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公開日 2007/10/04 10:23

ソニーBDレコーダー開発陣を緊急取材<後編> − 気になる画質・音質について直撃!

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9月12日に発表されたソニーのBDレコーダー2007年冬モデル。BDレコーダーとして注目すべきフィーチャーが集結したことはもちろんのこと、AVファンにとってはクオリティに力を入れた最新鋭のBDプレーヤーとしても気になる存在だろう。

前編に引き続き、後編となる今回は、開発チームへのインタビューを通じて特に画質・音質への取り組みを紹介していこう。

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■BRAVIAとの連携も視野に入れて画作りが行われた

−−BDを再生できる機器は、現在までにいくつも製品が発売されていますが、画質面でのアドバンテージはどのようなところにあるのでしょうか?


画質・音質を高めた最上位機の「BDZ-X90」
太田氏:システムはレコーダーとプレーヤーで違います。1つ目は、最上位のBDZ-X90だけになりますが、映像回路にDRCを使えるということが大きいですね。

また、今までBDZ-V9で使っていた適応型ノイズリダクションの「D-MatrixHD」が、「ピュアイメージリアライザー」というものに進化しました。前回の基本機能は踏襲しつつ、今回はそれに加えてMPEG2、AVC、VC-1といったソースのコーデックの種類や、あるいは放送であるか、元のサイズがSDかHDか、といったパラメーターを加えて最適なNRのチューニングをしています。

−−BD-ROMの映画作品については意図的にフィルムグレインを載せている作品もありますし、元の荒れ具合を残しているケースもあるようですが、そういった作品への対応はいかがでしょうか。

太田氏:最近はBDーROMになると非常にクリアな映像が多くなってきて、そういうときにはほとんどノイズリダクションをかけていません。MPEG4 AVCのエンコーダーは標準でデブロッキングフィルタが備わっているので、自動で検出してかけ具合を自動で調整します。そういった働きを自動で行えることがピュアイメージリアライザーの強みですね。

−−それ以外にも画質を向上させる機能はありますでしょうか?


ソニー(株) ビデオ事業本部 ビデオ事業部門 AVシステム設計部1課 統括課長 太田正志氏
太田氏:今回はBRAVIAとのCECでの機器コントロール連携をしていますが、画質機能でも連携をしています。ブラビアのリモコンでシアターモードのボタンを押すとブラビアがシアターモードになるのですが、レコーダー側もそれに連動して基本忠実に最適に出すというモードに自動的に切り替わります。これはHDMI経由でHDMIコントロールのCEC標準にはないソニーのオリジナルのプロトコルを使って切り替える機能を搭載しています。

−−テレビ側の設定からレコーダーの画質を最適化する働きというのは他社にない取り組みですね。他に工夫したことはありますでしょうか。

太田氏:同様の機能として、静止画向けのBRAVIAフォトプレミアムという機能を搭載しています。これもBRAVIAと連動していて、HDMIで繋いだ状態でBDレコーダーの方が静止画モードに入ったときに、自動的にプレミアフォトモードに入るように制御を行っています。そうするとソニーの提供する最適な静止画をワンタッチでご覧いただけますということです。実際に静止画も解像感の違いがありまして、相当にキレイな映像を出せるようになりましたね。

−−三管プロジェクターのように、アナログで接続するケースについてはいかがでしょうか。

太田氏:アナログに関してもV9相当に作り込んでいます。特に最上位のBDZ-X90はコストもかけていて、コンポーネント出力も搭載しており、画質面ではHDMI相当を実現できています。映像DACはHDで2倍のオーバーサンプリングとなる148Hz/12bitのもので、ローパスもあまり急峻なものではなく、緩やかに落とすことで、高域の位相特性をかなり保つことができ、リンギングなどを起こさないようにしています。

■AVアンプのTA-DA5300ESとの連携で音作りされたロスレスオーディオ

−−音質についてはどのような方針で設計をされているのでしょうか?

桑原氏:やはり今年のテーマはロスレスで、プレーヤーに負けないくらいの音を目指してチューニングしています。ビットストリーム入力できるAVアンプが登場しましたし、BDに入っている次世代オーディオのロスレス音声は情報量が多く、音質が良いので、それをいかに正確に出すかが今回のテーマでした。これは送り出しも受け側もあるソニーの強みと言えます。先ほどの、BRAVIAと連携する画作りと同じで、音についてもアンプと一緒に連携しながら、「ロスレスを出す」だけではなく、「ロスレスの音」までもチューニングしています。

−−ビットストリーム出力では、どのような形で音質向上を図ったのでしょうか。


ソニー(株) ビデオ事業本部 ビデオ事業部門 2部 1課 桑原邦和氏
桑原氏:まず情報を取り込むBDドライブが重要になります。これはソニー内部製ということもあって、音質対策を十分に盛り込むことができました。例えばモーターに関してもトルクアップして強化したり、チャッキング部も振動に影響しないようにしたりと、PS3で評価の高かった部分のノウハウから、更に改善を行っています。また、我々にはDVDプレーヤーやSACDのノウハウがあるので、それも盛り込んでいます。

−−ビットストリームの音の作りはどのような形で調整をしたのでしょうか。

桑原氏:AVアンプのTA-DA5300ESのアンプのサンプルと組み合わせ、様々な作り込みをしています。音声を出力するHDMIの回路にもこだわっていまして、コンデンサーを通常使われるものから変更しています。もちろんパーツメーカーさん推奨の基本的なコンデンサーを使っても基本的な電気特性は保証できるのですが、変更することで電源のリップルが抑えられ、ジッターが改善され音が良くなります。

−−基板を見てみると、基板内にリード線が引いてあるのが珍しいですね。

桑原氏:これも音を良くするための工夫で、リード線を引いてグラウンドを取るような措置をしています。実際の音決めではTA-DA5300ESと組み合わせでチューニングをしたことで、音を聴きながら、我々が直すとTA-DA5300ES側に直すべき点が見つかったり、TA-DA5300ESを直すとまた我々のレコーダーが悪いということで手を加えて、またこちらが良くなると…と言う具合で進めてきました。今年は本当に楽しい苦労がありましたね。

−−レコーダー内部でデコードして出力する方法と比べて、音質はどう変わるでしょうか?

桑原氏:デコードする部分もしっかりと作り込まないと、音は悪くなります。音を良くするコンデンサーを入れるとスペース的にはかなり厳しくなってしまうので、音質は明らかにアンプでデコードした方が良くなるでしょうね。プレーヤー側のパワーは映像系に入れて、音はロスなくビットストリームで転送し、TA-DA5300ESの「低ジッタ型・ロスレスデコードエンジン」で磨いてもらう方が、トータルではいちばん良い音、良い映像で楽しめるものとして設計しました。

−−アナログ出力についてはいかがでしょうか?

桑原氏:アナログはさすがに単体のCDプレーヤーとまではいきませんが、レコーダーとしてはかなりこだわっています。例えば音質コンデンサーもソニーのESシリーズのプレーヤーと同じ、ハイグレードなものを使っています。同軸デジタル出力についても、ベースとなるデジタル伝送系はHDMIで強化してデジタル的なジッターを押さえているので、先ほど申し上げた対策でかなり良くなっています。また、同軸の出力端子は真鍮削り出し端子にすることでジャックの強度を高めています。

プレーヤーの設計陣からは、「BDレコーダーにはHDDがあって大変だろう」と言われますが、HDDのノイズはフィルターで抑えたり、振動をダンプする設計にしたことでかなり封じ込めることができます。逆に、HDDは重量を稼ぐために使えるため、この部分は音質面での強みになります。

−−なるほど。音質のクオリティを重視するホームシアターファンにとっても納得の取り組みが行われているのですね。


インタビューを通じて明らかになった、ソニーBDレコーダーのクオリティ面の強みは、画質はBRAVIAとの連携、音質はTD-DA5300ESと社内のコンポーネントを使って、単純に“機能を搭載した”水準を超えたチューニングが行われていることだ。開発陣が画質・音質のレファレンスとして用いている機器と同じ組み合わせなら、製品の持つポテンシャルを限界まで引き出すことができるはずだ。

ソニーのBDレコーダー2007年秋の新ラインナップ「BDZ-X90」 「BDZ-L70」「BDZ-T70」「BDZ-T50」は11月8日に満を持して登場する。新世代のクオリティに期待して発売を待つこととしよう。

(インタビュー・構成:折原一也)

折原一也 プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。

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