公開日 2020/12/02 10:22
お客様との距離を一気に縮め、飛躍を期す渾身の一作「LUMIX S5」。市場創造への意気込みをパナソニック山根氏に聞く
デジタルカメラグランプリ2021受賞インタビュー
受賞インタビュー:パナソニック
昨年2月、圧倒的な完成度で注目を集めたLUMIX初のフルサイズミラーレス「LUMIX DC-S1R/S1」。その完成度の高さを小さなフォルムに凝縮した「LUMIX DC-S5」がデジタルカメラグランプリ2021「総合金賞」を獲得した。普段使いできるサイズ感や手に取っていただける価格にまで目を配り、随所にこだわりが詰め込まれている。動画撮影に突破口をみいだすデジタルカメラ市場にとって、まさに新規層を掘り起こし、牽引していく活躍が期待されている。大きな反響を得るS5を擁し、市場創造へ意気込むパナソニック・山根洋介氏に話を聞く。
デジタルカメラグランプリ2021受賞一覧はこちら
パナソニック株式会社 アプライアンス社
スマートライフネットワーク事業部 イメージングビジネスユニット ビジネスユニット長
山根洋介氏
やまねようすけ Yosuke Yamane
プロフィール/1964年11月7日生まれ。山口県出身。1988年4月 松下電器産業(株)入社。技術本部開発研究所にて撮像技術に関する研究開発に携わる。1995年よりAVC社AVC商品開発研究所でイメージング商品の要素技術開発に携わり、2010年 デジタルイメージング先行開発グループ グループマネージャー、2015年 イメージングプロダクツ ビジネスユニット長、2016年 イメージングネットワーク事業部 事業部長、2019年より現職。趣味は楽器演奏、ゴルフなど。
■低くなったフルサイズ購入への垣根
―― デジタルカメラ市場は、コロナ禍の大きな影響を受けましたが、それを抜きにしても減少傾向に歯止めがかかりません。
山根 ここまで大きく変わってくると、業界そのものがどう生き延びていくのかを、各社で一緒になんて考えるのは無理にしても、一緒になった気持ちで考え、業界が一丸となっていかなければなりません。スマートフォンの台頭のみならず、人の嗜好性などが変わってきた中でカメラをどう位置づけられるかがポイントだと思います。
コロナ禍で家にいる時間が長くなり、白物や調理家電は好調です。イメージングの世界にも従来とは違った価値を創造できれば、また違った世界が生まれてくるはずです。まさに、そうしたことを痛切に考えさせられたのが、今回のコロナ禍による暮らしの変化ですね。
―― どう進むのか、抜本的に見直す機会が与えられたと前向きに捉える姿勢が必要ですね。
山根 多くの方がスマートフォンを持っていて、写真を撮り、動画を撮り、それをシェアします。そのことがあまりにも身近になり過ぎたがゆえに、カメラの存在意義が薄らぎ、業界が苦しくなっているように見えます。しかし、世の中そのものが変わってきたことを受け止め、そこから広げていける方法があるはずだと考え抜くべきです。
デジタルカメラ市場のボリュームは、年率10〜20%くらいで落ちてきていますが、これは、スマートフォンが登場したときにすでに想像できたこと。昨今のスマートフォンのカメラ性能は目覚ましい高性能化で加速していますが、スマートフォンでできることにも制約はあり、それをカバーする存在がフルサイズです。
それこそ昔のフルサイズのカメラは、カメラを生涯の趣味にするマニアやオタクでないと手が出せない高価なものでしたが、一眼レフからミラーレスになることで仰々しいメカがなくなり、メーカーも作りやすく、お客様も扱いやすく、価格もこなれてきて、確実に垣根が下がっています。だからこそわれわれも、フルサイズを手掛けることがカメラ事業を継続するポイントになります。
コンパクトも一眼レフも落ちていますが、実はミラーレスは微増で推移しており、中でも注目されるのは動画要素を盛り込んだハイブリッドカメラの需要が拡大していること。スマートフォンとは明らかに違う表現豊かな動画、静止画が撮れることへの認知が広がってきているのです。映像が世の中にこれだけ溢れかえり、映像制作を行うために続々と登場した中小のプロダクションにとっては、シネマをはじめとする映像制作の現場で、安価に使える機材としてミラーレスカメラが注目を集めています。
いまや、スマートフォンにより老若男女の区別なく大変身近になった映像制作は、今後、形を変えてアメーバー的に広がっていくことが想像され、そこにお役立ちしていくことが、今後、カメラ市場が生き延びる大きなポイントのひとつになると思います。
■S1の完成度を小さなフォルムに凝縮
―― そうした流れを捉え、凝縮したひとつの答えが、今回総合金賞を獲得した「LIMIX DC-S5」というわけですね。
山根 LUMIXはフルサイズでは残念ながら後発ですから、まずはブランド認知を高めていく必要があります。そこで、「これは大変レベルの高い商品だぞ」と認めていただくために、随所にこだわりを注ぎ込んだフルサイズミラーレスカメラ「LUMIX DC-S1R/S1」として2019年3月に発売しました。それに続くのがS5です。
撮り手に「このカメラで撮ったコンテンツは本当に素晴らしい」と目を見開いていただけるように、動画、静止画それぞれに物凄いこだわりを凝縮しました。操作性はもちろん、「この価格でこの価値が自分のものにできるのか」と納得できる価格も重要な条件になりますから、こだわるところには徹底してこだわる一方、コストが下げられるところはとことん下げました。まさに絶妙なバランスです。普段使いできるサイズ感にも着目し、フォルムの小型化と軽量化にも注力しています。今回、総合金賞の受賞にあたり、S1シリーズの完成度の高さをこの小さなフォルムに凝縮できたことを評価いただき、本当にうれしいです。
―― 各社フルサイズミラーレスのラインナップ強化も進み、冒頭にご指摘されたように、フルサイズの垣根が低くなり、最初に購入されるカメラがフルサイズミラーレスカメラという若いユーザーもいらっしゃいます。
山根 カメラ事業の将来を考えれば、フルサイズの世界に足を踏み込むことは必須と考えました。しかし、新しいフォーマットのカメラを出すには腹を据え、メンバーのひとりひとりに覚悟が必要となります。お客様の目線も一気に高くなり、トッププレーヤーのモデルと横並びで評価されることになるため、S1シリーズで初めてフルサイズを手掛けたときは、すべてを一から見直して臨みました。
ターゲットとなるプロやハイアマチュアのお客様のレベルに自分たちも合わせなければなりません。品質、品格面に関しては「品質品格プロジェクト」を社内に設け、他社がどのようなレベルで取り組んでいるのかをしっかりと頭に叩き込み、パナソニックが持つあらゆるノウハウを凝縮し、プロのカメラマンに対峙できる商品を目指しました。そうして商品化されたのがS1シリーズです。
一度そうした目線ができると、お客様に対して需要を獲得していくためにはどこを重視すればいいのかが見えてきます。S1シリーズを手掛けたことで、それがS5の品質・品格につながっています。かつてマイクロフォーサーズの規格策定を行ったこと、業界で初めてミラーレスカメラを作ったこと、そうした経験が、パナソニックがフルサイズを作る上でのDNAになっています。
―― S5ではこれまでになかった焦点距離のキットレンズ「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」も注目を集めています。
山根 ボケの設計指針や表現力をどのようにすればお客様の満足度を高められるか。また、できあがった商品の解像度や収差のレベルをさらに高めていくにはどうすればいいのか。設計とものづくり、それぞれにおいてレベルを高める取り組みに力を入れています。
LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6は、お客様が撮りたい焦点距離をかなりの範囲でカバーできます。交換レンズではさらに、開放F1.8の大口径単焦点レンズ「LUMIX S 85mm F1.8」を発表し、あわせて単焦点レンズのロードマップを公開しています。映像制作の現場で動画を撮られる際には、シーンに合わせて焦点距離を切り替えたいとする要望が強いことから、S5にふさわしいサイズ感とボリューム感とともに、重量や形状をほぼ一緒にした交換レンズ群を揃えていきます。シネマ制作用のサブ機として、いろいろなところで使える世界観を描いていただけるはずです。S5はそうした動画機能でのポテンシャルを持ったカメラですから、お客様にとってシステマチックに使える世界を早期に実現していきます。
昨年2月、圧倒的な完成度で注目を集めたLUMIX初のフルサイズミラーレス「LUMIX DC-S1R/S1」。その完成度の高さを小さなフォルムに凝縮した「LUMIX DC-S5」がデジタルカメラグランプリ2021「総合金賞」を獲得した。普段使いできるサイズ感や手に取っていただける価格にまで目を配り、随所にこだわりが詰め込まれている。動画撮影に突破口をみいだすデジタルカメラ市場にとって、まさに新規層を掘り起こし、牽引していく活躍が期待されている。大きな反響を得るS5を擁し、市場創造へ意気込むパナソニック・山根洋介氏に話を聞く。
デジタルカメラグランプリ2021受賞一覧はこちら
パナソニック株式会社 アプライアンス社
スマートライフネットワーク事業部 イメージングビジネスユニット ビジネスユニット長
山根洋介氏
やまねようすけ Yosuke Yamane
プロフィール/1964年11月7日生まれ。山口県出身。1988年4月 松下電器産業(株)入社。技術本部開発研究所にて撮像技術に関する研究開発に携わる。1995年よりAVC社AVC商品開発研究所でイメージング商品の要素技術開発に携わり、2010年 デジタルイメージング先行開発グループ グループマネージャー、2015年 イメージングプロダクツ ビジネスユニット長、2016年 イメージングネットワーク事業部 事業部長、2019年より現職。趣味は楽器演奏、ゴルフなど。
■低くなったフルサイズ購入への垣根
―― デジタルカメラ市場は、コロナ禍の大きな影響を受けましたが、それを抜きにしても減少傾向に歯止めがかかりません。
山根 ここまで大きく変わってくると、業界そのものがどう生き延びていくのかを、各社で一緒になんて考えるのは無理にしても、一緒になった気持ちで考え、業界が一丸となっていかなければなりません。スマートフォンの台頭のみならず、人の嗜好性などが変わってきた中でカメラをどう位置づけられるかがポイントだと思います。
コロナ禍で家にいる時間が長くなり、白物や調理家電は好調です。イメージングの世界にも従来とは違った価値を創造できれば、また違った世界が生まれてくるはずです。まさに、そうしたことを痛切に考えさせられたのが、今回のコロナ禍による暮らしの変化ですね。
―― どう進むのか、抜本的に見直す機会が与えられたと前向きに捉える姿勢が必要ですね。
山根 多くの方がスマートフォンを持っていて、写真を撮り、動画を撮り、それをシェアします。そのことがあまりにも身近になり過ぎたがゆえに、カメラの存在意義が薄らぎ、業界が苦しくなっているように見えます。しかし、世の中そのものが変わってきたことを受け止め、そこから広げていける方法があるはずだと考え抜くべきです。
デジタルカメラ市場のボリュームは、年率10〜20%くらいで落ちてきていますが、これは、スマートフォンが登場したときにすでに想像できたこと。昨今のスマートフォンのカメラ性能は目覚ましい高性能化で加速していますが、スマートフォンでできることにも制約はあり、それをカバーする存在がフルサイズです。
それこそ昔のフルサイズのカメラは、カメラを生涯の趣味にするマニアやオタクでないと手が出せない高価なものでしたが、一眼レフからミラーレスになることで仰々しいメカがなくなり、メーカーも作りやすく、お客様も扱いやすく、価格もこなれてきて、確実に垣根が下がっています。だからこそわれわれも、フルサイズを手掛けることがカメラ事業を継続するポイントになります。
コンパクトも一眼レフも落ちていますが、実はミラーレスは微増で推移しており、中でも注目されるのは動画要素を盛り込んだハイブリッドカメラの需要が拡大していること。スマートフォンとは明らかに違う表現豊かな動画、静止画が撮れることへの認知が広がってきているのです。映像が世の中にこれだけ溢れかえり、映像制作を行うために続々と登場した中小のプロダクションにとっては、シネマをはじめとする映像制作の現場で、安価に使える機材としてミラーレスカメラが注目を集めています。
いまや、スマートフォンにより老若男女の区別なく大変身近になった映像制作は、今後、形を変えてアメーバー的に広がっていくことが想像され、そこにお役立ちしていくことが、今後、カメラ市場が生き延びる大きなポイントのひとつになると思います。
■S1の完成度を小さなフォルムに凝縮
―― そうした流れを捉え、凝縮したひとつの答えが、今回総合金賞を獲得した「LIMIX DC-S5」というわけですね。
山根 LUMIXはフルサイズでは残念ながら後発ですから、まずはブランド認知を高めていく必要があります。そこで、「これは大変レベルの高い商品だぞ」と認めていただくために、随所にこだわりを注ぎ込んだフルサイズミラーレスカメラ「LUMIX DC-S1R/S1」として2019年3月に発売しました。それに続くのがS5です。
撮り手に「このカメラで撮ったコンテンツは本当に素晴らしい」と目を見開いていただけるように、動画、静止画それぞれに物凄いこだわりを凝縮しました。操作性はもちろん、「この価格でこの価値が自分のものにできるのか」と納得できる価格も重要な条件になりますから、こだわるところには徹底してこだわる一方、コストが下げられるところはとことん下げました。まさに絶妙なバランスです。普段使いできるサイズ感にも着目し、フォルムの小型化と軽量化にも注力しています。今回、総合金賞の受賞にあたり、S1シリーズの完成度の高さをこの小さなフォルムに凝縮できたことを評価いただき、本当にうれしいです。
―― 各社フルサイズミラーレスのラインナップ強化も進み、冒頭にご指摘されたように、フルサイズの垣根が低くなり、最初に購入されるカメラがフルサイズミラーレスカメラという若いユーザーもいらっしゃいます。
山根 カメラ事業の将来を考えれば、フルサイズの世界に足を踏み込むことは必須と考えました。しかし、新しいフォーマットのカメラを出すには腹を据え、メンバーのひとりひとりに覚悟が必要となります。お客様の目線も一気に高くなり、トッププレーヤーのモデルと横並びで評価されることになるため、S1シリーズで初めてフルサイズを手掛けたときは、すべてを一から見直して臨みました。
ターゲットとなるプロやハイアマチュアのお客様のレベルに自分たちも合わせなければなりません。品質、品格面に関しては「品質品格プロジェクト」を社内に設け、他社がどのようなレベルで取り組んでいるのかをしっかりと頭に叩き込み、パナソニックが持つあらゆるノウハウを凝縮し、プロのカメラマンに対峙できる商品を目指しました。そうして商品化されたのがS1シリーズです。
一度そうした目線ができると、お客様に対して需要を獲得していくためにはどこを重視すればいいのかが見えてきます。S1シリーズを手掛けたことで、それがS5の品質・品格につながっています。かつてマイクロフォーサーズの規格策定を行ったこと、業界で初めてミラーレスカメラを作ったこと、そうした経験が、パナソニックがフルサイズを作る上でのDNAになっています。
―― S5ではこれまでになかった焦点距離のキットレンズ「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」も注目を集めています。
山根 ボケの設計指針や表現力をどのようにすればお客様の満足度を高められるか。また、できあがった商品の解像度や収差のレベルをさらに高めていくにはどうすればいいのか。設計とものづくり、それぞれにおいてレベルを高める取り組みに力を入れています。
LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6は、お客様が撮りたい焦点距離をかなりの範囲でカバーできます。交換レンズではさらに、開放F1.8の大口径単焦点レンズ「LUMIX S 85mm F1.8」を発表し、あわせて単焦点レンズのロードマップを公開しています。映像制作の現場で動画を撮られる際には、シーンに合わせて焦点距離を切り替えたいとする要望が強いことから、S5にふさわしいサイズ感とボリューム感とともに、重量や形状をほぼ一緒にした交換レンズ群を揃えていきます。シネマ制作用のサブ機として、いろいろなところで使える世界観を描いていただけるはずです。S5はそうした動画機能でのポテンシャルを持ったカメラですから、お客様にとってシステマチックに使える世界を早期に実現していきます。
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