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公開日 2007/10/07 12:08

<TIAS2007>タオックの新スピーカー/米コンバージェントのプリ/カートリッジ「MCWindfeld」

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本項ではアイシン高岳、今井商事、オルトフォンのブースの模様をお伝えする。

■アイシン高岳

TAOCの新作LC200M。外観も音も大変端正だが、同社の“整振テクノロジー”に加え、ユニットやネットワークに十二分の物量を投じた余裕の設計が功を奏していると思われる

「高温で融かして固めた」メープル材は、一部の黒檀よりさらに重い、1.3の比重を持つという。木質と鋳鉄の複合による、新世代の整振テクノロジーに注目したい

ブースでは、3種類の鋳鉄が鉄筋のように叩いて響きを確かめることができるようになっていた。もちろん最も鳴かないのは同社の誇るハイカーボン鋳鉄である

ガラス棟6階でエレベーターを降り、向かって左に歩くと奥から2番目にアイシン高丘の部屋がある。

アイシン高丘タオック・ブランドで今年最も見るべき製品は、何といっても新作スピーカーシステムLC200Mであろう。昨年、ユニットまで自社開発のトールボーイ、LC800でオーディオファンをあっといわせた同社が繰り出した第2弾である。本機もユニットから自社開発で、13cm口径のウーファーは外周のみをプレスして中心部をノンプレスで残すという、大変特徴的な構造のコーンが採用されている。LC800の16cmウーファーも同様の構造だが、そもそも同社が長く採用してきたスキャンスピークの7インチ・ウーファーもよく似た格好を持ち、同ユニットにほれ込んだTAOC開発陣が「それを超えるユニットを」という情熱で開発に取り組んだ結果の形状だという。

トゥイーターはシルク素材の2.5cmソフトドームだ。キャビネットは21mm厚のMDF素材と頑丈なもので、メープル突き板の輝くような艶が美しい。ウーファーのフレームとバッフルの間、そしてキャビ側板の内側に同社の誇るハイカーボン鋳鉄製の制振材がマウントされているのも見逃せない。

TAOCブースには、もうひとつ見逃せない参考出品があった。同社のインシュレーターといえば鋳鉄製と決まったようなものだが、この試作品は複合素材である。半分はおなじみの鋳鉄だが、それに張り合わせられた素材の素性を聴いてびっくりした。何でも、メープル材を高温で融かして(!)固めた素材だというのだ。見た目は樹脂と変わらないが、切り口に鼻を近づけてみると、なるほど何やら木質系の香りがする。この素材は木の素性を残しながら比重は1.3と重く、黒檀などの重量木材に匹敵する響きの良さと、合成素材ならではの均一性を兼ね備えている。なるほどインシュレーターとしても大変に魅力的だが、そう遠くない将来に木琴や木管楽器などにも応用されそうな技術である。

■今井商事

ヴェラティ・オーディオ「リエンジ」。同社のスピーカーはワーグナーの歌劇・楽劇から名を取っているものが多い。リエンジは出世作のタイトルだから、このクラスにはちょうどいい名付けであろうか

下のウーファーボックスには、後ろ側に17.8cmのドライバーがマウントされている。60Hzから下をこちらで受け持つという設計だ

名前こそSL−1レジェンドとなっているが、これはもう別物ではないかと思わせるほど、さまざまに手の入ったモデルである。これがSL−1の終着点となるのか

エレベーターから見て、アイシン高丘の1つ手前にあるのが今井商事の部屋だ。例年、何かしらのシステムで素晴らしいサウンドを聴かせてくれる同社ブースだが、今年はまずカナダはヴェラティ・オーディオの新作スピーカー、リエンジに耳を奪われた。ヴェラティはもともと超のつきそうなハイエンド・スピーカーを得意としてきたが、近年は1本100万円を切るセグメントにも進出を果たした。リエンジもペア147万円と同社にしては安価な部類に属する製品だが、2ウェイ・ブックシェルフ型の「モニター部」と17.8cmウーファーを背面にマウントしたウーファーのセパレート構成と、上級機に準ずる作りになっている。モニター部のユニットは16.5cmコーンと1.9cmドームだ。

もうひとつ、同社ブースで輝きを放っていた新製品があった。米コンバージェント・オーディオのプリアンプ、SL-1レジェンドである。同社は真空管アンプのメーカーだが、過去に目を向けるのではなく、最新の回路技術と高度な作り込みによって、真空管の「増幅素子としての優秀性」を発揮させる音作りに定評がある。1985年にオリジナル製品が生まれたSL-1は、幾度にもわたる大規模な改良を経て既に完成の域にあるかと思われたが、このたびはまた大変に大きく手が加えられた。

一番の改良点はPHONO段である。これまで第一線を張ってきたSL-1アルティメイトMk2は、ゲインの高いフォノイコライザーを搭載することでMM/MCのどちらにも対応させるという考えだったが、今作はMC専用に昇圧トランスが内蔵された。それも、デンマークの高品位オーディオメーカー、デンセン社のトランスが採用されたというから興味深い。デビュー間もないせいもあり、いまだ詳細な資料が整っていないが、音質はアルティメイト2を大きく上回るものと十分に感じさせるものだった。

■オルトフォン

総重量55kg、3本までアームがマウントできるフラッグシップの「ソリッド・ロイヤル」。アラミドの糸を介して、15kgのターンテーブルを高精度なACシンクロナスモーターで回す。回転は静粛の極みだ

こちらは普及モデルのクラシック・ウッド。7.5kgのターンテーブルをやはりアラミドの糸でドライブする。これで30万円そこそことは、相当のお買い得品といえそうだ

新開発のトーンアーム、RS−212D。スプリングで針圧を印加するダイナミックバランス型にして21万円とは、大変なバーゲン価格に感じられる

さて、5階に移動しよう。エレベーターを降りて右にすぐの部屋がオルトフォンだ。今年の同社は、取り扱いアナログプレーヤーのラインアップが一新されたのが大きな注目点であろう。同社では、単体トーンアームの数々を開発する過程で「せめて2本、できれば3本のアームを取り付けられるプレーヤーを取り扱いたい」という思いが募ってきたという。そこで世界中を探し回った結果、巡り合ったのが独アコースティック・ソリッド社である。巨大なアルミのターンテーブルをアラミドの糸で駆動する糸ドライブ方式と、アナログ全盛期にもめったになかった高度な構成が魅力だ。上から2機種は3本までのアームがマウント可能、下の2機種はウッドキャビネットが落ち着いたたたずまいを見せる。

オルトフォン本体で一番の注目点は、久々に登場したMCシリーズの頂点MCWindfeldだ。30年近く同社カートリッジ設計部隊を率いてきた天才エンジニアの名を冠したこのカートリッジは、ベリリウム銅を削り出した全く新しい考え方の発電系を持つ。その結果もあって4Ωで0.3mVと非常に現代的なデータを持ち、ブースで猛烈なスケール感と解像度を聴かせてくれていた。

オルトフォンMCシリーズの最高峰を更新したMC Windfeld。42万円と決して安価な製品ではないが、最新技術により全く新しい考え方の発電回路を構築するなど、大変に手のかかったカートリッジである

オルトフォンのオーディオ用MM型「2M」シリーズが完結。左がフリッツ・ガイガー針を装備したBronze(¥43,050)、右がシバタ針採用のBlack(¥75,600)である

もうひとつ、同社の新MMカートリッジ2Mシリーズが、先行発売されたレッド/ブルーに続き、ブロンズ/ブラックと4機種そろい踏みを果たしたのも見逃せない。このところ質の良いMMタイプが少なくなってきていたので、MMファンにとっては何よりの朗報であろう。私が訪問した時には残念ながら音を聴くことはかなわなかったが、歴史に残る名作であることは間違いなさそうだ。

(炭山アキラ)

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