公開日 2020/11/18 06:30
「Xperia 5 II」はソニーが“使い倒して欲しい”5Gスマホ。片手サイズに込められた開発秘話インタビュー
<山本敦のAV進化論 第195回>
ソニーモバイルから、片手で持ちながら心地よく操作できるサイズのプレミアム5Gスマホ「Xperia 5 II(エクスペリア ファイブ マークツー)」が発売された。フラグシップモデル「Xperia 1 II」のエッセンスをほぼそのまま継承しただけでなく、音質・画質は先行モデルの立場を脅かすほどの成長を遂げた注目機だ。
今回はソニーモバイルでXperia 5 IIの開発に携わったキーパーソンに、オンラインインタビューによる取材を行った。お話を聞いたのはソニーモバイルコミュニケーションズ(株)で商品企画を担当する小嶋諒氏、機構設計担当の山口彬氏、オーディオ設計に携わる松本賢一氏と星証人氏、ならびにディスプレイ設計担当の柏崎賢一氏だ。
■コンパクトなスマホを好むユーザーの感性に響くXperia 5 II
ソニーモバイルでは2019年にプレミアムスマホ「Xperia 1」を発表した当時、「好きを極めたい人々に想像を超えたエクスペリエンスを」というコーポレートビジョンを立ち上げて、スマホによるコミュニケーションからエンターテインメントまでを包括する体験に「クオリティへのこだわり」を打ち出した。
ソニーが掲げるビジョンは、Xperiaを手にするユーザーにも届いているのだろうか。これに対して小嶋氏は「当社が実施する定点調査では、Xperiaユーザーの皆様に購入時にどんな点を重視したかを訊ねています。回答を見る限り、カメラに映像、サウンド、デザインなどXperiaのこだわりに注目を寄せていただいていることがわかります」と話す。
2019年秋に発売された初代のXperia 5も、ソニーのこだわりを詰め込んだハンドヘルドサイズのプレミアムスマホだ。Xperia 1のユーザーは「購入時に気にかけた点」として主に “先進機能” を挙げる傾向にあるが、Xperia 5のユーザーは「美しい映像が見られる」「写真・動画がきれいに撮れる」という “コト軸視点” が目立つという。
Xperia 1シリーズから少し間を置いて登場するXperia 5シリーズの場合、先進技術を理解したユーザーがさらに一歩踏み込んで得られるメリットに、より強く関心が向く傾向にあるのかもしれない。
日本国内や欧州の一部地域では、Xperia 5シリーズのようなコンパクトスマホの人気が高いのだという。「Xperia 1 IIの開発で培った資産をよりコンパクトな筐体に収めて、デザインも柔らかい印象に仕上げたXperia 5 IIが、コンパクトなスマホを好むユーザーの感性に響いてほしい」と小嶋氏は期待を口にする。
Xperia 5 IIは5G対応のコンパクトスマホでもある。アップルも5.4インチのコンパクトな5G対応の「iPhone 12 mini」を発表したことから、今後はよりコンパクトな5Gスマホの開発競争が活発化する可能性もある。
米国や広大な欧州の一部地域ではより大型のスマホが好まれる傾向が強いようだが、筆者もどちらかといえば、片手で持ちながら操作できるコンパクトな5Gスマホが欲しいと思う。Xperia 5 IIはコンパクトスマホの人気上昇を牽引するスマホになるのだろうか。
■Xperia 1 IIと同等の性能・機能をコンパクトなスマホに詰め込むことができた理由
6.1インチのXperia 5 IIが、6.5インチのXperia 1 IIとほぼ同等の機能を備えながら、サイズをよりコンパクトにできた理由を機構設計担当の山口氏に聞いた。
Xperia 5 IIを手に取ってみると、横幅がとてもスリムなことに驚く。Xperia 1 IIの横幅は約72mm、Xperia 5 IIは約68mm。最新のXperiaどうしで比べるよりも、他社のスマホと持ち比べてみると “違い” は明白かもしれない。ガラスと金属を筐体のメイン素材としながら、質量も約163gと軽めに抑えた。
山口氏はXperia 5 IIで小型化を達成できたターニングポイントは主に2つあると説く。ひとつは左側サイドに内蔵するアンテナの構造と配置を見直して、内部容積の効率化を図ったことだ。スペースの余力を活かして、Xperia 5 IIではXperia 1 IIと同じ容量4,000mAhのバッテリーを積むことができた。
もうひとつは内部のスピーカーボックスの構造だ。スリムになったXperia 5 IIのサイズに最適化され、結果的にXperia 1 IIと同等の体験に迫れるよう、サウンドチューニングも入念に練り上げた。山口氏は「筐体の幅が小さくなると当然ながら体積も小さくなりますが、オーディオチームとノウハウを共有しながら最適なスピーカー構造に追い込みました」と振り返る。
Xperia 5 IIでも、Xperia 1 IIに続いて3.5mmアナログイヤホンジャックが復活している。山口氏は「幅がスリムなうえに、天面側には既にインカメラ、トップスピーカーに着信LEDなどが陣取っています。イヤホンジャックを実装するためのスペースは再調整を何度も繰り返しながら確保しました」と苦労を語った。
ソニーモバイルは2018年春に、初めてアナログイヤホン端子を省略したXperia XZ2を発表した。当時はスマホの筐体をスリムにするため、あるいは有線イヤホンに台頭してきたワイヤレスイヤホンのユーザーが増えつつあるため、「社内でも議論を繰り返した末に端子が取り除かれた」という説明を筆者も受けた。
山口氏に聞くと、機構設計の観点からいえば、当時に比べてアナログイヤホン端子の周辺に大きな技術革新はないため、特別なことはしていないとのこと。「イヤホン端子を復活してほしい」というユーザーの要望が強くあったことから、復活が実現したようだ。
また同氏は「スマホによる音楽体験に好きを極めたいユーザーのために、ハイレゾ再生も手軽に楽しめるアナログイヤホンジャックという選択の幅を提供すること」はとても重要だと考えを述べている。
5G通信にかかる電力消費の負担は4G LTEに比べると大きくなるため、アンテナの使いこなしやソフトウェアによるバッテリーマネジメントも追い込む必要がある。商品企画を担当する小嶋氏は、「5G通信時に消費するパワーの効率化は、同社が培ってきた独自のチューニングにより練り上げている」と説明する。
なお電池持ちについては、Xperia 1 IIに比べて若干Xperia 5 IIの方が良くなるようだ。主な要因として、駆動時に多くのバッテリーを消費するディスプレイのサイズと解像度の違いによるところが大きいのだという。
今回はソニーモバイルでXperia 5 IIの開発に携わったキーパーソンに、オンラインインタビューによる取材を行った。お話を聞いたのはソニーモバイルコミュニケーションズ(株)で商品企画を担当する小嶋諒氏、機構設計担当の山口彬氏、オーディオ設計に携わる松本賢一氏と星証人氏、ならびにディスプレイ設計担当の柏崎賢一氏だ。
■コンパクトなスマホを好むユーザーの感性に響くXperia 5 II
ソニーモバイルでは2019年にプレミアムスマホ「Xperia 1」を発表した当時、「好きを極めたい人々に想像を超えたエクスペリエンスを」というコーポレートビジョンを立ち上げて、スマホによるコミュニケーションからエンターテインメントまでを包括する体験に「クオリティへのこだわり」を打ち出した。
ソニーが掲げるビジョンは、Xperiaを手にするユーザーにも届いているのだろうか。これに対して小嶋氏は「当社が実施する定点調査では、Xperiaユーザーの皆様に購入時にどんな点を重視したかを訊ねています。回答を見る限り、カメラに映像、サウンド、デザインなどXperiaのこだわりに注目を寄せていただいていることがわかります」と話す。
2019年秋に発売された初代のXperia 5も、ソニーのこだわりを詰め込んだハンドヘルドサイズのプレミアムスマホだ。Xperia 1のユーザーは「購入時に気にかけた点」として主に “先進機能” を挙げる傾向にあるが、Xperia 5のユーザーは「美しい映像が見られる」「写真・動画がきれいに撮れる」という “コト軸視点” が目立つという。
Xperia 1シリーズから少し間を置いて登場するXperia 5シリーズの場合、先進技術を理解したユーザーがさらに一歩踏み込んで得られるメリットに、より強く関心が向く傾向にあるのかもしれない。
日本国内や欧州の一部地域では、Xperia 5シリーズのようなコンパクトスマホの人気が高いのだという。「Xperia 1 IIの開発で培った資産をよりコンパクトな筐体に収めて、デザインも柔らかい印象に仕上げたXperia 5 IIが、コンパクトなスマホを好むユーザーの感性に響いてほしい」と小嶋氏は期待を口にする。
Xperia 5 IIは5G対応のコンパクトスマホでもある。アップルも5.4インチのコンパクトな5G対応の「iPhone 12 mini」を発表したことから、今後はよりコンパクトな5Gスマホの開発競争が活発化する可能性もある。
米国や広大な欧州の一部地域ではより大型のスマホが好まれる傾向が強いようだが、筆者もどちらかといえば、片手で持ちながら操作できるコンパクトな5Gスマホが欲しいと思う。Xperia 5 IIはコンパクトスマホの人気上昇を牽引するスマホになるのだろうか。
■Xperia 1 IIと同等の性能・機能をコンパクトなスマホに詰め込むことができた理由
6.1インチのXperia 5 IIが、6.5インチのXperia 1 IIとほぼ同等の機能を備えながら、サイズをよりコンパクトにできた理由を機構設計担当の山口氏に聞いた。
Xperia 5 IIを手に取ってみると、横幅がとてもスリムなことに驚く。Xperia 1 IIの横幅は約72mm、Xperia 5 IIは約68mm。最新のXperiaどうしで比べるよりも、他社のスマホと持ち比べてみると “違い” は明白かもしれない。ガラスと金属を筐体のメイン素材としながら、質量も約163gと軽めに抑えた。
山口氏はXperia 5 IIで小型化を達成できたターニングポイントは主に2つあると説く。ひとつは左側サイドに内蔵するアンテナの構造と配置を見直して、内部容積の効率化を図ったことだ。スペースの余力を活かして、Xperia 5 IIではXperia 1 IIと同じ容量4,000mAhのバッテリーを積むことができた。
もうひとつは内部のスピーカーボックスの構造だ。スリムになったXperia 5 IIのサイズに最適化され、結果的にXperia 1 IIと同等の体験に迫れるよう、サウンドチューニングも入念に練り上げた。山口氏は「筐体の幅が小さくなると当然ながら体積も小さくなりますが、オーディオチームとノウハウを共有しながら最適なスピーカー構造に追い込みました」と振り返る。
Xperia 5 IIでも、Xperia 1 IIに続いて3.5mmアナログイヤホンジャックが復活している。山口氏は「幅がスリムなうえに、天面側には既にインカメラ、トップスピーカーに着信LEDなどが陣取っています。イヤホンジャックを実装するためのスペースは再調整を何度も繰り返しながら確保しました」と苦労を語った。
ソニーモバイルは2018年春に、初めてアナログイヤホン端子を省略したXperia XZ2を発表した。当時はスマホの筐体をスリムにするため、あるいは有線イヤホンに台頭してきたワイヤレスイヤホンのユーザーが増えつつあるため、「社内でも議論を繰り返した末に端子が取り除かれた」という説明を筆者も受けた。
山口氏に聞くと、機構設計の観点からいえば、当時に比べてアナログイヤホン端子の周辺に大きな技術革新はないため、特別なことはしていないとのこと。「イヤホン端子を復活してほしい」というユーザーの要望が強くあったことから、復活が実現したようだ。
また同氏は「スマホによる音楽体験に好きを極めたいユーザーのために、ハイレゾ再生も手軽に楽しめるアナログイヤホンジャックという選択の幅を提供すること」はとても重要だと考えを述べている。
5G通信にかかる電力消費の負担は4G LTEに比べると大きくなるため、アンテナの使いこなしやソフトウェアによるバッテリーマネジメントも追い込む必要がある。商品企画を担当する小嶋氏は、「5G通信時に消費するパワーの効率化は、同社が培ってきた独自のチューニングにより練り上げている」と説明する。
なお電池持ちについては、Xperia 1 IIに比べて若干Xperia 5 IIの方が良くなるようだ。主な要因として、駆動時に多くのバッテリーを消費するディスプレイのサイズと解像度の違いによるところが大きいのだという。
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