公開日 2007/10/07 12:10
<炭山アキラのTIASレポート>各社注目の新スピーカー・音質インプレッション
ここからは、会場を一通り回ってみて、特に音質が印象に残った製品群を上げていくこととしよう。まずはスピーカーから。
昨年はJBLから畢生の大作DD66000「エベレスト」が登場したセンセーショナルな年だったが、今年はコスト面でもスペース面でも手の届きやすい、比較的(あくまで比較級ではあるが)手の届きやすい製品が多かったような気がする。
■B&W「Signature Diamond」はアニバーサリーモデルにふさわしい逸品
その中でも今年最も輝いていたのは、断然B&Wの40周年記念モデル、シグネチャー・ダイヤモンドであろう。見た目は小振りな単なる2ウェイのトールボーイなのだが、平行面を一切持たないウーファーキャビ、イタリア産大理石削り出しノーチラス構造のトゥイーターキャビと、細かく見ていくと大変な手間とコストのかかった逸品である。出てくる音にまた驚く。決して満足な環境といえる状態で聴いたわけではないのに、このアキュレートさと実体感はどうだ。B&Wという会社の持つ技術の深み、オーディオに対する情熱というものがまざまざと音に表れた、アニバーサリーモデルにふさわしい逸品である。
■DYNAUDIO「Sapphire」は大変器の大きいスピーカー
宝石つながりというわけではないが、ディナウディオは創業30周年を記念して「サファイア」という名の限定スピーカーを発表した。こちらも平行面をほとんど持たない12面体のキャビを持ち、ユニットは3ウェイ4スピーカー構成である。ショウ開幕の2日前に日本へ到着したばかりというこのスピーカーだが、既に穏やかながら素晴らしい解像度と骨太の音場を聴かせてくれている。これで鳴らし込みが進めば、おそらく張り出しや輝かしさも存分に味わえるようになるだろう。大変に器の大きなシステムといえそうだ。
■軽やかで抜けが良いJBL「S4600」
今年のJBLは、何といってもS4600が主役であろう。DD66000に比べれば慎ましやかな製品だが、それでも35cmウーファーを持つトールボーイは、一般家庭に置けば十分な偉容を放つことだろう。これほどの大口径にして、本機はその軽やかさと開放感がただ者ではない。カラッと抜けが良く、それでいながら品位を欠くことのない再現性こそ、JBLの真骨頂といっていいのではないかと思う。
■オーディオマシーナ「ザ・ピュア・システム」は度肝を抜くクオリティの高さ
ステラヴォックス/ゼファンのブースには膨大な数のシステムが展示されていて、そのどれもが素晴らしいサウンドを奏でているが、今年はオーディオマシーナの新作「ザ・ピュア・システム」に度肝を抜かれた。航空宇宙グレードのアルミを精密切削したキャビネットによるものだろう、音像は微塵も揺るぐことなく、超微粒子が充満したような何とも緻密で深い音場を聴かせる。レンジはどこまでも広く、特に高域方向への切れ味は、質の良いホーン型でなくては聴くことのできない性質のものである。高価なスピーカーだが、それだけのことはあると納得させられる“音の力”のようなものを持つ製品だ。
■ボーズ「77WER」は大変なハイCP機
ボーズは毎年何らかのサプライズを運んできているが、今年は77WERの再現性が大きな驚きだった。アルミの細い柱が2本立っただけのように見える外観から、一体これはどうしたことだろうという雄大豪壮な低音と、広大無辺に広がる音場が得られるのだ。低音の秘密は、もちろん同社のテクノロジーによる。同社には、バスレフの原理で低域を稼ぐ「アクースティマス」と、楽器と同じ“気柱共振”を使った「アコースティック・ウェーブガイド」という低音再生法があるが、77WERに採用された「アドバンスド・ウェーブガイド」はその両方を効率的に使ったような非常に高度な作りを持つ。
アマチュアの工作で小さなキャビから無理に大量の低音を出そうとすると、大概はひどいロースピードの低品位なサウンドになるものだが、その点は「さすがボーズ」と唸るしかない。輪郭鮮明でハイスピード、しかも相当に力強い低音である。一方、自然な声の帯域とふわりと広がる音場は、同社の誇る小口径フルレンジ・スピーカーのテクノロジーが生きているのだろう。いやはや、大変なハイCP機だ。
■“小さな大物”エソテリック「MG-20」
先にジョセフ・オーディオの金属振動板の良さについて述べたが、それとはまた違う金属振動板の良さを聴かせてくれたのはエソテリックであった。同社MG-20は、金属メーカーと共同開発したマグネシウム約96%配合の合金を振動板に採用、マグネシウムならではの金属的な鳴きのなさと、高剛性振動板によるどこまでもアキュレートで鮮明な再現を両立した傑作である。横幅20cm少しの大変手ごろなサイズに最高の技術を盛り込んだ“小さな大物”といえるだろう。
■ソニックス「アレグリア」は深いコクと低域の馬力を備える
ソニックスは、かつてオーディオフィジックで多くのマニアから支持を受けたエンジニア、ヨアヒム・ゲルハルトが数年前に立ち上げた新しいブランドである。今年はフラグシップに継ぐ大作「アレグリア」が日本へ上陸した。オーディオフィジック時代から変わることのないサラリとした質感とハイスピードで伸びやかなサウンドをそのままに、深いコクと低域の馬力が備わったような、何とも魅力的なサウンドの持ち主だ。大作とはいっても比較的日本の居住スペースにも置きやすいサイズで、そういう意味では鳴らしやすいスピーカーともいえそうである。
■新振動板で音質がさらなる高みへ達したエラック「BS 243」
今年最も驚かされたスピーカーの一つは、エラックだった。同社のウーファーはアルミとパルプの複合材によるパラボラ型のものが大部分だが、そのパラボラがまるで気象観測所のフラードームのように、きらきらと輝く三角形の集積に変身したのである。これによってアルミとパルプの密着性が大いに高まり、音質はさらなる高みに達している。一聴しただけでも低域のスピード感、力感がさらに高まり、持ち前の端正な音楽再現がさらに高められたように聴こえてくる。
まだまだ紹介したいスピーカーは山ほどあるのだが、一旦ここで筆を置こう。皆さんもぜひ会場で好みの音と出合って欲しい。
(炭山アキラ)
昨年はJBLから畢生の大作DD66000「エベレスト」が登場したセンセーショナルな年だったが、今年はコスト面でもスペース面でも手の届きやすい、比較的(あくまで比較級ではあるが)手の届きやすい製品が多かったような気がする。
■B&W「Signature Diamond」はアニバーサリーモデルにふさわしい逸品
その中でも今年最も輝いていたのは、断然B&Wの40周年記念モデル、シグネチャー・ダイヤモンドであろう。見た目は小振りな単なる2ウェイのトールボーイなのだが、平行面を一切持たないウーファーキャビ、イタリア産大理石削り出しノーチラス構造のトゥイーターキャビと、細かく見ていくと大変な手間とコストのかかった逸品である。出てくる音にまた驚く。決して満足な環境といえる状態で聴いたわけではないのに、このアキュレートさと実体感はどうだ。B&Wという会社の持つ技術の深み、オーディオに対する情熱というものがまざまざと音に表れた、アニバーサリーモデルにふさわしい逸品である。
■DYNAUDIO「Sapphire」は大変器の大きいスピーカー
宝石つながりというわけではないが、ディナウディオは創業30周年を記念して「サファイア」という名の限定スピーカーを発表した。こちらも平行面をほとんど持たない12面体のキャビを持ち、ユニットは3ウェイ4スピーカー構成である。ショウ開幕の2日前に日本へ到着したばかりというこのスピーカーだが、既に穏やかながら素晴らしい解像度と骨太の音場を聴かせてくれている。これで鳴らし込みが進めば、おそらく張り出しや輝かしさも存分に味わえるようになるだろう。大変に器の大きなシステムといえそうだ。
■軽やかで抜けが良いJBL「S4600」
今年のJBLは、何といってもS4600が主役であろう。DD66000に比べれば慎ましやかな製品だが、それでも35cmウーファーを持つトールボーイは、一般家庭に置けば十分な偉容を放つことだろう。これほどの大口径にして、本機はその軽やかさと開放感がただ者ではない。カラッと抜けが良く、それでいながら品位を欠くことのない再現性こそ、JBLの真骨頂といっていいのではないかと思う。
■オーディオマシーナ「ザ・ピュア・システム」は度肝を抜くクオリティの高さ
ステラヴォックス/ゼファンのブースには膨大な数のシステムが展示されていて、そのどれもが素晴らしいサウンドを奏でているが、今年はオーディオマシーナの新作「ザ・ピュア・システム」に度肝を抜かれた。航空宇宙グレードのアルミを精密切削したキャビネットによるものだろう、音像は微塵も揺るぐことなく、超微粒子が充満したような何とも緻密で深い音場を聴かせる。レンジはどこまでも広く、特に高域方向への切れ味は、質の良いホーン型でなくては聴くことのできない性質のものである。高価なスピーカーだが、それだけのことはあると納得させられる“音の力”のようなものを持つ製品だ。
■ボーズ「77WER」は大変なハイCP機
ボーズは毎年何らかのサプライズを運んできているが、今年は77WERの再現性が大きな驚きだった。アルミの細い柱が2本立っただけのように見える外観から、一体これはどうしたことだろうという雄大豪壮な低音と、広大無辺に広がる音場が得られるのだ。低音の秘密は、もちろん同社のテクノロジーによる。同社には、バスレフの原理で低域を稼ぐ「アクースティマス」と、楽器と同じ“気柱共振”を使った「アコースティック・ウェーブガイド」という低音再生法があるが、77WERに採用された「アドバンスド・ウェーブガイド」はその両方を効率的に使ったような非常に高度な作りを持つ。
アマチュアの工作で小さなキャビから無理に大量の低音を出そうとすると、大概はひどいロースピードの低品位なサウンドになるものだが、その点は「さすがボーズ」と唸るしかない。輪郭鮮明でハイスピード、しかも相当に力強い低音である。一方、自然な声の帯域とふわりと広がる音場は、同社の誇る小口径フルレンジ・スピーカーのテクノロジーが生きているのだろう。いやはや、大変なハイCP機だ。
■“小さな大物”エソテリック「MG-20」
先にジョセフ・オーディオの金属振動板の良さについて述べたが、それとはまた違う金属振動板の良さを聴かせてくれたのはエソテリックであった。同社MG-20は、金属メーカーと共同開発したマグネシウム約96%配合の合金を振動板に採用、マグネシウムならではの金属的な鳴きのなさと、高剛性振動板によるどこまでもアキュレートで鮮明な再現を両立した傑作である。横幅20cm少しの大変手ごろなサイズに最高の技術を盛り込んだ“小さな大物”といえるだろう。
■ソニックス「アレグリア」は深いコクと低域の馬力を備える
ソニックスは、かつてオーディオフィジックで多くのマニアから支持を受けたエンジニア、ヨアヒム・ゲルハルトが数年前に立ち上げた新しいブランドである。今年はフラグシップに継ぐ大作「アレグリア」が日本へ上陸した。オーディオフィジック時代から変わることのないサラリとした質感とハイスピードで伸びやかなサウンドをそのままに、深いコクと低域の馬力が備わったような、何とも魅力的なサウンドの持ち主だ。大作とはいっても比較的日本の居住スペースにも置きやすいサイズで、そういう意味では鳴らしやすいスピーカーともいえそうである。
■新振動板で音質がさらなる高みへ達したエラック「BS 243」
今年最も驚かされたスピーカーの一つは、エラックだった。同社のウーファーはアルミとパルプの複合材によるパラボラ型のものが大部分だが、そのパラボラがまるで気象観測所のフラードームのように、きらきらと輝く三角形の集積に変身したのである。これによってアルミとパルプの密着性が大いに高まり、音質はさらなる高みに達している。一聴しただけでも低域のスピード感、力感がさらに高まり、持ち前の端正な音楽再現がさらに高められたように聴こえてくる。
まだまだ紹介したいスピーカーは山ほどあるのだが、一旦ここで筆を置こう。皆さんもぜひ会場で好みの音と出合って欲しい。
(炭山アキラ)