公開日 2009/05/25 12:47
【独HIGH END 2009】KEF、カーボンと新ユニット配置採用の新スピーカー「CONCEPT BLADE」を発表
ミュンヘンから現地レポート
欧州最大のピュアオーディオショウ「HIGH END 2009」が5月21日から24日まで、ドイツのミュンヘンで開催された。
一昨年、ミュンヘンのHIGH END 2007の会場でMUONを公開した英国のKEFが、今年の同じイベントで再び斬新なスピーカーを出品した。ただし、今回は発売時期や価格を公表しないコンセプトモデルという位置付けで、その名も「CONCEPT BLADE」、文字通りナイフの刃をイメージさせる個性的なデザインに目を奪われる。
正面から見えるスピーカーユニットは小口径のUni-Qドライバーのみだが、視線を僅かに横にずらすと、本体の両脇に25cm口径のウーファーが左右に2個ずつ、計4個取り付けられていることがわかる。この4個のウーファーユニットからなるバスアレイとUni-Qドライバーは、単一仮想点音源を形成するように巧みに配置されており、一体構造をなしている。ウーファーユニットは背中合わせに結合されているため、互いの振動を打ち消し合い、余分な振動をキャビネットに伝えることがない(透視図を参照)。この独自のユニット配置が、CONCEPT BLADEの最大の特徴である。
Uni-Qドライバーは第10世代に相当し、強靭な液晶ポリマーコーンを採用したミッドレンジと、チタン製ドームトゥイーターを組み合わせている。トゥイーター前面のタンジェリンウェーブガイドも新設計だ。
なめらかな曲線を描くキャビネットはバルサ材とカーボンファイバーを組み合わせることで軽さと強靭さを両立。この組み合わせは航空機にも使われているもので、効果的に共振を抑えることができるという。内部の吸音材にも複数の材料を使用するなど、キャビネットの振動対策は万全を期している。写真ではわかりにくいかもしれないが、表面にはカーボン繊維のテクスチャーが浮かび上がり、離れて見ても近くから見ても非常に美しい。質感の高さは驚くばかりだ。
ネットワーク回路はあえて本体に内蔵せず、外部に独立させた構造で、今回はパーツが見える作りになっていた。カスタムパーツが並び、一部のパーツには放熱用のヒートシンクも見える。コンセプトモデルを名乗ってはいるが、そのまま商品化できるほどに音を追い込んでいることがうかがえる。
その再生音だが、会場ではボーカルを中心に試聴することができた。最初に強く印象付けられるのは、どの音域も音のリリースが非常にスムースで、音が消えるときの自然さが際立つことだ。声のイメージは実際にその場にボーカリストが立っているような自然なサイズで、立体感豊かな音像がフワリと浮かぶ。歪みが極端に少ないためだと思うが、子音や高音にまったく硬さがなく、あくまでも音色のなめらかさでリアリティを引き出すことに感嘆させられた。無駄な力を排した自然さが、既存のスピーカーと一線を画すCONCEPT BLADEの特質といえるだろう。
MUONという記念碑モデルを完成させながら、僅か2年後に今度は技術の最先端を切り開く意欲的なコンセプトモデルを世に問う。その相次ぐチャレンジによって、KEFはスピーカーの世界においてこれまで以上に大きな存在感を見せつけることになった。
(山之内 正)
一昨年、ミュンヘンのHIGH END 2007の会場でMUONを公開した英国のKEFが、今年の同じイベントで再び斬新なスピーカーを出品した。ただし、今回は発売時期や価格を公表しないコンセプトモデルという位置付けで、その名も「CONCEPT BLADE」、文字通りナイフの刃をイメージさせる個性的なデザインに目を奪われる。
正面から見えるスピーカーユニットは小口径のUni-Qドライバーのみだが、視線を僅かに横にずらすと、本体の両脇に25cm口径のウーファーが左右に2個ずつ、計4個取り付けられていることがわかる。この4個のウーファーユニットからなるバスアレイとUni-Qドライバーは、単一仮想点音源を形成するように巧みに配置されており、一体構造をなしている。ウーファーユニットは背中合わせに結合されているため、互いの振動を打ち消し合い、余分な振動をキャビネットに伝えることがない(透視図を参照)。この独自のユニット配置が、CONCEPT BLADEの最大の特徴である。
Uni-Qドライバーは第10世代に相当し、強靭な液晶ポリマーコーンを採用したミッドレンジと、チタン製ドームトゥイーターを組み合わせている。トゥイーター前面のタンジェリンウェーブガイドも新設計だ。
なめらかな曲線を描くキャビネットはバルサ材とカーボンファイバーを組み合わせることで軽さと強靭さを両立。この組み合わせは航空機にも使われているもので、効果的に共振を抑えることができるという。内部の吸音材にも複数の材料を使用するなど、キャビネットの振動対策は万全を期している。写真ではわかりにくいかもしれないが、表面にはカーボン繊維のテクスチャーが浮かび上がり、離れて見ても近くから見ても非常に美しい。質感の高さは驚くばかりだ。
ネットワーク回路はあえて本体に内蔵せず、外部に独立させた構造で、今回はパーツが見える作りになっていた。カスタムパーツが並び、一部のパーツには放熱用のヒートシンクも見える。コンセプトモデルを名乗ってはいるが、そのまま商品化できるほどに音を追い込んでいることがうかがえる。
その再生音だが、会場ではボーカルを中心に試聴することができた。最初に強く印象付けられるのは、どの音域も音のリリースが非常にスムースで、音が消えるときの自然さが際立つことだ。声のイメージは実際にその場にボーカリストが立っているような自然なサイズで、立体感豊かな音像がフワリと浮かぶ。歪みが極端に少ないためだと思うが、子音や高音にまったく硬さがなく、あくまでも音色のなめらかさでリアリティを引き出すことに感嘆させられた。無駄な力を排した自然さが、既存のスピーカーと一線を画すCONCEPT BLADEの特質といえるだろう。
MUONという記念碑モデルを完成させながら、僅か2年後に今度は技術の最先端を切り開く意欲的なコンセプトモデルを世に問う。その相次ぐチャレンジによって、KEFはスピーカーの世界においてこれまで以上に大きな存在感を見せつけることになった。
(山之内 正)