公開日 2023/05/29 11:47
JICO、新オフィス披露&“木製”カンチレバー作成のデモも実施
新製品のプロトタイプの試聴も実施
SHUREカートリッジ専用の交換針など、アナログ関連アイテムの開発で知られるJICO(日本精機宝石工業)は、今年3月に東京オフィスを新橋に移転。そのお披露目イベントが5月27日(土)に開催された。
JICOの新東京オフィスは、1932年に建てられた築91年の「堀ビル」。国の登録有形文化財として登録される歴史の重みを感じさせる重厚なデザインで、現在はスタートアップ企業が集まるシェアオフィスとして活用されている。日本の古を尊重する文化を大切にし、それを世界に発信していくJICOの拠点としてふさわしいとの思いから、この建物にオフィスを移転することになったのだという。
お披露目イベントでは、音楽ライターの田中伊佐資さんとテクニクスの上松泰直さんが登壇、テクニクスのオーディオシステムと組み合わせてJICOのMMカートリッジや「交換針」の聴き比べなどが行われた。
JICOは、SHUREのMMカートリッジ「44シリーズ」の交換針を多数ラインナップしているが、今回は田中さんも惚れ込んだ“木製”カンチレバーを搭載したMORITAシリーズをフィーチャー。カンチレバーは、レコードの音溝をピックアップする針先(ダイヤモンドが多く使われる)を装着し、コイルに振動を伝える非常に短いスティックで、通常アルミやサファイア、ダイヤモンドなどが使われることが多い。
MORITAシリーズは、JICOのベテラン技術者である森田さんがちょっとした「遊び心」で木材を使って作ってみたところ、音質的に非常に良い出来だったため、実際に製品化されたという経緯がある。現在は木材の種類によって「黒柿」と「牛殺」という2製品が用意されている。
田中さんは初めて黒柿を聴いた時の印象について、「木のしなやかな音がすることにとてもびっくりしました」と振り返る。自宅で愛用している牛殺についても、「製品が発売された最初期から使っていますが、長年使っているうちに音がだんだん変わってくるんです。オーディオも生き物みたいなもので、だんだん育ってくるんですね」とカートリッジ愛を炸裂させる。
JICOの製品開発でも使われているというポーランドのヴォーカリスト、BASIAのアルバムで聴き比べを実施。「黒柿」は、柔らかで艷やかで、ハーモニーの溶け合いが極上の美しさを奏でる一方で、「牛殺」は低域の沈み込みの深さが印象的で、上質な低域の手触り感が印象的。どちらも甲乙つけ難く、聴きたいレコードによって選ぶ楽しみがありそうだ。
イベント後半では、カンチレバー職人である奥 充男さんが登場し、実際の作業の様子を実演してくれた。時計旋盤と呼ばれる小型の機械でひとつひとつ手作業で削り出すもので、1時間に4-5個しか作ることができないのだという。真剣な眼差しで旋盤をコントロールし、最終的には長さ1cmにも満たない小さなスティックに仕上げられる。さらにここから先端にドリルで穴を開け、ダイヤモンドのチップを埋め込むことで、カートリッジの針先が完成するのだ。
イベントの最後には、「木製カンチレバー搭載針」のプロトタイプ2機種についても特別に試聴が行われた。ひとつは「紅木」、もうひとつは「ピンクアイボリー」と呼ばれる木材を使用したもの。マテオ・ストーンマンのキューバ音楽で聴き比べを行ったが、「紅木」はスペイン語のアクセントが明瞭でカラッとした青空のような明るい印象、「ピンクアイボリー」はボーカルが前に迫ってきてキューバ音楽の熱気が吹き荒れるよう。
JICOの仲川社長も、今回の試聴会の反響を踏まえ、具体的な発売計画を検討していくとのこと。JICOのカートリッジや針先は、ハイファイオーディオファンからDJファンまで、国内外を問わず非常に愛されている。世界に向けてますます発信力を高めるJICOの動きには今後も注目していきたい。
JICOの新東京オフィスは、1932年に建てられた築91年の「堀ビル」。国の登録有形文化財として登録される歴史の重みを感じさせる重厚なデザインで、現在はスタートアップ企業が集まるシェアオフィスとして活用されている。日本の古を尊重する文化を大切にし、それを世界に発信していくJICOの拠点としてふさわしいとの思いから、この建物にオフィスを移転することになったのだという。
お披露目イベントでは、音楽ライターの田中伊佐資さんとテクニクスの上松泰直さんが登壇、テクニクスのオーディオシステムと組み合わせてJICOのMMカートリッジや「交換針」の聴き比べなどが行われた。
JICOは、SHUREのMMカートリッジ「44シリーズ」の交換針を多数ラインナップしているが、今回は田中さんも惚れ込んだ“木製”カンチレバーを搭載したMORITAシリーズをフィーチャー。カンチレバーは、レコードの音溝をピックアップする針先(ダイヤモンドが多く使われる)を装着し、コイルに振動を伝える非常に短いスティックで、通常アルミやサファイア、ダイヤモンドなどが使われることが多い。
MORITAシリーズは、JICOのベテラン技術者である森田さんがちょっとした「遊び心」で木材を使って作ってみたところ、音質的に非常に良い出来だったため、実際に製品化されたという経緯がある。現在は木材の種類によって「黒柿」と「牛殺」という2製品が用意されている。
田中さんは初めて黒柿を聴いた時の印象について、「木のしなやかな音がすることにとてもびっくりしました」と振り返る。自宅で愛用している牛殺についても、「製品が発売された最初期から使っていますが、長年使っているうちに音がだんだん変わってくるんです。オーディオも生き物みたいなもので、だんだん育ってくるんですね」とカートリッジ愛を炸裂させる。
JICOの製品開発でも使われているというポーランドのヴォーカリスト、BASIAのアルバムで聴き比べを実施。「黒柿」は、柔らかで艷やかで、ハーモニーの溶け合いが極上の美しさを奏でる一方で、「牛殺」は低域の沈み込みの深さが印象的で、上質な低域の手触り感が印象的。どちらも甲乙つけ難く、聴きたいレコードによって選ぶ楽しみがありそうだ。
イベント後半では、カンチレバー職人である奥 充男さんが登場し、実際の作業の様子を実演してくれた。時計旋盤と呼ばれる小型の機械でひとつひとつ手作業で削り出すもので、1時間に4-5個しか作ることができないのだという。真剣な眼差しで旋盤をコントロールし、最終的には長さ1cmにも満たない小さなスティックに仕上げられる。さらにここから先端にドリルで穴を開け、ダイヤモンドのチップを埋め込むことで、カートリッジの針先が完成するのだ。
イベントの最後には、「木製カンチレバー搭載針」のプロトタイプ2機種についても特別に試聴が行われた。ひとつは「紅木」、もうひとつは「ピンクアイボリー」と呼ばれる木材を使用したもの。マテオ・ストーンマンのキューバ音楽で聴き比べを行ったが、「紅木」はスペイン語のアクセントが明瞭でカラッとした青空のような明るい印象、「ピンクアイボリー」はボーカルが前に迫ってきてキューバ音楽の熱気が吹き荒れるよう。
JICOの仲川社長も、今回の試聴会の反響を踏まえ、具体的な発売計画を検討していくとのこと。JICOのカートリッジや針先は、ハイファイオーディオファンからDJファンまで、国内外を問わず非常に愛されている。世界に向けてますます発信力を高めるJICOの動きには今後も注目していきたい。