公開日 2024/10/07 18:43
バックロードホーン・スピーカーを新たに導入!旭化成エレクトロニクスの共創拠点&新試聴室に潜入
開発拠点を統合しよりスピーディな製品開発を
DA/ADコンバーターなど、オーディオ向けICを多数展開する旭化成エレクトロニクス(AKM)は、この6月、新横浜に新たな開発拠点を立ち上げた。ハイエンドオーディオ向けの試聴ルームも新設したということで、その開発拠点を取材させてもらった。
新しい拠点は「AKM Co-creation & Technologyセンター」と名付けられており、新横浜駅から徒歩5分程度。国内の開発・設計・研究開発チームがひとつのビルに集約されている。これまでは設計(厚木)、開発(有楽町)と離れていたチームを統合することで、よりスピーディな製品開発を実現するとともに、様々な共創がを生み出す場として構築されたものだという。
1Fはガレージで、最大4台の車が収容可能。近年旭化成エレクトロニクスが力を入れる車載向けデバイスの研究開発が行われている。
2Fはカンファレンスやセミナーなど多目的に使用できるフロアとなっている。取引先など社外の人もウェルカムなオープンスペースとなっており、CESで披露されたテクノロジーなど、旭化成エレクトロニクスの新しい提案を体験することができる。片隅にはちょっとした飲食スペースも設けられており、社内外の人々との交流やブレストも可能。旭化成の技術をどう社会実装していくかといった自由な議論を引き出しやすい環境として整備されている。
オーディオルームは、AKMサウンドの製品開発の肝として新たに設計された。部屋の設計には日本音響エンジニアリングも協力しているそうで、広さは30畳弱と以前の有楽町よりも多少広く、天井も奥に向かって低くなるよう傾斜がつけられている。アンクなどのルームチューニングアイテムも新たに導入し、製品開発のための「微妙な音の違い」をしっかり聴き分けられるように工夫されているという。
AKMの高音質ICは世界的にも評価が高く、コンシューマー向けからプロオーディオ機器まで幅広い採用実績を誇る。特にAK4491EQ/AK4499EXを筆頭とするDAコンバーターは、数多くのハイエンドオーディオメーカーに採用されている。
旭化成といえば、2020年に起きた宮崎県の半導体工場火災は世界のエレクトロニクス市場に巨大なインパクトを与えた。コロナ禍も追い打ちをかけ、半導体の世界的な供給不足による大混乱が発生したことも記憶に新しい。だが、旭化成のオーディオチームの高音質デバイスへの熱意は強く、生産ラインを立て直し、新モデルの開発にも着手するなど、未来に向けた提案を着実に推し進めている。
そんな開発の最前線となるのが、今回新しく施工された試聴室である。入室して驚くのが、なんとフォステクス製ユニットを採用したバックロードホーン・スピーカーが置かれていることだ。
このスピーカー導入も、オーディオマイスターの佐藤友則さんのこだわりだという。「わたしたちの試聴室では、音楽を楽しむためではなく、製品開発に当たり細やかな音の違いをしっかり描き分けることができるスピーカーが必要です。そう考えたときに、バックロードホーンの自然な鳴り方、フルレンジユニットによる複雑なネットワークを持たないシンプルな構成が、とても重要だということに気がついたのです」
スピーカーユニットはフルレンジ「FE208SS-HP」、それにスーパートゥイーター「T96A-SA」を上部に装着している。木製のスピーカーボックスははフォステクスと共同で作り上げたもの。マルチウェイではなくフルレンジ1発のみという構成も、製品の特性を自然に表出してくれるという意味でとても重要なことなのだという。
実は旭化成エレクトロニクスでは現在新しいDAコンバーターの準備を進めており、今秋に正式発表になるそうだ。まだ詳細は秘密ということだが、特別に音を体験させてもらった。
ケンブリッジオーディオのネットワークプレーヤーの内蔵DACと、そこからデジタル出力してDAコンバーターの評価ボードに入力したものとの聴き比べを実質。詳細は非公開のために簡単なインプレッションになるが、奥行方向や上下方向の三次元的なステージングの再現性のたくみさが印象に残った。2本のスピーカーの間に、ここまでの豊かな音響空間が再現できるのはオーディオ趣味の醍醐味である、と改めて感激した。DAコンバーターの正式な発表も楽しみで、来年のミュンヘン・ハイエンドにも出展を計画しているという。
バックロードホーンから引き出される有機的な低域はとても印象的で、コントラバスなどの低音楽器のようなアコースティックなふくよかさを存分に味わわせてくれる。特別にスーパートゥイーターのありなしも比較させてもらったが、超高域を伸ばすというよりも、全体域にわたって音像が締まり、よりクリアな印象を与えてくれる。
今回は体験できなったが、1階のガレージではカーオーディオ向けの開発も行っているという。2Fフロアでは旭化成の得意とするセンサーの展示も行われていた。たとえばミリ波を使った非接触でのセンサー技術の事例も紹介されており、心臓の数センチ手前にセンサーを設置することで、心臓の音をモニタリングできるシステムや、ハンドルに装着して呼気の中のアルコール濃度を検出する技術などを展示。
また、生活空間に近い部屋も用意し、天井近くにセンサーを取り付けて、人やペットなどがどこにいるかをモニタリングできるシステムの例なども展示された。この技術は、エアコンで人がいるエリアを感知して重点的に冷やす、といった採用事例があるという。
最先端のテクノロジーをどう社会に実装していくか、旭化成の共創拠点からは、技術を活用してより豊かな未来を実現したい、という強い思いを感じられた。オーディオ向けデバイスと合わせて、今後の展開にも期待していきたい。
新しい拠点は「AKM Co-creation & Technologyセンター」と名付けられており、新横浜駅から徒歩5分程度。国内の開発・設計・研究開発チームがひとつのビルに集約されている。これまでは設計(厚木)、開発(有楽町)と離れていたチームを統合することで、よりスピーディな製品開発を実現するとともに、様々な共創がを生み出す場として構築されたものだという。
1Fはガレージで、最大4台の車が収容可能。近年旭化成エレクトロニクスが力を入れる車載向けデバイスの研究開発が行われている。
2Fはカンファレンスやセミナーなど多目的に使用できるフロアとなっている。取引先など社外の人もウェルカムなオープンスペースとなっており、CESで披露されたテクノロジーなど、旭化成エレクトロニクスの新しい提案を体験することができる。片隅にはちょっとした飲食スペースも設けられており、社内外の人々との交流やブレストも可能。旭化成の技術をどう社会実装していくかといった自由な議論を引き出しやすい環境として整備されている。
オーディオルームは、AKMサウンドの製品開発の肝として新たに設計された。部屋の設計には日本音響エンジニアリングも協力しているそうで、広さは30畳弱と以前の有楽町よりも多少広く、天井も奥に向かって低くなるよう傾斜がつけられている。アンクなどのルームチューニングアイテムも新たに導入し、製品開発のための「微妙な音の違い」をしっかり聴き分けられるように工夫されているという。
AKMの高音質ICは世界的にも評価が高く、コンシューマー向けからプロオーディオ機器まで幅広い採用実績を誇る。特にAK4491EQ/AK4499EXを筆頭とするDAコンバーターは、数多くのハイエンドオーディオメーカーに採用されている。
旭化成といえば、2020年に起きた宮崎県の半導体工場火災は世界のエレクトロニクス市場に巨大なインパクトを与えた。コロナ禍も追い打ちをかけ、半導体の世界的な供給不足による大混乱が発生したことも記憶に新しい。だが、旭化成のオーディオチームの高音質デバイスへの熱意は強く、生産ラインを立て直し、新モデルの開発にも着手するなど、未来に向けた提案を着実に推し進めている。
そんな開発の最前線となるのが、今回新しく施工された試聴室である。入室して驚くのが、なんとフォステクス製ユニットを採用したバックロードホーン・スピーカーが置かれていることだ。
このスピーカー導入も、オーディオマイスターの佐藤友則さんのこだわりだという。「わたしたちの試聴室では、音楽を楽しむためではなく、製品開発に当たり細やかな音の違いをしっかり描き分けることができるスピーカーが必要です。そう考えたときに、バックロードホーンの自然な鳴り方、フルレンジユニットによる複雑なネットワークを持たないシンプルな構成が、とても重要だということに気がついたのです」
スピーカーユニットはフルレンジ「FE208SS-HP」、それにスーパートゥイーター「T96A-SA」を上部に装着している。木製のスピーカーボックスははフォステクスと共同で作り上げたもの。マルチウェイではなくフルレンジ1発のみという構成も、製品の特性を自然に表出してくれるという意味でとても重要なことなのだという。
実は旭化成エレクトロニクスでは現在新しいDAコンバーターの準備を進めており、今秋に正式発表になるそうだ。まだ詳細は秘密ということだが、特別に音を体験させてもらった。
ケンブリッジオーディオのネットワークプレーヤーの内蔵DACと、そこからデジタル出力してDAコンバーターの評価ボードに入力したものとの聴き比べを実質。詳細は非公開のために簡単なインプレッションになるが、奥行方向や上下方向の三次元的なステージングの再現性のたくみさが印象に残った。2本のスピーカーの間に、ここまでの豊かな音響空間が再現できるのはオーディオ趣味の醍醐味である、と改めて感激した。DAコンバーターの正式な発表も楽しみで、来年のミュンヘン・ハイエンドにも出展を計画しているという。
バックロードホーンから引き出される有機的な低域はとても印象的で、コントラバスなどの低音楽器のようなアコースティックなふくよかさを存分に味わわせてくれる。特別にスーパートゥイーターのありなしも比較させてもらったが、超高域を伸ばすというよりも、全体域にわたって音像が締まり、よりクリアな印象を与えてくれる。
今回は体験できなったが、1階のガレージではカーオーディオ向けの開発も行っているという。2Fフロアでは旭化成の得意とするセンサーの展示も行われていた。たとえばミリ波を使った非接触でのセンサー技術の事例も紹介されており、心臓の数センチ手前にセンサーを設置することで、心臓の音をモニタリングできるシステムや、ハンドルに装着して呼気の中のアルコール濃度を検出する技術などを展示。
また、生活空間に近い部屋も用意し、天井近くにセンサーを取り付けて、人やペットなどがどこにいるかをモニタリングできるシステムの例なども展示された。この技術は、エアコンで人がいるエリアを感知して重点的に冷やす、といった採用事例があるという。
最先端のテクノロジーをどう社会に実装していくか、旭化成の共創拠点からは、技術を活用してより豊かな未来を実現したい、という強い思いを感じられた。オーディオ向けデバイスと合わせて、今後の展開にも期待していきたい。