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公開日 2007/07/31 20:58

シャープ、第10世代液晶パネル工場を堺に建設 − 周辺メーカー誘致で「21世紀型コンビナート」を展開

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シャープ(株)は、液晶パネルと太陽電池の新工場を、大阪府堺市に建設すると発表した。本日、大阪府内で記者発表会を開催し、同社取締役社長の片山幹雄氏が工場の概要を説明した。

シャープ(株)取締役社長の片山幹雄氏

堺新工場の模型。右にある甲子園球場と比べるとその大きさがわかる

同社の建設するのは、世界初となる第10世代の液晶パネル工場と太陽電池工場。いずれも2010年3月の稼働を目指す。敷地面積は最大約127万m2と、同社の三重・亀山工場の4倍程度になる見通し。

第10世代のマザーガラスはサイズが2,850×3,050mmで、一つのガラスから60型クラスが6枚、57V型が8枚、42V型が15枚取れる。現在同社の最新鋭設備である亀山第2工場は、第8世代のマザーガラスを使用しているが、第10世代のサイズはこの約1.6倍となり、コスト競争力が高まる。

第10世代マザーガラスと片山氏

亀山工場のガラスサイズとの比較

亀山工場と堺工場のパネル取りの分担

堺工場での実際の生産も、この3サイズを中心に行っていく。これまで同社は42V型パネルを生産していなかったが、工場の稼働後はAQUOSシリーズに42V型が加わることになる。

片山氏はさらに、「現在我々が展開している、倍速駆動対応のフルハイビジョンパネルに、いくつかのメーカーから引き合いがある」とし、「新工場で生産するパネルは複数のセットメーカーに供給する予定だ」と、パネルの外販を本格的に開始することを発表。外販は新工場の稼働直後から開始するという。外販先や外販の比率等は明らかにしていない。

ガラスの投入能力は、稼働当初は月36,000枚だが、順次投入能力を増強し、最終的には72,000枚まで引き上げる。液晶パネル工場への投資額は約3,800億円程度の見通し。現在、亀山第2工場では46V型/52V型などの生産を行っているが、これはそのまま継続するとのことで、パネルサイズによって工場を使い分ける方針だ。


薄膜太陽電池とTFT液晶は素材や基礎技術に多くの共通点を持つ
片山氏はまた、「亀山工場で培った垂直統合型をさらに深耕化する」とし、堺工場では二つの新たな取り組みを行うと説明。一つは、同じ敷地内に薄膜太陽電池の工場を展開することで、片山氏は「TFT液晶と薄膜太陽電池は同じ技術をベースにしており、ガスや水、ガラス関連などユーティリティー設備の共用が可能。これにより双方のコストダウンを図ることができる」と説明した。

薄膜太陽電池工場の生産規模は1,000MW/年程度で、25万世帯の電力使用量に相当。稼働すれば世界最大規模の工場となる。投資規模はまだ決定していないが、1,000億円以上となる見込みだ。

垂直統合型の深耕化の取り組みのもう一つは、液晶パネルの素材メーカーや製造装置メーカーを同じ敷地内に誘致し、ガスや電気などインフラの共用を図るほか、物流コストの削減、生産計画などオペレーションの一元化を行うことだ。すでに、マザーガラスメーカーとして米コーニング、カラーフィルターのメーカーとして大日本印刷などが進出することが決定しており、ガスや電気などインフラを共用化することで生産性の向上を図っていく。

工場には液晶パネル、太陽電池の各工場のほか、素材メーカーなども進出する

周辺メーカーも入居するコンビナート方式を採用するメリット

片山氏は、「亀山工場は、パネルからテレビセットまで、業界で唯一生産の垂直統合を実現したが、新工場ではこれをさらに推し進める。部材・装置メーカーと当社の技術者が互いに連携することで、知識やノウハウを融合し、新たな技術革新を図る」と説明。シャープと周辺メーカーを併せた相当資金額は1兆円規模になる見込みで、片山氏は今回の新工場を「21世紀型コンビナート」と表現。新しいスタイルの工場実現に強い期待を示した。

21世紀型コンビナートの特徴

液晶テレビの今後の世界需要予測

片山氏が今回、世界に先駆けて第10世代の液晶パネル工場建設を決定した背景には、世界的な薄型テレビ需要の高まりがある。片山氏は液晶テレビの今後の需要について、「07年に7,260万台だった需要は、09年には1億台、11年には1億2,000万台と高い伸びを示す」と予測。片山氏は、将来的に薄型テレビの9割を液晶が占めるとし、「薄型テレビ=液晶テレビという構図が鮮明になる」と述べた。さらに同氏は、40V型以上の比率についても言及し、「06年に台数比率で14%程度だったものが、11年には約40%程度になる」と予測。新工場建設により、将来のボリュームゾーンとなる大型パネル供給能力を高める必要性を強調した。

新工場の建設地に堺市を選んだ背景については、「前々から周辺メーカーも含めたコンビナートを作りたいと思っていたが、それには広大な土地が必要だった。また、我々の規模では、技術者やオペレーションを行う者の人数は限られている。我々の本拠地は大阪だし、研究開発施設は天理にある。これらと地理的に近いこともポイントになった」と説明。「大阪はインフラが調っており、労働力も豊富。今回工場を建設することで、微力ながら地域の産業に貢献できるのではないか」とした。

また、「AQUOSは“亀山産”を打ち出しているが、これは今後どうなるのか」との質問に対しては、「どうしましょうか」と苦笑しつつも、「皆様のおかげで、亀山ブランドはあまりに有名になった。皆様の意見を伺いながら継続して検討していきたい」とした。

巨額の投資を行うことについて、有機ELなど新しい技術の攻勢に対するリスクヘッジはどう考えているか、との質問には、「液晶技術が今のまま止まるつもりは全くない。これからも技術革新を行い、真の壁掛けテレビを目指していく」と回答。液晶テレビの将来的な優位性に自信を示した。

以下、会見で行われた主な質疑応答をご紹介する。

Q: 総額で1兆円規模の投資になるとのことだが、内訳はどうなっているのか。
A: 液晶パネル工場が3,800億円。関連工場は、詳細は詰まっていないが4〜5,000億円程度になる。これに太陽電池工場の分が加わり、1兆円程度になる見通しだ。

Q: パネル外販についてくわしく教えて欲しい。
A: これまでも外販については引き合いがあり、一部で行っているが、亀山工場では供給能力が足りず、自社ブランド分で使うので精一杯だった。新工場の稼働後は巨大な生産能力を持つので、要望があれば行っていく。一部のセットメーカーに戦略的に供給を行っていく。

Q: 新工場で生産する60/50インチクラスのパネルは本当に需要があるのか?
A: 現在の世界市場を見ると、32〜37V型がボリュームゾーンだが、2010年には42V型クラスが増えると見ている。2011年には50V型以上もマーケット全体の10%程度まで上がるだろう。

Q: マザーガラスの大型化だけでは投資効率はなかなか上がらないのでは。新たな生産プロセスの導入などは行うのか。
A: 投資規模をご覧頂ければおわかりと思うが、設備の更新等も相当な規模で行っていく。しかし、今回コスト削減に最も寄与するのは、コンビナート型工場によるものと考えている。

Q: 太陽電池の生産は、液晶パネルと同じ敷地で行うことでどの程度のコストダウンが実現するのか。
A: ガスや水、ガラス関連など。ユーティリティー設備の共用を行う。50%程度のコストダウンが可能なのではないか。

Q: マザーガラスは米コーニングの一社供給になるのか?
A: 旭硝子の工場が隣接地にあり、そこから供給を受ける。一社だけということはない。

Q: カラーフィルターはインクジェット方式のみになるのか?
A: インクジェット方式は導入するが、新しい方式なども様々なメーカーで研究されている。これらも検討していきたい。

Q: 第6/第7世代のパネル生産設備を中国の某メーカーに売るという話を聞いているが、これは事実か?
A: あり得ない。

Q: 3,800億円の投資はどれくらいの期間で回収するのか?
A: 数年以内に回収できると見込んでいる。

(Phile-web編集部)

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