公開日 2018/09/03 06:00
<IFA>クアルコムに聞いた新コーデック「aptX adaptive」の詳細。可変ビットレートで高音質/低遅延実現
ビットレートは280-420kbps
米クアルコムが発表した新しいBluetoothオーディオのコーデック「aptX adaptive」。その技術的な特徴と可能性について、同社がドイツ・ベルリンで開催したメディア向けイベントの会場で、クアルコム・テクノロジーズ・インターナショナル社プロダクト・マーケティング・ディレクターのジョニー・マクリントック氏に話を聞いた。
まずは新しいコーデック「aptX adaptive」が誕生した経緯をマクリントック氏に尋ねた。
「aptX adaptiveは、クラシックなaptX、aptX HD、aptX Low Latency(aptX LL)に続いてクアルコムが提案する、4番目のBluetoothオーディオのコーデックです。それぞれのコーデックはユースケースごとに最適化されています。aptX adaptiveの場合、特徴はリスニング環境による影響を受けにくい安定性、高音質を確保できること、そして低遅延が特徴です。これらは、ユーザーが音楽や動画・ゲーミングなど幅広いコンテンツをあらゆる場所で楽しむのに効果を発揮すると考えています」。
aptX adaptiveの転送ビットレートは、280kbpsから420kpbsの間でスケーラビリティを確保している。「一定のスループットを得るために最適なデータレートの上限が420kbpsと考えました。280kbpsはCD音質を担保することを考えたボーダーです」とマクリントック氏は説明する。なおマクリントック氏が「ファースト・ジェネレーション」と呼ぶaptX adaptiveの初期スペックでは、最大48kHz/24bitに対応する高音質伝送が可能になる予定という。
aptX adaptiveは主にふたつの条件に適応しながら転送ビットレートを可変させ、最適なパフォーマンスを引き出す仕組みになっている。ひとつが電波の通信環境、もうひとつがコンテンツのデータ量である。ユーザーがスマホで音楽や動画、ゲームを楽しむ際、これらの条件を気にせずベストな音質で、遅延を感じることなく楽しめるようにすることが、新コーデックの意図するところだ。
「モバイル端末のリアルタイムな通信速度がどの程度なのか。多くのコンシューマにとってはコンテンツがストレスなく楽むことさえできれば、気になることではありません。有線接続のヘッドホンやイヤホンはシンプルに端子に挿すだけで期待通りのパフォーマンスが得られます。同じようにBluetoothのワイヤレス環境でも、一度ペアリングすれば、あとはノイズや遅延を気にしなくてよい使い勝手を実現することが、aptX adaptiveの目的です」とマクリントック氏は語る。
音質面では固定ビットレートの方が有利という考え方も当然あるものと思われる。マクリントック氏は「確かに完璧な環境ではそうかもしれませんが、問題は私たちがいまアウトドアで、ワイヤレス機器を使ってコンテンツを楽しむ環境が完璧ではないということなのです。だからこそロバスト性を担保した上で、安定した高音質再生を実現することを目的としたのです」と答えている。
低遅延性能については、クアルコムのSnapdragonシリーズのSoC環境で検証した場合、レイテンシーが60m/s前後になるという。目安として、aptX LLは40m/s、aptXは70-80m/s前後とされている。
「aptX LLの課題はWi-Fiアンテナとの共存が困難ということです。スマホのような端末では、Wi-FiとBluetoothの通信をひとつのアンテナでまかなう設計も多いのですが、たとえばスマホでゲームを楽しむときなど、Wi-Fiを接続しながらBluetoothヘッドセットを使いたいというシチュエーションは多いはずです。それぞれのトレードオフを考えた時に、aptX adaptiveの特徴が活きてきます」(マクリントック氏)。
aptX adaptiveを実装できるハードウェアの条件だが、ひとつはSnapdragon 820シリーズ以降からSoCに採用されているDSP、「Hexagon」を搭載するプラットフォームであることが挙げられる。Snapdragonシリーズ以外の他社製SoCを使った場合も、アプリケーションプロセッサーによる処理で動かすことができるが、マクリントック氏はこの場合、レイテンシーが60m/sまで抑えられない場合があると語る。
今回、aptX adaptiveの技術発表が初めて行われたわけだが、今後は直近でイヤホン・ヘッドホン向けのBluetoothオーディオプラットフォーム「QCC5100」、スピーカー向け「CSRA68100」用デコーダーのローンチを予定している。またこれは既報の通りだが、スマホなどモバイル端末向けのエンコーダーについてはAndroid P向けに、クリスマス頃までに提供が開始される予定だ。
aptX adaptiveに対応する商品が出てくる時期について、マクリントック氏は明言は避けながらも、次のようにコメントしている。
「早ければ2019年の春から初夏ぐらいになるのではと考えています。私たちがとてもラッキーなら、2019年のMWCが実施される時期(2月末ごろ)に、商品に関するアナウンスがあるかもしれません。私たちも期待していますが、aptX adaptiveについては、焦って急いで起ち上げる必要はないと考えています。むしろたくさんの方々にその利便性を実感していただきながら、長く使ってもらえるコーデックとして広まることが大事と考えています」(マクリントック氏)。
今回筆者が取材したイベントにはデモ機の展示などはなかったが、マクリントック氏は「今後は準備を整え。皆様にaptX adaptiveの実力を体験できる機会を積極的に設けたい」と語っていた。日本国内でもぜひ実現してもらいたい。
(山本 敦)
まずは新しいコーデック「aptX adaptive」が誕生した経緯をマクリントック氏に尋ねた。
「aptX adaptiveは、クラシックなaptX、aptX HD、aptX Low Latency(aptX LL)に続いてクアルコムが提案する、4番目のBluetoothオーディオのコーデックです。それぞれのコーデックはユースケースごとに最適化されています。aptX adaptiveの場合、特徴はリスニング環境による影響を受けにくい安定性、高音質を確保できること、そして低遅延が特徴です。これらは、ユーザーが音楽や動画・ゲーミングなど幅広いコンテンツをあらゆる場所で楽しむのに効果を発揮すると考えています」。
aptX adaptiveの転送ビットレートは、280kbpsから420kpbsの間でスケーラビリティを確保している。「一定のスループットを得るために最適なデータレートの上限が420kbpsと考えました。280kbpsはCD音質を担保することを考えたボーダーです」とマクリントック氏は説明する。なおマクリントック氏が「ファースト・ジェネレーション」と呼ぶaptX adaptiveの初期スペックでは、最大48kHz/24bitに対応する高音質伝送が可能になる予定という。
aptX adaptiveは主にふたつの条件に適応しながら転送ビットレートを可変させ、最適なパフォーマンスを引き出す仕組みになっている。ひとつが電波の通信環境、もうひとつがコンテンツのデータ量である。ユーザーがスマホで音楽や動画、ゲームを楽しむ際、これらの条件を気にせずベストな音質で、遅延を感じることなく楽しめるようにすることが、新コーデックの意図するところだ。
「モバイル端末のリアルタイムな通信速度がどの程度なのか。多くのコンシューマにとってはコンテンツがストレスなく楽むことさえできれば、気になることではありません。有線接続のヘッドホンやイヤホンはシンプルに端子に挿すだけで期待通りのパフォーマンスが得られます。同じようにBluetoothのワイヤレス環境でも、一度ペアリングすれば、あとはノイズや遅延を気にしなくてよい使い勝手を実現することが、aptX adaptiveの目的です」とマクリントック氏は語る。
音質面では固定ビットレートの方が有利という考え方も当然あるものと思われる。マクリントック氏は「確かに完璧な環境ではそうかもしれませんが、問題は私たちがいまアウトドアで、ワイヤレス機器を使ってコンテンツを楽しむ環境が完璧ではないということなのです。だからこそロバスト性を担保した上で、安定した高音質再生を実現することを目的としたのです」と答えている。
低遅延性能については、クアルコムのSnapdragonシリーズのSoC環境で検証した場合、レイテンシーが60m/s前後になるという。目安として、aptX LLは40m/s、aptXは70-80m/s前後とされている。
「aptX LLの課題はWi-Fiアンテナとの共存が困難ということです。スマホのような端末では、Wi-FiとBluetoothの通信をひとつのアンテナでまかなう設計も多いのですが、たとえばスマホでゲームを楽しむときなど、Wi-Fiを接続しながらBluetoothヘッドセットを使いたいというシチュエーションは多いはずです。それぞれのトレードオフを考えた時に、aptX adaptiveの特徴が活きてきます」(マクリントック氏)。
aptX adaptiveを実装できるハードウェアの条件だが、ひとつはSnapdragon 820シリーズ以降からSoCに採用されているDSP、「Hexagon」を搭載するプラットフォームであることが挙げられる。Snapdragonシリーズ以外の他社製SoCを使った場合も、アプリケーションプロセッサーによる処理で動かすことができるが、マクリントック氏はこの場合、レイテンシーが60m/sまで抑えられない場合があると語る。
今回、aptX adaptiveの技術発表が初めて行われたわけだが、今後は直近でイヤホン・ヘッドホン向けのBluetoothオーディオプラットフォーム「QCC5100」、スピーカー向け「CSRA68100」用デコーダーのローンチを予定している。またこれは既報の通りだが、スマホなどモバイル端末向けのエンコーダーについてはAndroid P向けに、クリスマス頃までに提供が開始される予定だ。
aptX adaptiveに対応する商品が出てくる時期について、マクリントック氏は明言は避けながらも、次のようにコメントしている。
「早ければ2019年の春から初夏ぐらいになるのではと考えています。私たちがとてもラッキーなら、2019年のMWCが実施される時期(2月末ごろ)に、商品に関するアナウンスがあるかもしれません。私たちも期待していますが、aptX adaptiveについては、焦って急いで起ち上げる必要はないと考えています。むしろたくさんの方々にその利便性を実感していただきながら、長く使ってもらえるコーデックとして広まることが大事と考えています」(マクリントック氏)。
今回筆者が取材したイベントにはデモ機の展示などはなかったが、マクリントック氏は「今後は準備を整え。皆様にaptX adaptiveの実力を体験できる機会を積極的に設けたい」と語っていた。日本国内でもぜひ実現してもらいたい。
(山本 敦)
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