公開日 2023/06/22 11:55
【販売店レポート】ビックカメラ有楽町店、アフターコロナも老若問わず関心が高いオーディオ。牽引役は“レコード”と“ストリーミング”
一歩先に広がるオーディオの醍醐味をぐっと身近に
■若者からも依然人気が高いレコードプレーヤー
コロナ禍でおうち時間が増え、ホームエンタメとして脚光を浴びたオーディオ。行動制限が解除されたことで、旅行やイベントなどアウトドアへ目が向けられるが、ビックカメラ有楽町店では、2つのトレンドがオーディオに勢いをつけているという。
一つ目は、オーディオコーナーの西山直隆氏が「ようやく板についてきた印象です」と語る『ストリーミング』だ。「若者だけでなく、年配の方もコロナ禍にスマホを使ってストリーミングで音楽を楽しまれる方が増え、今は、据置型のコンポでもっといい音で楽しみたいとの欲求が高まっています。店頭でも『これはネットワークオーディオ対応ですか?』といった質問をよく受けます」と関連商品が盛り上がりを見せている。
西山氏が今注目しているのが、デノンから6月23日に発売されるネットワークプレーヤーの新製品「DNP-2000NE」。当初は数多くのモデルが顔を揃えた“単体”のネットワークプレーヤーもすっかり数が少なくなった。「手持ちのシステムにミドルやミドルハイのネットワークプレーヤーを追加したいという声が根強くあります。まさに待望の新製品。USB DACとしてPCと接続、HDMI端子を搭載してテレビにもつなげられ、発売後の動向が楽しみですね」と大きな期待を寄せる。
そして、二つ目に挙げるトレンドが『レコード』。「レコードを始めたい」と店を訪れる若いお客様の数は高止まりで推移。初めてという方はもちろん、すでに始められていて「もっといい音で!」とグレードアップされるお客様も少なくないという。
また、報道でもよく耳にした、コロナ禍で断捨離をして出てきたレコードを聴こうとオーディオを再開した復活組や、さらに、そうしたレコードにまつわる情報に触発されて関心を持ち始めるケースなど、年齢層やオーディオ歴を問わず関心が高まり、堅調な推移を見せている。
■レコードプレーヤー+「ミニコンポ」
ビックカメラ有楽町店のオーディオコーナーでも、存在感を放ちひと際目につくのが、通路に沿って展開するレコードプレーヤーコーナーだ。約30台もの製品がズラリと並び、目的とする商品をお客様自身でもある程度目星が付けられるよう、グレードや機能をわかりやすくPOPを付けて解説している。
これからオーディオを始めようと来店されたお客様がすぐにレコードの音を聴けるように、Bluetooth対応のスピーカーやヘッドホンにレコードの音をワイヤレス伝送できるオーディオテクニカのレコードプレーヤー「AT-LP60XB」とJBLのBluetoothスピーカー「Charge 5」を組み合わせた特設の展示台も用意。「レコードが熱い!」「アナログ音源試聴できます」「レコードはじめませんか?」のキャッチコピーとともに目に飛び込んでくる。
予算を優先した手軽な組み合わせもひとつの楽しみ方ではあるが、先を見据えてグレードアップしていけるのがオーディオの醍醐味。「Bluetoothスピーカーではなく、まずはCDもラジオも聴けるミニコンポという選択肢をご案内しています」とレコードプレーヤーコーナーと通路を挟んだ向かいにはミニコンポコーナーを展開する。
数万円のエントリークラスのレコードプレーヤーとの組み合わせに推奨するのは、同じくらいの価格で手にできる一体型のミニコンポ。店頭で「おすすめBest3」の第1位として紹介するのがビックカメラオリジナルとなる「XR-BU30」。設置場所を問わないコンパクトなボディにFMラジオとCD機能も搭載。USBやSDの再生もでき、Bluetooth機能まで搭載しながら9,980円(取材時)の衝撃価格。
第2位はスリムなデザインが魅力のケンウッド「LCA-10」、第3位は本格ウッドキャビネットが目を引くビクター「NX-W31」。いずれも2万円を切る価格(取材時)で手に入れることができる。
5万円前後のミドルクラスのレコードプレーヤーをお求めのお客様には、音楽を楽しむための機能が凝縮したマランツのネットワークレシーバー「M-CR612」とダリのブックシェルフ型スピーカー「OBERON1」の組み合わせなど、スピーカーを選ぶ楽しさも提案する。「さらに単品コンポへグレードアップ、レコードプレーヤーでも針やカートリッジを交換して楽しめますし、その場ですぐに購入には至らなくても、地道に種をまいていくことが大切です」と訴える。
■アクセサリー強化でお客様の目と心を釘付けに
今、力を入れているのが、オーディオの世界には欠かせない数々のアクセサリー。「実際にはなかなか売れないような商品も含めて置いてあります。『こんなものもあるのか』『これはちょっと高くて手が出せないけど欲しいなあ』など、見ているだけでも楽しくなるような品揃えでお客様の目を釘付けにしたい」と力を込める。
オーディオ製品の品揃えでも「専門店のような超ハイエンド製品は置くことはできませんが、ローエンドからミドルハイまで、ブランドもできるだけ幅広く揃えるように心がけています」と個性豊かな面々が顔を並べる。
「オーディオを初めて始められる方はもちろん、昔オーディオをやっていて、また始めてみたいという方でも、専門店ですとどうしても敷居が高く躊躇されてしまうケースも少なくないようです。そんなお客様にも気軽に足を運んでいただけます」とオーディオとお客様とをつなぐ重要な役割を担う場になっている。
レコードが若い人から関心を集めてはいるものの、オーディオでは長らくファン層の高齢化も指摘されている。「私たちの年代からしたら信じられないことですが、何より今の若い人はミニコンポもラジカセも見たことがありません。存在すら知らないわけです。ですから、Bluetoothスピーカーをお求めに来られた若いお客様に、『コンポでも聴けるんですよ』と別の選択肢があることを状況にあわせてご案内しています」。
■貴重な体験の機会をどう提供していけるか
「一度でも体験してもらったら本当に世界が変わります。たとえその時に製品の購入にまで至らなくても、これからの生活のなかでのひとつの夢として構想を描いていただけたらうれしいですね」と語る西山氏。
オーディオ市場では現在、半導体をはじめとする部品供給などの問題から、製品の供給不足がひとつの大きな課題となっている。「これまで一番待っていただいたお客様は2年になります」と気の遠くなるような例も見られた。ここに来て改善傾向にはあるが、まだまだ完全回復には至っていない。「お店にとって納期はお客様との約束事です。納期未定といった曖昧な表現にならないよう、当社としてもメーカーと連携して、できるだけ具体的な情報をお知らせできるように取り組んで参ります」。
コロナ禍でホームエンタメとして注目を集め、レコードブームもいまだ健在なオーディオ。「興味を持っていただいた方にひとりでも多く、売り場に足を運び本物のいい音を実際に体験していただきたい。ハイファイオーディオのファンになってほしいですね。試聴されたお客様は皆さん本当に驚かれるんですよ。そうした貴重な体験の機会をどう提供していけるか。売り場まで足を運んでいただく“きっかけ”づくりも課題のひとつです」。
ビックカメラ有楽町店と道路を挟み立地するのは、東京インターナショナルオーディオショウなどの会場としても使用される東京国際フォーラムだ。今週末6月24日(土)・25日(日)には『OTOTEN2023』が開催される。ビックカメラ有楽町店のオーディオコーナーにもぜひ、足を運んでのぞいてみてはいかがだろうか。