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公開日 2007/06/14 16:52
遂にHD DVD陣営のシェアが大逆転!? − “新VARDIA”驚異のポテンシャルを東芝・片岡氏に聞く
いよいよ東芝からHD DVD-R/-R DLの録再に対応するレコーダー“VARDIAシリーズ”の「RD-A600」、「RD-A300」が登場した。他社の追随を許さない強力な編集機能に、キーワードによる自動録画など、従来機で培ったインターフェースをブラッシュアップしながら、操作性も大幅に向上した。従来の東芝機ファンから、ハイビジョン録画の入門者まで幅広くアピールする製品に仕上がっている。
この注目すべき製品の進化を詳しく探るべく、東芝の“RDシリーズ”、“VARDIAシリーズ”の開発者である(株)東芝 デジタルメディアネットワーク社 デジタルAV事業部 DAV商品企画 商品企画担当 グループ長 片岡秀夫氏に緊急インタビューを行った。
(インタビュー/鈴木桂水)
片岡氏は2001年の4月に発売された世界初のHDD&DVDレコーダー「RD-2000」以来、東芝のデジタルレコーダーの商品企画・開発を担当してきた人物だ。現在に至るまでレコーダーの遍歴を見続けてきた片岡氏にVARDIA「RD-A600/A300」の開発コンセプトを伺ってみた。
片岡氏:まずはじめにHD DVDという規格についてご説明させてください。HD DVDとBlu-ray Discの大きな違いは、HD DVDが現行DVDメディアの上位規格に位置していることです。同じ規格の延長線上にあるわけですから、一枚のHD DVDにデジタル放送をそのままの画質で録画するTSモード/DRモードなどと、SPモード/LPモードなどのDVD画質の映像を無変換のまま混在させて記録できます。Blu-ray Discの場合はそれができません。Blu-ray DiscにはBlu-ray Disc規格の映像しか記録できないので、DVD画質の映像を記録するには必ず再エンコードが発生します。HD DVD規格にはさらにメリットがあります。HD DVDは録画番組の記録方式を変更しないので、HD DVDに記録したDVD画質の映像をHDDにダビングした後でDVDメディアに保存できます。もちろん再エンコード無しの無劣化ダビングですので、録画した番組を扱う自由度はBlu-ray Discよりも遙かに高いと言えるでしょう。従来の規格を切り捨てずに対応した安心感は、使っていただくほどに感じていただけると思います。
Blu-ray Discの場合、HDDに保存したDVD画質(SPモード/LPモードなど)の映像をBDメディアに記録する場合、規格の違いにより再エンコードが発生する。再エンコードの発生はメーカーごとに違いがあり、例えばソニーのBDZ-V9/V7はHDDからBDへは再エンコード無しの高速ダビングが可能だが、HDDからDVDへは再エンコードが発生し等速ダビングになる。一方、パナソニックのDMR-BW200/BR100はHDDからBDへは再エンコードが発生し等倍速記録になり、HDDからDVDへは再エンコード無しの高速ダビングが可能だ。HDD DVDならメディアを選ばず、DVD画質の動画を高速ダビングできる。片岡氏はBlu-ray Discの規格は、DVD画質で録画した場合の取り扱いが不便であることを指摘している。ただDVD画質で録画した場合は価格の安いDVDメディアに記録すれば良いと思うのだが、将来、HD DVDメディアの価格が下がってきて、より普及を拡大した場合、録画規格を意識せずに1枚のディスクにデジタル放送(TSモード/DRモードなど)とDVD画質の番組を無変換のまま混在できるメリットがあるということだった。またHDD上に録画したDVD画質の番組を、無劣化で高速ダビングできるので、画質よりも多くのタイトルを1枚のHD DVDディスクに保存したい、というニーズにも応えられる。
次にRD-A600/A300の機能的な特徴について伺った。既報のとおり、この2機種は昨年発売されたハイビジョン対応デジタルレコーダーの普及モデルRD-S600/S300と比べると、あまり目新しい機能はついていないようにも見える。新機種が登場するごとに、目玉機能を搭載してきた東芝だけに、最新のフラッグシップモデルとしてはいささか寂しさも感じも受けるのだが。
片岡氏:HDD DVDの規格がDVD規格の上位フォーマットであるならば、HD DVDレコーダーも従来の操作性や使い勝手の良さを継承すべきだと考えました。RD-A600/A300はHD DVDレコーダーであると同時に、DVD対応“VARDIAシリーズ”のフラッグシップモデルでもあります。今回は録画機としての基礎体力を高めるため、ハードウェアを強化しています。VARDIAをHD DVDに対応させるために、必要な回路を集積して、よりコンパクトにしました。昨年発売した「RD-A1」と比べていただけると、スペックアップしている機能もありながら、従来レコーダーのサイズにまとめることができたことをおわかりいただけるはずです。
RD-A1(写真左)のサイズは457W×159H×408Dmm、重さ15.2kgだったが、RD-A600は430W×98H×376Dmm、重さ7.6kg(A300は6.8kg)までコンパクト化している。
片岡氏:処理速度を高速化した“VARDIAエンジン”を搭載することで、W録時に可能な同時操作の幅を大きく広げました。たとえばハイビジョン放送を2番組同時録画しながら、録画済みタイトルを編集することも可能です。従来機で表示が遅いとご指摘を受けることもあったユーザーインターフェースの表示速度も高速化できました。
<お詫びと訂正>初出時に上記表内にて「REとTS2録画時に“追っかけ再生(TS2)が○”」と表記しましたが、これは誤りでした。お詫びして訂正致します。(Phile-web編集部)
“RDシリーズ”と言えば番組表の表示や操作画面の表示が遅いなど、操作感はもっさりとしていた印象があった。しかし新たなVARDIAエンジンの搭載によりその処理速度は高速化している。今回は「RD-XD92」と「RD-A600」でインターフェースの表示速度を比較してみた。録画予約一覧画面から、はじめの画面を表示し終え、次の画面に切り替わるまでを比較計測した。
■RD-A600
RD-A600は2.8秒でスクロールを終えた
■RD-XD92
一方のRD-XD92ではスクロール時間が約5秒かかった
RD-A600/A300は基本的なスペックが向上しており、従来の東芝レコーダーユーザーからすると「待ってました!」と膝頭を叩きたくなるような玄人向けの進化を遂げている。筆者も従来の“RDシリーズ”の“もっさり”感を不満に感じていたので、かなり嬉しい進化と実感している。インタビュー後編では新しい“VARDIAシリーズ”がHD DVDレコーダーとしての魅力を最大限に発揮するであろう、機能の詳細をご紹介しよう。
鈴木桂水(Keisui Suzuki)
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、日経BP社デジタルARENAにて「使って元取れ! ケースイのAV機器<極限>酷使生活」、徳間書店「GoodsPress」など、AV機器を使いこなすコラムを執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら
この注目すべき製品の進化を詳しく探るべく、東芝の“RDシリーズ”、“VARDIAシリーズ”の開発者である(株)東芝 デジタルメディアネットワーク社 デジタルAV事業部 DAV商品企画 商品企画担当 グループ長 片岡秀夫氏に緊急インタビューを行った。
(インタビュー/鈴木桂水)
RD-A600 | RD-A300 | |
HDD容量 | 600GB | 300GB |
録画可能メディア | HD DVD-R/-R DL、DVD-R、DVD-R DL、DVD-RW、DVD-RAM | |
映像DAコンバータ | 12bit/148.5MHz | |
音声DAコンバータ | 192kHz/24bit | |
入出力端子 | HDMI出力×1、i.Link×2、USB×2、D映像出力×1、S映像(入力×3、出力×2)、光音声出力×1、入力3スルー | |
受信チャンネル | 地上デジタル・アナログ/BSデジタル | |
外形寸法 | 430W×98H×376Dmm | |
質量 | 7.6kg | 6.8kg |
片岡氏は2001年の4月に発売された世界初のHDD&DVDレコーダー「RD-2000」以来、東芝のデジタルレコーダーの商品企画・開発を担当してきた人物だ。現在に至るまでレコーダーの遍歴を見続けてきた片岡氏にVARDIA「RD-A600/A300」の開発コンセプトを伺ってみた。
片岡氏:まずはじめにHD DVDという規格についてご説明させてください。HD DVDとBlu-ray Discの大きな違いは、HD DVDが現行DVDメディアの上位規格に位置していることです。同じ規格の延長線上にあるわけですから、一枚のHD DVDにデジタル放送をそのままの画質で録画するTSモード/DRモードなどと、SPモード/LPモードなどのDVD画質の映像を無変換のまま混在させて記録できます。Blu-ray Discの場合はそれができません。Blu-ray DiscにはBlu-ray Disc規格の映像しか記録できないので、DVD画質の映像を記録するには必ず再エンコードが発生します。HD DVD規格にはさらにメリットがあります。HD DVDは録画番組の記録方式を変更しないので、HD DVDに記録したDVD画質の映像をHDDにダビングした後でDVDメディアに保存できます。もちろん再エンコード無しの無劣化ダビングですので、録画した番組を扱う自由度はBlu-ray Discよりも遙かに高いと言えるでしょう。従来の規格を切り捨てずに対応した安心感は、使っていただくほどに感じていただけると思います。
Blu-ray Discの場合、HDDに保存したDVD画質(SPモード/LPモードなど)の映像をBDメディアに記録する場合、規格の違いにより再エンコードが発生する。再エンコードの発生はメーカーごとに違いがあり、例えばソニーのBDZ-V9/V7はHDDからBDへは再エンコード無しの高速ダビングが可能だが、HDDからDVDへは再エンコードが発生し等速ダビングになる。一方、パナソニックのDMR-BW200/BR100はHDDからBDへは再エンコードが発生し等倍速記録になり、HDDからDVDへは再エンコード無しの高速ダビングが可能だ。HDD DVDならメディアを選ばず、DVD画質の動画を高速ダビングできる。片岡氏はBlu-ray Discの規格は、DVD画質で録画した場合の取り扱いが不便であることを指摘している。ただDVD画質で録画した場合は価格の安いDVDメディアに記録すれば良いと思うのだが、将来、HD DVDメディアの価格が下がってきて、より普及を拡大した場合、録画規格を意識せずに1枚のディスクにデジタル放送(TSモード/DRモードなど)とDVD画質の番組を無変換のまま混在できるメリットがあるということだった。またHDD上に録画したDVD画質の番組を、無劣化で高速ダビングできるので、画質よりも多くのタイトルを1枚のHD DVDディスクに保存したい、というニーズにも応えられる。
次にRD-A600/A300の機能的な特徴について伺った。既報のとおり、この2機種は昨年発売されたハイビジョン対応デジタルレコーダーの普及モデルRD-S600/S300と比べると、あまり目新しい機能はついていないようにも見える。新機種が登場するごとに、目玉機能を搭載してきた東芝だけに、最新のフラッグシップモデルとしてはいささか寂しさも感じも受けるのだが。
片岡氏:HDD DVDの規格がDVD規格の上位フォーマットであるならば、HD DVDレコーダーも従来の操作性や使い勝手の良さを継承すべきだと考えました。RD-A600/A300はHD DVDレコーダーであると同時に、DVD対応“VARDIAシリーズ”のフラッグシップモデルでもあります。今回は録画機としての基礎体力を高めるため、ハードウェアを強化しています。VARDIAをHD DVDに対応させるために、必要な回路を集積して、よりコンパクトにしました。昨年発売した「RD-A1」と比べていただけると、スペックアップしている機能もありながら、従来レコーダーのサイズにまとめることができたことをおわかりいただけるはずです。
RD-A1(写真左)のサイズは457W×159H×408Dmm、重さ15.2kgだったが、RD-A600は430W×98H×376Dmm、重さ7.6kg(A300は6.8kg)までコンパクト化している。
片岡氏:処理速度を高速化した“VARDIAエンジン”を搭載することで、W録時に可能な同時操作の幅を大きく広げました。たとえばハイビジョン放送を2番組同時録画しながら、録画済みタイトルを編集することも可能です。従来機で表示が遅いとご指摘を受けることもあったユーザーインターフェースの表示速度も高速化できました。
RD-A600/A300 | RD-S300/S300 | |||
同時録画の種類 ※HDDへの録画時 | TS1とTS2録画時 | REとTS2録画時 | TS1とTS2録画時 | VRとTS2録画時 |
DVD再生 | ○ | ○ | ○ | ○ |
HDD内 別タイトル再生 | ○ | ○ ※1 | × | × |
各種ナビ画面起動 | ○ | ○ | × | × |
録画予約 | ○ | ○ | × | × |
編集 (プレイリスト編集、チャプター編集) | ○ | ○ | × | × |
追っかけ再生 (TS1/RE or VR) | ○ | ○ | × | × |
追っかけ再生 | ○ | × | × | × |
高速そのままダビング | × | × | × | × |
画質指定(レート変換)ダビング | × | × | × | × |
HD DVD-R(HDVR)再生 | ○ | ○ ※1 | − | − |
HD DVD市販ソフト再生 | × | × | − | − |
※従来VRとよばれていたW録はRE(レコーダーの略)に呼称を変更 ※1 TSタイトル再生は不可 |
“RDシリーズ”と言えば番組表の表示や操作画面の表示が遅いなど、操作感はもっさりとしていた印象があった。しかし新たなVARDIAエンジンの搭載によりその処理速度は高速化している。今回は「RD-XD92」と「RD-A600」でインターフェースの表示速度を比較してみた。録画予約一覧画面から、はじめの画面を表示し終え、次の画面に切り替わるまでを比較計測した。
■RD-A600
RD-A600は2.8秒でスクロールを終えた
■RD-XD92
一方のRD-XD92ではスクロール時間が約5秒かかった
RD-A600/A300は基本的なスペックが向上しており、従来の東芝レコーダーユーザーからすると「待ってました!」と膝頭を叩きたくなるような玄人向けの進化を遂げている。筆者も従来の“RDシリーズ”の“もっさり”感を不満に感じていたので、かなり嬉しい進化と実感している。インタビュー後編では新しい“VARDIAシリーズ”がHD DVDレコーダーとしての魅力を最大限に発揮するであろう、機能の詳細をご紹介しよう。
鈴木桂水(Keisui Suzuki)
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、日経BP社デジタルARENAにて「使って元取れ! ケースイのAV機器<極限>酷使生活」、徳間書店「GoodsPress」など、AV機器を使いこなすコラムを執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら