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公開日 2015/10/26 13:55
「HDR」体感イベントレポート − “REGZA”Z20Xと“DIGA”DMR-UBZ1が登場、HDR/SDR比較デモも
鴻池賢三氏が講師のセミナーイベント
10月16日から18日まで開催された”音展”「オーディオ&ホームシアター展 2015」にて、オーディオ・ビジュアル評論家・鴻池賢三氏らによるセミナー「HDR最新事情 〜HDRの解説&デモンストレーション〜」が開催された。
HDR(High Dynamic Range:ハイダイナミックレンジ)とは、明暗差を拡大させた映像や技術の総称だ。従来制限されていた明暗差を大幅に広げることで、肉眼での見た目に近い映像表現が可能となり、立体感や精細感の向上に寄与する。HDRは、Ultra HD Blu-ray規格の大きなトピックでもあり、また次世代の放送・配信への展開も予定されているなど、フルHDから4K/8Kへの移行を後押しする強力なトリガーとして期待されている。
会場には、HDRに対応した東芝の最新4Kテレビ「65Z20X」のほか、パナソニックのUltra HD Blu-ray再生対応BDレコーダー「DMR-UBZ1」と4Kテレビ「TH-60CX800N」が用意され、各社のデモ素材、及びキュー・テック制作「4K主観評価用動画像集 QT-4000」のHDR映像が上映された。
セミナーの第一部では、鴻池氏が映像技術の変遷とHDRの基礎知識と魅力、そして様々なHDR方式をレクチャーした。
「解像度や色だけでなく、画質を左右する重要な要素の1つがコントラストだ。夜景や星空はその好例。多くの人々がそれらを美しく感じるのは、星や外灯の輝きと同時に暗闇があり、高いコントラストを視覚できるから。HDRの美しさは、視聴者の心に訴える魔力がある。これからやってくるであろうHDRという映像のムーブメント、そしていま我々の目の前にあるHDRコンテンツとHDRに対応したディスプレイの組み合わせは、映像の歴史の中でコントラストの大幅な改善を実現させた“革新的な映像体験”の始まりを告げるものだ」とHDRが持つ魅力と重要性を語った。
■東芝“REGZA”ZX20が初披露。HDR復元デモも
続いて東芝の最新4Kテレビ「Z20Xシリーズ」の開発者である東芝デジタルメディアエンジニアリングの住吉肇氏が登壇。Z20Xの画質を支えるパネル・バックライト制御技術と映像処理エンジン、そして各種映像機能を紹介した後、「65Z20X」を2台使用し、従来の映像(SDR)とHDR映像のシュートアウトを実施したなおZ20Xはイベント開催日の3日前に発表されたばかりで、一般への披露目は本イベントが初だった。
2台の65Z20Xの映像設定を揃えた状態で、片側の65Z20Xには4K/Rec.709/SDRグレーディングの映像信号、そしてもう片側の65Z20Xには4K/BT.2020/HDRグレーディングの映像信号を入力(データは30p/12bit 4:2:2)。キヤノンの業務用4KカメラC500などを使って撮影されたという4K/HDRグレーディングのデモコンテンツは、ピーク輝度1000nit超えを実現する65Z20Xのバックライトパワーと相まって、圧倒的なリアリティを感じさせてくれる。
「イタリアの海を撮影したものだが、空や海の色はもちろんのこと、HDRとSDRとでは波の階調性や透明感がまるで違う見え方になる。HDRのコンテンツは明部の階調性が豊かになるだけで無く、全体の立体感や奥行き感、そして解像感まで変えてしまう」(住吉氏)
そして登壇の最後には、Z20Xの機能である「アドバンスドHDR復元プロ」を紹介。これは東芝オリジナルの変換機能であり、既存のBDソフトや放送番組などといった“非HDR映像”をHDR化するものだ。4K/SDR信号が入力された65Z20Xを「アドバンスドHDR復元プロ オン」にすると、単調に見えていた海のシークエンスが一変。リアルの4K/HDR信号には敵わないものの、白飛びしていた青い空や水面の輝き、波の階調性が見事に復元されていた。加えて独自の色復元技術がDCI領域まで拡張、HDR素材同等の色を復元していた。
「Z20Xは我々の自信作であり、アドバンスドHDR復元プロは是非試してみて欲しい機能の1つだ。HDRのコンテンツはまだ少なく、画作りも手探りの段階にある。会場のセットも実はこれから最終的に追い込みをしなければならない。HDRの魅力は非常に大きいが、我々技術者は今後多くのノウハウを積む必要があるとも考えている。これからも4Kレグザに期待して欲しい」と語った。
■キュー・テックの業務用映像集「QT-4000」のHDR版も特別上映
東芝のHDR素材上映に続き、大手ポストプロダクションであるキュー・テックが制作した「業務用4K主観評価用動画像集「QT-4000」が65Z20Xで上映された。本作はソニーの業務用カメラF65で撮影されたものであり、非圧縮のDPX(12bit/RGB 4:4:4)、HDRグレーディング・BT.2020仕様。本イベントでの上映用に編集・グレーディングされた7分半の映像クリップが用意された。
パナソニックハリウッド研究所(PHL)のシニアコンプレッショニストとして第一線で活躍していた秋山真氏がゲストとして登壇。「QT-4000のコンセプトは“徹底したリアル志向”。一見すると地味に見えるかもしれないが、正しい映像が出ているか否かを主観評価で判断するための数少ないレファレンス素材だ。本作は運良く撮影からグレーディングまで立ち会うことができたが、初めてHDR版を見た時は本当に衝撃的で、私にとってはこれが本当の3D映像だと思った。QT-4000は液晶泣かせなシーンが多分に含まれているにも関わらず、Z20Xは優秀で、暗部の階調や締まり、立体的な描写が実現できている。QT-4000のようなレファレンスソフトがUltra HD Blu-rayソフトで早期に発売されることを期待したい」と語った。
■世界初のUHD-BD再生対応機「DMR-UBZ1」も登場
HDR体感イベントのトリには、Ultra HD Blu-ray再生対応BDレコーダー「DMR-UBZ1」の開発者である甲野和彦氏が登壇。まず始めにUltra HD Blu-ray規格の概要とUBZ1の高画質技術・高音質技術、そして各種機能を紹介した後、同社4Kテレビ「TH-60CX800N」を組み合わせUltra HD Blu-rayの再生デモを行った。なおUBZ1の実機を使った、一般への再生デモ披露も国内初となった。
再生デモに使われたのは、パナソニックの業務用4KカメラVARICAMで撮影された「岐阜の匠」という作品。デモディスクに記録されているのは、HEVC圧縮された4K/60p/BT.2020/HDRグレーディング素材で、平均ビットレートは70Mbps(VBR)。甲野氏によれば、HEVC 70Mbpsであれば、非圧縮の素材と見比べても遜色は無いという。
甲野氏は「冒頭のシーンでいえば、色が抜けてしまいがちな夕焼けの空も、階調が非常に豊富で、茜色に染まる様子までしっかり表現できるのもHDRの魅力の1つ。金箔を混ぜた染料で提灯の文様を描くシーンも、従来のSDRでは表現が難しかった金色の輝きが再現できている」と語った。
加えて「Ultra HD Blu-rayはまさに“超”高画質のフォーマット。だからこそ、UBZ1は今までに無い、最高のオーディオ・ビジュアル体験を味わってもらうために様々な技術を結集させた。中でも、高精度のマルチタップフィルタ処理である4Kリアルクロマプロセッサplusは画質のキモと考える。我々はこれまでも、色信号の補間技術がデジタル映像を再生する時の画質を左右する最も重要なポイントであると考え、色信号の補間・復元技術に力を入れてきた。HDR素材の場合、信号の振幅が非常に大きく、フィルタリング特性のような過渡応答の影響が如実に出る。HDR時代も我々のこれまでのノウハウがUltra HD Blu-rayの高画質再生に寄与できると考えている。今後発売されるUltra HD Blu-rayタイトルを是非UBZ1で楽しんで欲しい」と話した。
HDR(High Dynamic Range:ハイダイナミックレンジ)とは、明暗差を拡大させた映像や技術の総称だ。従来制限されていた明暗差を大幅に広げることで、肉眼での見た目に近い映像表現が可能となり、立体感や精細感の向上に寄与する。HDRは、Ultra HD Blu-ray規格の大きなトピックでもあり、また次世代の放送・配信への展開も予定されているなど、フルHDから4K/8Kへの移行を後押しする強力なトリガーとして期待されている。
会場には、HDRに対応した東芝の最新4Kテレビ「65Z20X」のほか、パナソニックのUltra HD Blu-ray再生対応BDレコーダー「DMR-UBZ1」と4Kテレビ「TH-60CX800N」が用意され、各社のデモ素材、及びキュー・テック制作「4K主観評価用動画像集 QT-4000」のHDR映像が上映された。
セミナーの第一部では、鴻池氏が映像技術の変遷とHDRの基礎知識と魅力、そして様々なHDR方式をレクチャーした。
「解像度や色だけでなく、画質を左右する重要な要素の1つがコントラストだ。夜景や星空はその好例。多くの人々がそれらを美しく感じるのは、星や外灯の輝きと同時に暗闇があり、高いコントラストを視覚できるから。HDRの美しさは、視聴者の心に訴える魔力がある。これからやってくるであろうHDRという映像のムーブメント、そしていま我々の目の前にあるHDRコンテンツとHDRに対応したディスプレイの組み合わせは、映像の歴史の中でコントラストの大幅な改善を実現させた“革新的な映像体験”の始まりを告げるものだ」とHDRが持つ魅力と重要性を語った。
■東芝“REGZA”ZX20が初披露。HDR復元デモも
続いて東芝の最新4Kテレビ「Z20Xシリーズ」の開発者である東芝デジタルメディアエンジニアリングの住吉肇氏が登壇。Z20Xの画質を支えるパネル・バックライト制御技術と映像処理エンジン、そして各種映像機能を紹介した後、「65Z20X」を2台使用し、従来の映像(SDR)とHDR映像のシュートアウトを実施したなおZ20Xはイベント開催日の3日前に発表されたばかりで、一般への披露目は本イベントが初だった。
2台の65Z20Xの映像設定を揃えた状態で、片側の65Z20Xには4K/Rec.709/SDRグレーディングの映像信号、そしてもう片側の65Z20Xには4K/BT.2020/HDRグレーディングの映像信号を入力(データは30p/12bit 4:2:2)。キヤノンの業務用4KカメラC500などを使って撮影されたという4K/HDRグレーディングのデモコンテンツは、ピーク輝度1000nit超えを実現する65Z20Xのバックライトパワーと相まって、圧倒的なリアリティを感じさせてくれる。
「イタリアの海を撮影したものだが、空や海の色はもちろんのこと、HDRとSDRとでは波の階調性や透明感がまるで違う見え方になる。HDRのコンテンツは明部の階調性が豊かになるだけで無く、全体の立体感や奥行き感、そして解像感まで変えてしまう」(住吉氏)
そして登壇の最後には、Z20Xの機能である「アドバンスドHDR復元プロ」を紹介。これは東芝オリジナルの変換機能であり、既存のBDソフトや放送番組などといった“非HDR映像”をHDR化するものだ。4K/SDR信号が入力された65Z20Xを「アドバンスドHDR復元プロ オン」にすると、単調に見えていた海のシークエンスが一変。リアルの4K/HDR信号には敵わないものの、白飛びしていた青い空や水面の輝き、波の階調性が見事に復元されていた。加えて独自の色復元技術がDCI領域まで拡張、HDR素材同等の色を復元していた。
「Z20Xは我々の自信作であり、アドバンスドHDR復元プロは是非試してみて欲しい機能の1つだ。HDRのコンテンツはまだ少なく、画作りも手探りの段階にある。会場のセットも実はこれから最終的に追い込みをしなければならない。HDRの魅力は非常に大きいが、我々技術者は今後多くのノウハウを積む必要があるとも考えている。これからも4Kレグザに期待して欲しい」と語った。
■キュー・テックの業務用映像集「QT-4000」のHDR版も特別上映
東芝のHDR素材上映に続き、大手ポストプロダクションであるキュー・テックが制作した「業務用4K主観評価用動画像集「QT-4000」が65Z20Xで上映された。本作はソニーの業務用カメラF65で撮影されたものであり、非圧縮のDPX(12bit/RGB 4:4:4)、HDRグレーディング・BT.2020仕様。本イベントでの上映用に編集・グレーディングされた7分半の映像クリップが用意された。
パナソニックハリウッド研究所(PHL)のシニアコンプレッショニストとして第一線で活躍していた秋山真氏がゲストとして登壇。「QT-4000のコンセプトは“徹底したリアル志向”。一見すると地味に見えるかもしれないが、正しい映像が出ているか否かを主観評価で判断するための数少ないレファレンス素材だ。本作は運良く撮影からグレーディングまで立ち会うことができたが、初めてHDR版を見た時は本当に衝撃的で、私にとってはこれが本当の3D映像だと思った。QT-4000は液晶泣かせなシーンが多分に含まれているにも関わらず、Z20Xは優秀で、暗部の階調や締まり、立体的な描写が実現できている。QT-4000のようなレファレンスソフトがUltra HD Blu-rayソフトで早期に発売されることを期待したい」と語った。
■世界初のUHD-BD再生対応機「DMR-UBZ1」も登場
HDR体感イベントのトリには、Ultra HD Blu-ray再生対応BDレコーダー「DMR-UBZ1」の開発者である甲野和彦氏が登壇。まず始めにUltra HD Blu-ray規格の概要とUBZ1の高画質技術・高音質技術、そして各種機能を紹介した後、同社4Kテレビ「TH-60CX800N」を組み合わせUltra HD Blu-rayの再生デモを行った。なおUBZ1の実機を使った、一般への再生デモ披露も国内初となった。
再生デモに使われたのは、パナソニックの業務用4KカメラVARICAMで撮影された「岐阜の匠」という作品。デモディスクに記録されているのは、HEVC圧縮された4K/60p/BT.2020/HDRグレーディング素材で、平均ビットレートは70Mbps(VBR)。甲野氏によれば、HEVC 70Mbpsであれば、非圧縮の素材と見比べても遜色は無いという。
甲野氏は「冒頭のシーンでいえば、色が抜けてしまいがちな夕焼けの空も、階調が非常に豊富で、茜色に染まる様子までしっかり表現できるのもHDRの魅力の1つ。金箔を混ぜた染料で提灯の文様を描くシーンも、従来のSDRでは表現が難しかった金色の輝きが再現できている」と語った。
加えて「Ultra HD Blu-rayはまさに“超”高画質のフォーマット。だからこそ、UBZ1は今までに無い、最高のオーディオ・ビジュアル体験を味わってもらうために様々な技術を結集させた。中でも、高精度のマルチタップフィルタ処理である4Kリアルクロマプロセッサplusは画質のキモと考える。我々はこれまでも、色信号の補間技術がデジタル映像を再生する時の画質を左右する最も重要なポイントであると考え、色信号の補間・復元技術に力を入れてきた。HDR素材の場合、信号の振幅が非常に大きく、フィルタリング特性のような過渡応答の影響が如実に出る。HDR時代も我々のこれまでのノウハウがUltra HD Blu-rayの高画質再生に寄与できると考えている。今後発売されるUltra HD Blu-rayタイトルを是非UBZ1で楽しんで欲しい」と話した。