについて解説しておこう。同社はそもそも南カリフォルニア大学(USC)のImmersive Audio Laboratoryが母体。USCの映画芸術学部の教授であり、THXの開発者であるTom Holman氏と同大学の音響工学教授だったChris Kyriakakis氏が中心となって2002年に設立された会社だ。同社の音場補正技術である「Audyssey MultEQ」はデノンやオンキヨー、マランツなどの多くのAVアンプに採用されている。2009年には拡張サラウンド技術である「Audyssey DSX」を発表。現在ではIMAXシアターへの音場補正技術の採用や、車載用向け技術の展開など、ホームAVにとどまらない様々なシーンにその技術を提供している。
今回はChris Kyriakakis氏自らが、同社が取り組む3つの新しい技術について解説してくれた。
■テレビの音質を向上させる「Audyssey BassXT for TV」
「Audyssey BassXT for TV」はテレビ向けの音質向上技術だ。「Audyssey BassXT」自体は低音を拡張する技術として、すでに様々な製品に搭載されているが、今回紹介されたのは、その最新版であり、テレビ向けに最適化したものである。
同氏は、低音を拡張する技術の多くは、倍音成分を使って擬似的に低音を強調して聴かせるものが大半だと紹介。それに対してこのBaseXTは、低音の帯域をより低い周波数に下げることで、よりリアルな重低音を実現できる。またボリュームに連動させて、破綻しないぎりぎりまでの低音を再現できることもポイントだ。
デモンストレーションでは、このBaseXTでテレビ向けにどのようなアプローチができるものかということを紹介した。通常のテレビスピーカーはドライバーが小さいため、豊かな低音はまず再生できない。もちろん大きいドライバーを使うこともできるが、テレビである以上、エンクロージャーのサイズは限られてしまう。
Audysseyではソフトウェア・ソリューションである「BaseXT」を用いてこうしたテレビ用スピーカーの音質を向上させることに加え、スピーカーのデザインまでAudyssey自身が行い、BaseXTの効果を最大限活かせるテレビスピーカーを提案していくという。
Lチャンネルに通常のスピーカー、RチャンネルにAudysseyがデザインし、かつBaseXTを採用したスピーカーを備えたテレビのデモでは、「Audyssey BassXT for TV」を用いた、テレビの内蔵スピーカーでも豊かな低音とクリアネスの高いサウンドが得られることをアピールされていた。
■Audyssey ExpertFit
次に紹介してくれたのが「Audyssey ExpertFit」だ。同社が培ってきた測定技術を使い、ヘッドホンやBluetoothスピーカー、さらにはサウンドバーまでの音質を向上させるという技術である。
このAudyssey ExpertFitにおいては、実際に世に流通している製品を測定してプロファイルを作り、クラウドのデータベースに蓄積していく。Audyssey ExpertFitを実装したメディアプレーヤーやオーディオプレーヤーは、このデータベースに蓄積されたプロファイルを用いて補正を行い、最適なサウンドを実現する。
Audyssey ExpertFitは、同社独自のiOS/Android用プレーヤーアプリ「Audyssey Music Player」に既に実装されている。この技術はiOS/Androidどちらにも組み込め、通常のPCMはもちろんハイレゾ音源にも適用できる。
なお、「流通している製品を測定してプロファイルをつくる」という作業は日々進められており、データベースも頻繁に更新されている。新製品も追加されていく。データベースはクラウドに蓄積されるので、アプリのアップデートを行わなくても最新製品のプロファイルを使ったサウンドの最適化が行える点も魅力だ。
しかし、実際にプロファイルを作る上で、リファレンスとなるサウンドはどのように決められているのだろうか。Audysseyでは、ハリウッドのミキシングスタジオの協力を得て、実際にどのようなミキシングが行われているかを分析しているのである。ダミーヘッドを使ってミキシングされた音がヘッドホンなどからどのように聴こえるのかを測定し、実際のミキサーのサウンドと比較して音を詰めていくのだという。
Audyssey ExpertFitはすでに75ブランド300以上のプロファイルをリリースしており、協力ブランドも続々と増えている。ブースではBluetoothスピーカーとヘッドホンでデモを行っていた。DSPを持たずドライバーの音が素のままで聴こえるヘッドホンや、コストの都合で安価なDSPしか搭載できないことが多いBluetoothスピーカーなどでは、このようにプレーヤー側アプリで補正を行うことで大きな効果が得られると、同氏は説明してくれた。
■映像とサウンドをリンクさせるAudyssey AudioZoom
Audyssey AudioZoomは、2つのマイクを使って、カメラのズームに合わせてオーディオも“ズーム”させる技術だ。例えば通常のビデオカメラアプリでは、映像をズームさせても音声はそのままだ。だが、Audyssey AudioZoomを使えば、端末にマイクが2つ搭載されていれば、映像に合わせて音声もズームさせることができるのである。
このズームは、カメラに連動させてリアルタイムに行うことも可能だが、すでに録音済みのものに適用することも可能だ。これもアプリベースのソリューションであるため、デバイスそのものに実装しなくても使える。
Chris Kyriakakis氏はインタビューの最後に、「今まではAVアンプの音場補正機能をはじめ、製品そのものにデバイスを実装するソリューションが中心でしたが、今後はモバイル、さらにはアプリベースの技術も積極的に手がけて行きます。スマートフォンが一般化し、ヘッドホンやBluetooth製品が増加する中で、Audysseyの技術はそういった製品でさらに活かされていくはずです」と語ってくれた。
同社では、前述の「Audyssey ExpertFit」の技術をテレビ側に内蔵し、テレビからサウンドバーの音をチューニングするようなソリューションも検討しているとのこと。今後の同社の動向に注目していきたい。
今回、Audysseyの設立者であり、最高技術責任者を務めるChris Kyriakakis氏に、同社の最新技術について話を聞いた。その模様をお伝えしたい。
当サイトの読者ならご存じの方も多いだろうが、念のため改めてAudysseyについて解説しておこう。同社はそもそも南カリフォルニア大学(USC)のImmersive Audio Laboratoryが母体。USCの映画芸術学部の教授であり、THXの開発者であるTom Holman氏と同大学の音響工学教授だったChris Kyriakakis氏が中心となって2002年に設立された会社だ。同社の音場補正技術である「Audyssey MultEQ」はデノンやオンキヨー、マランツなどの多くのAVアンプに採用されている。2009年には拡張サラウンド技術である「Audyssey DSX」を発表。現在ではIMAXシアターへの音場補正技術の採用や、車載用向け技術の展開など、ホームAVにとどまらない様々なシーンにその技術を提供している。
今回はChris Kyriakakis氏自らが、同社が取り組む3つの新しい技術について解説してくれた。
■テレビの音質を向上させる「Audyssey BassXT for TV」
「Audyssey BassXT for TV」はテレビ向けの音質向上技術だ。「Audyssey BassXT」自体は低音を拡張する技術として、すでに様々な製品に搭載されているが、今回紹介されたのは、その最新版であり、テレビ向けに最適化したものである。
同氏は、低音を拡張する技術の多くは、倍音成分を使って擬似的に低音を強調して聴かせるものが大半だと紹介。それに対してこのBaseXTは、低音の帯域をより低い周波数に下げることで、よりリアルな重低音を実現できる。またボリュームに連動させて、破綻しないぎりぎりまでの低音を再現できることもポイントだ。
デモンストレーションでは、このBaseXTでテレビ向けにどのようなアプローチができるものかということを紹介した。通常のテレビスピーカーはドライバーが小さいため、豊かな低音はまず再生できない。もちろん大きいドライバーを使うこともできるが、テレビである以上、エンクロージャーのサイズは限られてしまう。
Audysseyではソフトウェア・ソリューションである「BaseXT」を用いてこうしたテレビ用スピーカーの音質を向上させることに加え、スピーカーのデザインまでAudyssey自身が行い、BaseXTの効果を最大限活かせるテレビスピーカーを提案していくという。
Lチャンネルに通常のスピーカー、RチャンネルにAudysseyがデザインし、かつBaseXTを採用したスピーカーを備えたテレビのデモでは、「Audyssey BassXT for TV」を用いた、テレビの内蔵スピーカーでも豊かな低音とクリアネスの高いサウンドが得られることをアピールされていた。
■Audyssey ExpertFit
次に紹介してくれたのが「Audyssey ExpertFit」だ。同社が培ってきた測定技術を使い、ヘッドホンやBluetoothスピーカー、さらにはサウンドバーまでの音質を向上させるという技術である。
このAudyssey ExpertFitにおいては、実際に世に流通している製品を測定してプロファイルを作り、クラウドのデータベースに蓄積していく。Audyssey ExpertFitを実装したメディアプレーヤーやオーディオプレーヤーは、このデータベースに蓄積されたプロファイルを用いて補正を行い、最適なサウンドを実現する。
Audyssey ExpertFitは、同社独自のiOS/Android用プレーヤーアプリ「Audyssey Music Player」に既に実装されている。この技術はiOS/Androidどちらにも組み込め、通常のPCMはもちろんハイレゾ音源にも適用できる。
なお、「流通している製品を測定してプロファイルをつくる」という作業は日々進められており、データベースも頻繁に更新されている。新製品も追加されていく。データベースはクラウドに蓄積されるので、アプリのアップデートを行わなくても最新製品のプロファイルを使ったサウンドの最適化が行える点も魅力だ。
しかし、実際にプロファイルを作る上で、リファレンスとなるサウンドはどのように決められているのだろうか。Audysseyでは、ハリウッドのミキシングスタジオの協力を得て、実際にどのようなミキシングが行われているかを分析しているのである。ダミーヘッドを使ってミキシングされた音がヘッドホンなどからどのように聴こえるのかを測定し、実際のミキサーのサウンドと比較して音を詰めていくのだという。
Audyssey ExpertFitはすでに75ブランド300以上のプロファイルをリリースしており、協力ブランドも続々と増えている。ブースではBluetoothスピーカーとヘッドホンでデモを行っていた。DSPを持たずドライバーの音が素のままで聴こえるヘッドホンや、コストの都合で安価なDSPしか搭載できないことが多いBluetoothスピーカーなどでは、このようにプレーヤー側アプリで補正を行うことで大きな効果が得られると、同氏は説明してくれた。
■映像とサウンドをリンクさせるAudyssey AudioZoom
Audyssey AudioZoomは、2つのマイクを使って、カメラのズームに合わせてオーディオも“ズーム”させる技術だ。例えば通常のビデオカメラアプリでは、映像をズームさせても音声はそのままだ。だが、Audyssey AudioZoomを使えば、端末にマイクが2つ搭載されていれば、映像に合わせて音声もズームさせることができるのである。
このズームは、カメラに連動させてリアルタイムに行うことも可能だが、すでに録音済みのものに適用することも可能だ。これもアプリベースのソリューションであるため、デバイスそのものに実装しなくても使える。
Chris Kyriakakis氏はインタビューの最後に、「今まではAVアンプの音場補正機能をはじめ、製品そのものにデバイスを実装するソリューションが中心でしたが、今後はモバイル、さらにはアプリベースの技術も積極的に手がけて行きます。スマートフォンが一般化し、ヘッドホンやBluetooth製品が増加する中で、Audysseyの技術はそういった製品でさらに活かされていくはずです」と語ってくれた。
同社では、前述の「Audyssey ExpertFit」の技術をテレビ側に内蔵し、テレビからサウンドバーの音をチューニングするようなソリューションも検討しているとのこと。今後の同社の動向に注目していきたい。
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