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公開日 2009/04/21 19:19
進まぬデジタル放送移行、総務省と国民の意識のズレ − アナログ停波までに何が必要か
ケースイが覗いたNHKシンポジウム:「岐路に立つテレビ」
去る2009年4月16日に、NHK放送文化研究所主催で「春のシンポジウム」が開かれた。2011年のアナログ停波を2年後に控え、急速に変革しなければならないテレビの今後についてパネルディスカッションが行われた。
内容は三部構成で、テレビの広告収入や今後の番組制作などを考える「(1)岐路に立つ民放とNHK」、遅々として進まない視聴者のデジタル放送への準備と今後の課題を模索する「(2)アナログ停波への課題」、テレビが地域放送で担う役割と現状を考える「(3)テレビに求められるもの〜地域社会貢献への道〜」だった。
シンポジウムのパネリストは堺屋太一氏(作家・経済評論家)、竹中平蔵氏(慶應義塾大学教授)、樋泉 実氏(北海道テレビ専務取締役)、前川英樹氏(TBSメディア総合研究所取締役相談役)、山川鉄郎氏(総務省情報流通行政局長)、金田 新氏(NHK専務理事)。司会進行はNHK放送文化研究所主任研究員・解説委員室解説委員の鈴木祐司氏だ。
筆者は1人のテレビ好き、いや録画マニアとして、最近のテレビ番組に保存したいと思わせる番組が激減していると感じている。またアナログ放送からデジタル放送への移行についても不安を感じている。これらに最近のテレビにまつわる“モヤモヤ”が、シンポジウムで晴れるのではないかとと考え聴講した。今回は3つのテーマのうち(1)と(2)についてリポートしたいと思う。
■「岐路に立つ民放とNHK」
− 広告収入は減少していてもデジタル化設備投資が必要という苦しさ
− 求められるのは何より「魅力的なコンテンツ」
NHK放送文化研究所(通称:文研)とは「豊かな放送文化を創造する」ために、日本人の番組への意識、放送番組や放送用語の研究、国内外のメディアの比較など行っている機関。毎年5月頃にテレビの最新技術を公開するNHK放送技術研究所(通称:技研)がテレビのハードウェアの進化を担うなら、文研は放送番組の内容やテレビを中心とした新しい生活スタイルの未来など、ソフトウェアの進歩を分析する機関と言えそうだ。
「岐路に立つ民放とNHK」では、文研の小川浩司氏から世論調査、業界アンケート、ネット調査による調査報告があった。
調査報告によると民放各社の'08年の営業利益見込は'06年、'07年に比べて大幅にダウンし、放送局によってはマイナスになる局も出てくる。これは小川氏によれば「不況だけでなく、テレビを取り巻く複合的な理由から民放の広告収入が減っていると考えられる」のだという。
広告主(スポンサー)を対象にした調査を見ると、インターネットや携帯電話コンテンツへの広告は5割の会社が増やすと回答した一方で、6割がテレビ広告を減らしている。テレビ広告を減らした理由の多くは「経営悪化」、それに続いて「広告費が高いから」で、そのほか「出稿したい番組が減った」など内容の変化に対して出稿を見直す広告主も増えている。
そのほかの回答である「他の広告手法の充実」と「広告効果が測定しづらい」という回答は、インターネットと比較した結果とも考えられる。
これらの調査結果についてパネリストから活発な意見がでた。まず放送業者の立場としてTBSメディア総合研究所の前川氏は「民放各社の収益が伸び悩むのは景気の循環が悪いのが原因だと感じている。ネットやモバイル機器利用者が伸びるなど、構造的な問題もあるが、直接的な影響は景気の悪化だ。しかし認知力や告知力ではどのメディアよりもテレビが強いと思う。対策としては、放送業者自身がテレビの特性を分析して、そのメリットをこれまで以上に広告主にアピールしなければならない」とコメント。
ローカル局の立場からは、北海道テレビの樋泉氏が「テレビ局といっても、出口はテレビだけに限らない。コンテンツの価値の高めれば結果はついてくる。よい番組を作るという原点は変わらない」と語った。
竹中氏は「テレビ局はこれまでの枠組みを外すことでいろんなことができる。とくにこれまで培ったコンテンツ制作力をコアコンピタンスにして魅力のある番組を作るべきだ」と発言。
堺屋氏は「現在のテレビ業界は、自分が10年前に経済企画庁長官をやっていたときの銀行に似ている。構造的な問題を解決して新しい取り組みに集中すべきだ。日本ではペイテレビが流行っていないことが問題だと感じている。アメリカならボクシングのビッグタイトルを見るのに50ドルぐらいがかかるが人気がある。魅力的なコンテンツには視聴者が直接お金を払ってみるようになれば、超高級番組が作れ、広告だけに頼らなくて済むはずだ」と、ここでもコンテンツのクオリティーアップが取り上げられた。
このほかに制作費やテレビ局の人権費削減、物販や不動産といった放送外収入などの話題が盛り込まれた。
現在、テレビ局はデジタル化に伴う設備投資が必要だが、一方で不況による広告収入の減少が足かせになる。さらに低予算での番組作りにより、魅力的なコンテンツも減っている。そんな状況で、各パネラーから「コンテンツ力」が一様に訴えられたのは、じつに納得できる話だ。やはり面白い番組があってこそのテレビということだろう。今後、魅力的なコンテンツが放送されることに期待したい。
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※シンポジウム内で資料にされた調査の詳細※
世論調査:2009年1月実施。全国の満20歳以上の男女2000人による無作為抽出・調査員による個別面談聴取
業界アンケート:2009年3月実施。地上波・BS・CATV・広告主・自治体・アンテナ工事事業者など9業種
ネット調査:2009年3月実施。強調利用者の地デジ対応調査、大都市圏・他市町村別居住者の地域放送視聴調査
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内容は三部構成で、テレビの広告収入や今後の番組制作などを考える「(1)岐路に立つ民放とNHK」、遅々として進まない視聴者のデジタル放送への準備と今後の課題を模索する「(2)アナログ停波への課題」、テレビが地域放送で担う役割と現状を考える「(3)テレビに求められるもの〜地域社会貢献への道〜」だった。
シンポジウムのパネリストは堺屋太一氏(作家・経済評論家)、竹中平蔵氏(慶應義塾大学教授)、樋泉 実氏(北海道テレビ専務取締役)、前川英樹氏(TBSメディア総合研究所取締役相談役)、山川鉄郎氏(総務省情報流通行政局長)、金田 新氏(NHK専務理事)。司会進行はNHK放送文化研究所主任研究員・解説委員室解説委員の鈴木祐司氏だ。
筆者は1人のテレビ好き、いや録画マニアとして、最近のテレビ番組に保存したいと思わせる番組が激減していると感じている。またアナログ放送からデジタル放送への移行についても不安を感じている。これらに最近のテレビにまつわる“モヤモヤ”が、シンポジウムで晴れるのではないかとと考え聴講した。今回は3つのテーマのうち(1)と(2)についてリポートしたいと思う。
■「岐路に立つ民放とNHK」
− 広告収入は減少していてもデジタル化設備投資が必要という苦しさ
− 求められるのは何より「魅力的なコンテンツ」
NHK放送文化研究所(通称:文研)とは「豊かな放送文化を創造する」ために、日本人の番組への意識、放送番組や放送用語の研究、国内外のメディアの比較など行っている機関。毎年5月頃にテレビの最新技術を公開するNHK放送技術研究所(通称:技研)がテレビのハードウェアの進化を担うなら、文研は放送番組の内容やテレビを中心とした新しい生活スタイルの未来など、ソフトウェアの進歩を分析する機関と言えそうだ。
「岐路に立つ民放とNHK」では、文研の小川浩司氏から世論調査、業界アンケート、ネット調査による調査報告があった。
調査報告によると民放各社の'08年の営業利益見込は'06年、'07年に比べて大幅にダウンし、放送局によってはマイナスになる局も出てくる。これは小川氏によれば「不況だけでなく、テレビを取り巻く複合的な理由から民放の広告収入が減っていると考えられる」のだという。
広告主(スポンサー)を対象にした調査を見ると、インターネットや携帯電話コンテンツへの広告は5割の会社が増やすと回答した一方で、6割がテレビ広告を減らしている。テレビ広告を減らした理由の多くは「経営悪化」、それに続いて「広告費が高いから」で、そのほか「出稿したい番組が減った」など内容の変化に対して出稿を見直す広告主も増えている。
そのほかの回答である「他の広告手法の充実」と「広告効果が測定しづらい」という回答は、インターネットと比較した結果とも考えられる。
これらの調査結果についてパネリストから活発な意見がでた。まず放送業者の立場としてTBSメディア総合研究所の前川氏は「民放各社の収益が伸び悩むのは景気の循環が悪いのが原因だと感じている。ネットやモバイル機器利用者が伸びるなど、構造的な問題もあるが、直接的な影響は景気の悪化だ。しかし認知力や告知力ではどのメディアよりもテレビが強いと思う。対策としては、放送業者自身がテレビの特性を分析して、そのメリットをこれまで以上に広告主にアピールしなければならない」とコメント。
ローカル局の立場からは、北海道テレビの樋泉氏が「テレビ局といっても、出口はテレビだけに限らない。コンテンツの価値の高めれば結果はついてくる。よい番組を作るという原点は変わらない」と語った。
竹中氏は「テレビ局はこれまでの枠組みを外すことでいろんなことができる。とくにこれまで培ったコンテンツ制作力をコアコンピタンスにして魅力のある番組を作るべきだ」と発言。
堺屋氏は「現在のテレビ業界は、自分が10年前に経済企画庁長官をやっていたときの銀行に似ている。構造的な問題を解決して新しい取り組みに集中すべきだ。日本ではペイテレビが流行っていないことが問題だと感じている。アメリカならボクシングのビッグタイトルを見るのに50ドルぐらいがかかるが人気がある。魅力的なコンテンツには視聴者が直接お金を払ってみるようになれば、超高級番組が作れ、広告だけに頼らなくて済むはずだ」と、ここでもコンテンツのクオリティーアップが取り上げられた。
このほかに制作費やテレビ局の人権費削減、物販や不動産といった放送外収入などの話題が盛り込まれた。
現在、テレビ局はデジタル化に伴う設備投資が必要だが、一方で不況による広告収入の減少が足かせになる。さらに低予算での番組作りにより、魅力的なコンテンツも減っている。そんな状況で、各パネラーから「コンテンツ力」が一様に訴えられたのは、じつに納得できる話だ。やはり面白い番組があってこそのテレビということだろう。今後、魅力的なコンテンツが放送されることに期待したい。
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※シンポジウム内で資料にされた調査の詳細※
世論調査:2009年1月実施。全国の満20歳以上の男女2000人による無作為抽出・調査員による個別面談聴取
業界アンケート:2009年3月実施。地上波・BS・CATV・広告主・自治体・アンテナ工事事業者など9業種
ネット調査:2009年3月実施。強調利用者の地デジ対応調査、大都市圏・他市町村別居住者の地域放送視聴調査
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