公開日 2020/10/26 19:30
“オーディオ・ファースト”な音楽配信を実現。キング関口台スタジオからの4K/ハイレゾ配信実験をレポート
11月8日(日)まで視聴可能
コルグは、高音質にこだわるライブストリーミングを実現するためのソリューション「Live Extreme」を開発、その実証実験が11月25日にキング関口台スタジオにて開催された。この模様をレポートしよう。なお、この実証実験の模様は、生配信に加えて、11月8日(日)の24時までブラウザ上から無料で視聴できる。
開発を手掛けたコルグの大石耕史さんによると、「Live Extreme」の最大の特徴は、“オーディオ・ファースト”であることだという。音声と映像を同時にストリームするためには、リップシンクといったタイミングを合わせる操作が必要になるが、このLive Extremeに関しては、「オーディオ」の高音質再生を優先とし、その音声信号に「映像を合わせる」形で実現されている。
Live Extremeでは、映像は最大4Kクオリティ、音声はPCMが最大384kHz/24bit、DSDは5.6MHzまでの配信を行うことができる。ただし、後述するようにデバイスやブラウザによって、再生できるフォーマットに制限がある場合もある。
今回の実証実験では、NHK交響楽団主席ホルン奏者の福川伸陽さんと、ピアニスト阪田知樹さんが登場。約30分程度の配信となっている。
福川伸陽さんの演目は「マーラー:交響曲第5番」より、第4楽章アダージェット。しかも、それをホルン八重奏に編曲し、すでに福川さん自身が録音した7本のホルンに、リアルタイムで福川さんが8本目のホルンを合わせる形で演奏される。指揮についても福川さん自身がすでに動画撮影したものに合わせるという画期的な取り組みだ。
福川さんはこの取り組みについて、「新型コロナウイルスの影響で、多くの人が集まって演奏することができなくなってしまいました。そんな中で、なにか一人でも発信できないかと考えたときに、このような一人多重録音ならば、密にならずに作品づくりが行えると考えたのです」とコロナ禍だからこそ生まれた作品であると語る。
配信実験の当日は、キング関口台スタジオの第1スタジオで演奏が行われ、その模様をひとつ上のフロアにある第2スタジオで、「Live Extreme」を介したストリーミング配信として視聴することができた。
実際に聴いてみると、ジェネレックのモニタースピーカーから出る音の鮮度の高さ、透明感が非常に印象的。収録もスタジオで行っており、プロの録音エンジニアがマイクセッティングやサウンドメイキングを行っていることも音質面での大きなアドバンテージと感じられた。また、特にクラシックでは映像と音声のズレが非常に大きなストレスとして感じられるが、今回はそのようなずれの感じられない、スムーズな音楽ストリームを体感することができた。
ピアニストの阪田知樹さんは、バラキエフ編曲によるショパンの「ロマンス」、リスト編曲によるシューマン「春の夜」の2曲を演奏。通常のコンサートでは決まった視点しか見ることがないが、配信ライブでは、指先の動きもズームなどで見ることができるなど、配信ならではの新しい魅力も発見できる。
なお自宅で視聴する際には、回線の速度に合わせて、「4K/192kHz」「4K/48kHz」「フルHD/96kHz」「フルHD/48kHz」での配信で楽しむことができる。
この実証実験をサーバーサイドから支えているのが、インターネット企業IIJ(インターネット・イニシアティブ)の取り組みである。IIJは、2019年2月にベルリン・フィルハーモニーからの4K/ハイレゾ配信実験を成功させたが、この時の課題として、複数の機材が必要なことに加えて、やはり音声と映像のリップシンクの問題があったという。
Live Extremeは、これらの問題の解決としても大きな意味を持っている。Live Extremeは「ソフトウェアベース」で動くことも大きな特徴で、Windows10 64bit、CPUがQuickSync Videoに対応したIntel Coreプロセッサーがインストールされた市販のPCで動かすことができる。これは、コルグがハードウェアだけではなくAudioGateやPrimeSeatなど、ソフトウェアからの音質的な取り組みを長年にわたって積み重ねてきたことが背景としてある。
Live Extremeでは、音と映像を合わせるためにエンコーダー、ロスレス圧縮、サーバーへのアップロードまでを「KORG Live Extreme Encoder」1台で行う。2019年2月の配信実験では5台の機材が必要だったところを、基本的には1台で完結できるようになった(配信クオリティによっては2台必要)。機材を少なくすることでオペレーションをシンプルにできることや、なにかトラブルがあった際にもリカバリーが容易になるといったメリットがある。
追加のアプリケーション等のインストールは不要で、再生はChrome、Safari、Edge等のブラウザから行える。つまり、PCだけではなく、スマートフォン/タブレット等や、FireTVといったセットトップボックスのブラウザからでも再生ができる。
ただし、すべてのデバイス、ブラウザでフルスペックで再生することは仕様上難しい。たとえばiPhoneのSafariからでは、最大でもフルHD+AACクオリティでしか視聴できないなどの制限がある。また、DSDの視聴はブラウザからでは行えないため、今後専用アプリケーションの提供なども視野に入れているという。
ベストな環境で再生したい場合、現状ではやはりPCが必須となる。PCから再生する場合、ASIOドライバに対応したUSB-DACを接続することで、192kHzやDSDの再生も可能になる。コルグのUSB-DACでなくても再生可能ということも大きな特徴となる。
先述したとおり、Live Extremeはオーディオクロックを基準としたソフトウェア設計がなされており、もし映像と音声にずれが生じたとしても、オーディオに合わせて映像のクロックを打ち直す設計となっている。つまり、「高音質な音楽配信に、映像が加わった」という意味で、非常に画期的な取り組みということができるだろう。
開発を手掛けたコルグの大石耕史さんによると、「Live Extreme」の最大の特徴は、“オーディオ・ファースト”であることだという。音声と映像を同時にストリームするためには、リップシンクといったタイミングを合わせる操作が必要になるが、このLive Extremeに関しては、「オーディオ」の高音質再生を優先とし、その音声信号に「映像を合わせる」形で実現されている。
Live Extremeでは、映像は最大4Kクオリティ、音声はPCMが最大384kHz/24bit、DSDは5.6MHzまでの配信を行うことができる。ただし、後述するようにデバイスやブラウザによって、再生できるフォーマットに制限がある場合もある。
今回の実証実験では、NHK交響楽団主席ホルン奏者の福川伸陽さんと、ピアニスト阪田知樹さんが登場。約30分程度の配信となっている。
福川伸陽さんの演目は「マーラー:交響曲第5番」より、第4楽章アダージェット。しかも、それをホルン八重奏に編曲し、すでに福川さん自身が録音した7本のホルンに、リアルタイムで福川さんが8本目のホルンを合わせる形で演奏される。指揮についても福川さん自身がすでに動画撮影したものに合わせるという画期的な取り組みだ。
福川さんはこの取り組みについて、「新型コロナウイルスの影響で、多くの人が集まって演奏することができなくなってしまいました。そんな中で、なにか一人でも発信できないかと考えたときに、このような一人多重録音ならば、密にならずに作品づくりが行えると考えたのです」とコロナ禍だからこそ生まれた作品であると語る。
配信実験の当日は、キング関口台スタジオの第1スタジオで演奏が行われ、その模様をひとつ上のフロアにある第2スタジオで、「Live Extreme」を介したストリーミング配信として視聴することができた。
実際に聴いてみると、ジェネレックのモニタースピーカーから出る音の鮮度の高さ、透明感が非常に印象的。収録もスタジオで行っており、プロの録音エンジニアがマイクセッティングやサウンドメイキングを行っていることも音質面での大きなアドバンテージと感じられた。また、特にクラシックでは映像と音声のズレが非常に大きなストレスとして感じられるが、今回はそのようなずれの感じられない、スムーズな音楽ストリームを体感することができた。
ピアニストの阪田知樹さんは、バラキエフ編曲によるショパンの「ロマンス」、リスト編曲によるシューマン「春の夜」の2曲を演奏。通常のコンサートでは決まった視点しか見ることがないが、配信ライブでは、指先の動きもズームなどで見ることができるなど、配信ならではの新しい魅力も発見できる。
なお自宅で視聴する際には、回線の速度に合わせて、「4K/192kHz」「4K/48kHz」「フルHD/96kHz」「フルHD/48kHz」での配信で楽しむことができる。
この実証実験をサーバーサイドから支えているのが、インターネット企業IIJ(インターネット・イニシアティブ)の取り組みである。IIJは、2019年2月にベルリン・フィルハーモニーからの4K/ハイレゾ配信実験を成功させたが、この時の課題として、複数の機材が必要なことに加えて、やはり音声と映像のリップシンクの問題があったという。
Live Extremeは、これらの問題の解決としても大きな意味を持っている。Live Extremeは「ソフトウェアベース」で動くことも大きな特徴で、Windows10 64bit、CPUがQuickSync Videoに対応したIntel Coreプロセッサーがインストールされた市販のPCで動かすことができる。これは、コルグがハードウェアだけではなくAudioGateやPrimeSeatなど、ソフトウェアからの音質的な取り組みを長年にわたって積み重ねてきたことが背景としてある。
Live Extremeでは、音と映像を合わせるためにエンコーダー、ロスレス圧縮、サーバーへのアップロードまでを「KORG Live Extreme Encoder」1台で行う。2019年2月の配信実験では5台の機材が必要だったところを、基本的には1台で完結できるようになった(配信クオリティによっては2台必要)。機材を少なくすることでオペレーションをシンプルにできることや、なにかトラブルがあった際にもリカバリーが容易になるといったメリットがある。
追加のアプリケーション等のインストールは不要で、再生はChrome、Safari、Edge等のブラウザから行える。つまり、PCだけではなく、スマートフォン/タブレット等や、FireTVといったセットトップボックスのブラウザからでも再生ができる。
ただし、すべてのデバイス、ブラウザでフルスペックで再生することは仕様上難しい。たとえばiPhoneのSafariからでは、最大でもフルHD+AACクオリティでしか視聴できないなどの制限がある。また、DSDの視聴はブラウザからでは行えないため、今後専用アプリケーションの提供なども視野に入れているという。
ベストな環境で再生したい場合、現状ではやはりPCが必須となる。PCから再生する場合、ASIOドライバに対応したUSB-DACを接続することで、192kHzやDSDの再生も可能になる。コルグのUSB-DACでなくても再生可能ということも大きな特徴となる。
先述したとおり、Live Extremeはオーディオクロックを基準としたソフトウェア設計がなされており、もし映像と音声にずれが生じたとしても、オーディオに合わせて映像のクロックを打ち直す設計となっている。つまり、「高音質な音楽配信に、映像が加わった」という意味で、非常に画期的な取り組みということができるだろう。