公開日 2016/09/13 18:31
天性の歌声、中村月子22歳の夏をビンテージ機材でハイレゾ録音。その現場をレポート
23歳の誕生日に配信
夏の過日。古民家の一室で、シンガーソングライター中村月子のレコーディングが行われた。
中村月子はギター弾き語りスタイルで、等身大の感情を天性の歌声にのせる、いま注目すべき期待のアーティスト。以前にHIGH RESOLUTION FESTIVAL at SPIRALでの生ライブ、DSD録音に挑戦し、アンテナを張ったオーディオファンには俄に知られた存在となったことも記憶に新しい。
そんな彼女が23歳を目前に迎え、特別な収録をすることになった。それはビンテージ・ギターにビンテージ・マイクを使用し、横浜の古民家studio Memory Labで弾き語りを録るというもの。マイクは歌録りにNEUMANN U-67、ギターにAKG C 12A/ベルリナーCM-33、ベースにRCA 44B/ベルリナーCM-33。いずれもビンテージの銘機だ。
エンジニアは同スタジオの所有者であり、件のハイレゾフェスでも録音を担当した高橋健太郎氏。録音はハイレゾフォーマットで、88.2kHz/32bitで行われている。
用意された楽曲は2タイトルで、1曲は中村月子のオリジナル『何度も』(使用ギター:Martin 00-17 1949年製)、もう1曲は堺正章『街の灯り』のカバー(使用ギター:Taylor 512ce)となる。『何度も』では、KIRINJIのベーシスト、千ヶ崎 学がゲスト参加している。
レコーディングが行われたスタジオは、音響処理が為されているものの、元はあくまで普通の民家だ。レコーディングルームの隣室にあるモニタールームで、関係者は息を潜めて中村月子が歌い終わるのを待つ。
その時間、ほんの少しだけ、外からセミの鳴き声が聴こえていた。日が長い時期、まだ辺りが茜色に染まるには早いが、幾分やわらかくなった光が窓から差し込む。埃っぽさや生活感はないものの、人の家の匂いがする。どれもが、最新設備が整ったスタジオにはないものだ。それが良い悪いということはない。ただ、この場所だから録れるものがあったのではないだろうか。
それは中村月子の歌にしてもそうだ。技量として同じ演奏が出来ないという話ではない。あのシチュエーションでこその歌声があったのではないだろうか。そう思わせるような、特別なものにしようという雰囲気が、収録現場にはずっと流れていた。
中村月子が持つ魅力なのか、エンジニアの腕なのか、ビンテージ機器の性能なのか。何が要因か分からないが、結果として、音だけではなくその場の空気そのものが収録された。それが、今回のハイレゾ音源の率直な感想だ。
22歳、夏の終わりが近いあの日、そこにいて歌っていた中村月子。リアルな、などとよく言うが、ここまでその存在を感じさせ、同じ時間を共有できる音源はそうはない。
中村月子の23歳の誕生日である本日9月13日、OTOTOYにてリリースが開始される。ぜひ、この空気を感じて欲しい。
購入はこちらから
『何度も』(44.1kHz/24bit)
『何度も』(88.2kHz/32bit float)
Photo:小野広幸
Jacket Photo:Kazuya Yamaguchi
中村月子はギター弾き語りスタイルで、等身大の感情を天性の歌声にのせる、いま注目すべき期待のアーティスト。以前にHIGH RESOLUTION FESTIVAL at SPIRALでの生ライブ、DSD録音に挑戦し、アンテナを張ったオーディオファンには俄に知られた存在となったことも記憶に新しい。
そんな彼女が23歳を目前に迎え、特別な収録をすることになった。それはビンテージ・ギターにビンテージ・マイクを使用し、横浜の古民家studio Memory Labで弾き語りを録るというもの。マイクは歌録りにNEUMANN U-67、ギターにAKG C 12A/ベルリナーCM-33、ベースにRCA 44B/ベルリナーCM-33。いずれもビンテージの銘機だ。
エンジニアは同スタジオの所有者であり、件のハイレゾフェスでも録音を担当した高橋健太郎氏。録音はハイレゾフォーマットで、88.2kHz/32bitで行われている。
用意された楽曲は2タイトルで、1曲は中村月子のオリジナル『何度も』(使用ギター:Martin 00-17 1949年製)、もう1曲は堺正章『街の灯り』のカバー(使用ギター:Taylor 512ce)となる。『何度も』では、KIRINJIのベーシスト、千ヶ崎 学がゲスト参加している。
レコーディングが行われたスタジオは、音響処理が為されているものの、元はあくまで普通の民家だ。レコーディングルームの隣室にあるモニタールームで、関係者は息を潜めて中村月子が歌い終わるのを待つ。
その時間、ほんの少しだけ、外からセミの鳴き声が聴こえていた。日が長い時期、まだ辺りが茜色に染まるには早いが、幾分やわらかくなった光が窓から差し込む。埃っぽさや生活感はないものの、人の家の匂いがする。どれもが、最新設備が整ったスタジオにはないものだ。それが良い悪いということはない。ただ、この場所だから録れるものがあったのではないだろうか。
それは中村月子の歌にしてもそうだ。技量として同じ演奏が出来ないという話ではない。あのシチュエーションでこその歌声があったのではないだろうか。そう思わせるような、特別なものにしようという雰囲気が、収録現場にはずっと流れていた。
中村月子が持つ魅力なのか、エンジニアの腕なのか、ビンテージ機器の性能なのか。何が要因か分からないが、結果として、音だけではなくその場の空気そのものが収録された。それが、今回のハイレゾ音源の率直な感想だ。
22歳、夏の終わりが近いあの日、そこにいて歌っていた中村月子。リアルな、などとよく言うが、ここまでその存在を感じさせ、同じ時間を共有できる音源はそうはない。
中村月子の23歳の誕生日である本日9月13日、OTOTOYにてリリースが開始される。ぜひ、この空気を感じて欲しい。
購入はこちらから
『何度も』(44.1kHz/24bit)
『何度も』(88.2kHz/32bit float)
Photo:小野広幸
Jacket Photo:Kazuya Yamaguchi