公開日 2015/07/21 10:26
Just earの声かけでウォークマン開発者が“非公式”集結!参加者に裏話をこっそり披露
東京ヒアリングケアセンター青山店にて
■ウォークマン NW-ZX2開発陣が“非公式”に集結!
7月18日、東京ヒアリングケアセンター青山店にて、ソニーのウォークマン開発責任者たちが一堂に会したユーザー参加型イベントが開催された。これは、話題の“テーラーメイドイヤホン”「Just ear」ブランドを手掛ける松尾伴大氏の声かけで実現したもの。開発者が集まるのはソニー公式イベントでも滅多にない機会ということもあって、雨のなか約100人ものファンが集まり会場は超満員・大盛況。ウォークマンユーザーはもちろんのこと、ソニーのPCMレコーダー「PCM-D100」や、AK380やPAWGOLDといった他社製ハイエンドハイレゾDAPユーザーらも足を運んだ。
「今回のイベントはソニーとしての公式の仕事ではなく、友達として呼ばれてきたんです」と会場に現れたのは、ウォークマン開発プロジェクトリーダーの佐藤朝明氏、音質設計の佐藤浩朗氏、電気設計担当の吉岡克真氏、ソフト設計担当の原田 紀氏。フラグシップモデルである「NW-ZX2」(関連ニュース)の開発にまつわるお話から、「機密情報」との断り付きだが、現在開発中の製品情報などまで明らかにされた。また、ウォークマンには携わっていないが“レアキャラ”として、高音質SDカードの商品企画を手がけた後藤庸造氏も登場した。
■ZX2誕生の舞台裏や「S-Master」のメリット/デメリットを開発者が語る!
佐藤朝明氏は「NW-ZX2」開発裏話を披露。当初商品企画側から来た要請は「バッテリーの持ち時間を長くする」「microSDに対応する」ということだけだったというが、「まずはZX1を改造して、それからどういう方向で音を良くするか検討した」とのこと。ZX1の筐体にZX2の中身を搭載した試作機を製作したというエピソードも語られた。
次に語られたのは、フルデジタルアンプ「S-Master」を採用した意図について。ZX2はハイレゾ音源に対応すべく進化した「S-Master HX」を搭載している。
「S-Masterというのはウォークマン以外にも使われていて、安いアンプのように思われていますけど、ウォークマン用のS-Masterは専用設計なので、開発費はン億円なんです。普通DACは有名メーカー製の最高級品で1個40ドル、2個使いでも80ドルなので、仮に完成品のプレーヤーを1万台作ったとしてもかかる費用は8,000万円くらいなんですよ。コスト削減をしようとしたら、汎用のDACを使った方がよほど安い。それでもS-Masterを使うのは、やっぱり音質的なメリットが大きいからです」(佐藤朝明氏)。
さらに、「アナログアンプが温かい雰囲気の音なのに対して、S-Masterは解像感の高い音が再現できることが特徴。そして動的オーディオ特性、つまり波形に追従するスピードが全然違うのがメリットなんです。なので、たとえば大きい音が鳴っているなかで小さい音が鳴っても正確に再生することができる。バスドラムやベースギターの低音の締まりと立ち上がりの速さも強み」と解説。「この音を出せるのは、自社でS-Masterを開発するウォークマンだけです」と自信を見せた。
一方、「S-Master」のデメリットとして「歪んだ音源を再生すると、音の立ち上がりが速いので正しく歪んで聞こえる」ことだという。「我々はそれが正しいと思っていたのですが、これってアナログのアンプで聴くと歪まずに聞こえるんですよね。ZX1を開発していたとき『オーディオの世界では歪んだ音源も歪まず聴かせるものだ』と指摘されて。なのでZX2では、ハイスピードなサウンドをキープしたまま歪まないようにしました」(佐藤朝明氏)と、ZX1からZX2のサウンド思想の進化を解説した。一方でNW-ZX2の音を聴かせた音楽制作者の人などからは「ZX1の音の方が好きだった」という声もあったという。
NW-ZX2の高音質化に寄与する要素としては、そのほかにも「低インピーダンス化」「電源強化」「メルフ抵抗などのオーディオパーツの採用」なども挙げられた。
筆者が意外と感じたのは、グランド分離出力ができると注目を集めた4極対応の3.5mmステレオミニジャックが搭載された理由だ。「NW-ZX2は筐体が大型化するため、海外市場で需要のあるリモコンを付けられるよう4極端子にしたのですが、試作したリモコンが音質面で納得できず、とりやめになったんです。せっかく端子が4極あるならグランド分離できるようにしてしまおう!ということで、現在の仕様になりました」(佐藤朝明氏)とのこと。当初からグランド分離を目指して搭載されたわけではなかったのだ。
■DSDネイティブ再生対応に前向きな姿勢
イベントでは、開発者とユーザーが直接質問をやりとりする時間も用意された。開発者からは「現在利用しているポータブルハイレゾDAPは何?」という質問を筆頭に、「現在所有しているプレーヤーのバッテリーライフに満足してる?」「仮に“バッテリーが4時間しか持たないけど超高音質のプレーヤー”があったら、欲しい?」といった、ユーザーの要望を探る質問が飛びだした。
集まったユーザーからも、もちろん沢山の質問が登場。「DSDネイティブ再生はしないのか?」という問いには「要望は多いので頑張りたい」としつつも、「DSDはPCなどでリニアPCM変換すると硬い音になってしまうんですが、ZX2はPCM変換しつつ”DSDの音になるように”しているんです。それは、DSDフォーマット策定を行ったメンバーが開発に携わったから。なので、我々の今のシステムで出せるベストの解はリニアPCM変換だと考えています」と語られた。
他にも「Android OS搭載のウォークマンは動作がもっさりしているが、どうにかならないのか?」という意見には、「ストリーミングサービスの普及といった流れもありますし、Androidであるからできることもあると思う」「Android OSを採用してソフト開発費を安く上げているという誤解もあるが、ちゃんとGooglePlayを使えるAndroid端末を作るのには、莫大なコストがかかっているんです」という裏話も披露された。
会場にはJust earの「XJE-MH2」を自由に試聴できる展示スペースも用意されており、試聴する人たちが集まっていた。
ソニー非公式ではあったものの、ウォークマン開発者とユーザーが直接交流できる貴重な場となった今回のイベント。届けられたユーザーの声が今後の開発に活かされること、そして今後もこういった場が設けられることに期待したい。
7月18日、東京ヒアリングケアセンター青山店にて、ソニーのウォークマン開発責任者たちが一堂に会したユーザー参加型イベントが開催された。これは、話題の“テーラーメイドイヤホン”「Just ear」ブランドを手掛ける松尾伴大氏の声かけで実現したもの。開発者が集まるのはソニー公式イベントでも滅多にない機会ということもあって、雨のなか約100人ものファンが集まり会場は超満員・大盛況。ウォークマンユーザーはもちろんのこと、ソニーのPCMレコーダー「PCM-D100」や、AK380やPAWGOLDといった他社製ハイエンドハイレゾDAPユーザーらも足を運んだ。
「今回のイベントはソニーとしての公式の仕事ではなく、友達として呼ばれてきたんです」と会場に現れたのは、ウォークマン開発プロジェクトリーダーの佐藤朝明氏、音質設計の佐藤浩朗氏、電気設計担当の吉岡克真氏、ソフト設計担当の原田 紀氏。フラグシップモデルである「NW-ZX2」(関連ニュース)の開発にまつわるお話から、「機密情報」との断り付きだが、現在開発中の製品情報などまで明らかにされた。また、ウォークマンには携わっていないが“レアキャラ”として、高音質SDカードの商品企画を手がけた後藤庸造氏も登場した。
■ZX2誕生の舞台裏や「S-Master」のメリット/デメリットを開発者が語る!
佐藤朝明氏は「NW-ZX2」開発裏話を披露。当初商品企画側から来た要請は「バッテリーの持ち時間を長くする」「microSDに対応する」ということだけだったというが、「まずはZX1を改造して、それからどういう方向で音を良くするか検討した」とのこと。ZX1の筐体にZX2の中身を搭載した試作機を製作したというエピソードも語られた。
次に語られたのは、フルデジタルアンプ「S-Master」を採用した意図について。ZX2はハイレゾ音源に対応すべく進化した「S-Master HX」を搭載している。
「S-Masterというのはウォークマン以外にも使われていて、安いアンプのように思われていますけど、ウォークマン用のS-Masterは専用設計なので、開発費はン億円なんです。普通DACは有名メーカー製の最高級品で1個40ドル、2個使いでも80ドルなので、仮に完成品のプレーヤーを1万台作ったとしてもかかる費用は8,000万円くらいなんですよ。コスト削減をしようとしたら、汎用のDACを使った方がよほど安い。それでもS-Masterを使うのは、やっぱり音質的なメリットが大きいからです」(佐藤朝明氏)。
さらに、「アナログアンプが温かい雰囲気の音なのに対して、S-Masterは解像感の高い音が再現できることが特徴。そして動的オーディオ特性、つまり波形に追従するスピードが全然違うのがメリットなんです。なので、たとえば大きい音が鳴っているなかで小さい音が鳴っても正確に再生することができる。バスドラムやベースギターの低音の締まりと立ち上がりの速さも強み」と解説。「この音を出せるのは、自社でS-Masterを開発するウォークマンだけです」と自信を見せた。
一方、「S-Master」のデメリットとして「歪んだ音源を再生すると、音の立ち上がりが速いので正しく歪んで聞こえる」ことだという。「我々はそれが正しいと思っていたのですが、これってアナログのアンプで聴くと歪まずに聞こえるんですよね。ZX1を開発していたとき『オーディオの世界では歪んだ音源も歪まず聴かせるものだ』と指摘されて。なのでZX2では、ハイスピードなサウンドをキープしたまま歪まないようにしました」(佐藤朝明氏)と、ZX1からZX2のサウンド思想の進化を解説した。一方でNW-ZX2の音を聴かせた音楽制作者の人などからは「ZX1の音の方が好きだった」という声もあったという。
NW-ZX2の高音質化に寄与する要素としては、そのほかにも「低インピーダンス化」「電源強化」「メルフ抵抗などのオーディオパーツの採用」なども挙げられた。
筆者が意外と感じたのは、グランド分離出力ができると注目を集めた4極対応の3.5mmステレオミニジャックが搭載された理由だ。「NW-ZX2は筐体が大型化するため、海外市場で需要のあるリモコンを付けられるよう4極端子にしたのですが、試作したリモコンが音質面で納得できず、とりやめになったんです。せっかく端子が4極あるならグランド分離できるようにしてしまおう!ということで、現在の仕様になりました」(佐藤朝明氏)とのこと。当初からグランド分離を目指して搭載されたわけではなかったのだ。
■DSDネイティブ再生対応に前向きな姿勢
イベントでは、開発者とユーザーが直接質問をやりとりする時間も用意された。開発者からは「現在利用しているポータブルハイレゾDAPは何?」という質問を筆頭に、「現在所有しているプレーヤーのバッテリーライフに満足してる?」「仮に“バッテリーが4時間しか持たないけど超高音質のプレーヤー”があったら、欲しい?」といった、ユーザーの要望を探る質問が飛びだした。
集まったユーザーからも、もちろん沢山の質問が登場。「DSDネイティブ再生はしないのか?」という問いには「要望は多いので頑張りたい」としつつも、「DSDはPCなどでリニアPCM変換すると硬い音になってしまうんですが、ZX2はPCM変換しつつ”DSDの音になるように”しているんです。それは、DSDフォーマット策定を行ったメンバーが開発に携わったから。なので、我々の今のシステムで出せるベストの解はリニアPCM変換だと考えています」と語られた。
他にも「Android OS搭載のウォークマンは動作がもっさりしているが、どうにかならないのか?」という意見には、「ストリーミングサービスの普及といった流れもありますし、Androidであるからできることもあると思う」「Android OSを採用してソフト開発費を安く上げているという誤解もあるが、ちゃんとGooglePlayを使えるAndroid端末を作るのには、莫大なコストがかかっているんです」という裏話も披露された。
会場にはJust earの「XJE-MH2」を自由に試聴できる展示スペースも用意されており、試聴する人たちが集まっていた。
ソニー非公式ではあったものの、ウォークマン開発者とユーザーが直接交流できる貴重な場となった今回のイベント。届けられたユーザーの声が今後の開発に活かされること、そして今後もこういった場が設けられることに期待したい。