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公開日 2017/09/02 07:29
<IFA>高付加価値路線の追求でシェア好調 − ソニーヨーロッパ粂川社長に聞く
「ハイレゾ、諦めず続ける」
「IFA2017」で数々の新製品を発表したソニー。そのソニーの欧州法人、ソニーヨーロッパ社長を務めているのが粂川滋氏だ。同氏が現在の欧州市場の状況、そしてその中でソニーがどのような取り組みを行っているかを紹介した。
ヨーロッパは国や地域の数が多い。現在ソニーヨーロッパでは、ロシアと旧CISを除く10の地域、40カ国の市場に向けて商品とサービスを提供している。ソニーヨーロッパには2,500名の社員がおり、この人員で40カ国への販売を行っているわけだ。担当領域はコンシューマー、プロ用機器、そして半導体および電子機器の3分野となっている。
ソニー全体の売上げのうち、ヨーロッパが占める割合は4分の1程度。それだけに、平井CEOがソニー全体の目標として掲げる「10%のROE、5000億円の営業利益」という目標に対し、欧州としても貢献していきたいと粂川氏は意気込む。
粂川氏はまず、ヨーロッパ市場の現状を紹介した。テレビは現在、前年比で微減しているが、ヨーロッパではユーロカップ、ワールドカップなどのスポーツ特需が大きく、その反動減が起きているからだという。この7月以降は前年並み程度の水準に市場が回復していると説明した。
カメラについては、コンデジが2ケタ減が続いている状況。ただしプレミアムセグメントはしっかり伸びているという。
それ以外の高級カメラでは、ミラーレス一眼が大きな伸びを示しており、昨年30%程度だった比率が、今年は40%へと伸びたという。
またヘッドホンの市場は堅調に推移。特にワイヤレスモデルが高い伸びを示している。
■引き続き「基本動作を徹底」していく
このような市場環境の中、粂川氏はソニー全社に対して欧州が貢献するには「販売会社としてやらなければいけない基本動作を徹底する企業文化」が必要と説く。
この基本動作の徹底は、以前にソニーヨーロッパ社長を務め、現在ではソニーマーケティングの会長として、グローバルセールス・マーケティングの責任者となった玉川勝氏が叩き込んだものと粂川氏は説明。「玉川が着任して基本動作を植え付けたことが、欧州ターンアラウンドのきっかけになった」と述べた。
粂川氏は「基本動作はどれも当たり前のことだ」と話し、だが「その『当たり前』なことこそ重要」と語る。「データの徹底的な収集」「費用投下の選択と集中」「働き方の徹底指導」「高付加価値商品への注力」がその要諦なのだという。
粂川氏は中でも、高付加価値商品への注力、そして費用投下の選択と集中という点について、数多くの例をもとに説明した。
たとえば液晶テレビでは、ソニーは平均単価が協業他社に比べて25%高いのだという。シェアもトータルでは10%程度だが、55インチ以上は19%、60インチ以上では23%のシェアを持っている。
また有機ELテレビについても、5,000ユーロ市場をBRAVIA A1が牽引している現状を説明。「高価格帯における圧倒的なシェアを取っている。有機ELテレビは、55インチ以上の売上構成比ではすでに液晶を上回っているが、早晩60インチ以上でも抜くことになる」と予測する。
デジカメについては、フルフレームでのブランドシェアで、安定して2位が取れるようになってきたと胸を張る。「右肩上がりにシェアが伸びており、ドイツやスペイン、スイス、オーストリアではフルフレーム市場で1位を取れるような状況になっている」という。
ヘッドホンについても、ノイズキャンセリングとワイヤレスが好調。特に昨年、MDR-1000Xを投入した効果が大きかったという。
もともとソニーはヨーロッパにおいて、ヘッドホンの台数シェアでは1位が続いていたが、金額シェアでは2位が定位置だったという。それが今年の6月からは金額ベースでもトップシェアとなり、今後も1000Xのシリーズ展開によって、「台数・金額共に期待が持てる」とした。
■「正しい商品を、適切な卸価格で、適切な販路で、適切な販売環境で」
今後の施策では、「顧客接点を広げ、クオリティを上げる」ことを課題として挙げる。「オフライン、オンライン共に、顧客との接点は現場、GENBA。そこでどうやって信頼を獲得できるか。とはいっても、ここでも近道はなく、『正しい商品を、適切な卸価格で、適切な販路で、適切な販売環境で販売する』ことが重要だ」と語る。
その一例として、工場出荷後、週次で店頭展示完了のスピードをモニターチェックしたり、アカウント毎の流通在庫の動きを週次でチェックして改善につなげたりといった、ある意味で愚直な取り組みを続けているという。
また店頭展示についてはワイヤレススピーカーの例を挙げ、「ヨーロッパでは静かな店が多いが、店頭でもなどをやると劇的に販売が伸びる。やることをしっかりやるとかなり伸びる印象で、まだ取りこぼしているところを取っていけるという感触がある」という。
オンラインについては、ヨーロッパはAmazonのようなグローバルオンラインショップのほか、家電量販店のオンラインショップ、そしてローカルショップのオンラインショップの3タイプがあると説明。
粂川氏はこれら3タイプの販売店について「どこもビジネスが伸びている」とし、公式サイトからこれらのオンラインショップへの誘導などをきっちり行うことを徹底している。これによって販売機会損失の最小化を図っているのだという。
さらに、ソニーが全社の課題として掲げている循環型(リカーリング型)ビジネスの追求については、デジカメ事業を例に説明した。
デジカメ事業は、たとえばαが一台売れると、交換用レンズやアクセサリー、オプション品、消耗品など、様々な周辺機器が継続的に売れていく傾向がある。
このためソニーでは、「欧州独自のフォト文化への経緯へと貢献」をキーワードに、プロカメラマンとのタイアップを行ったり、独自の写真アワード「SWPA」を10年間続けて応募作品数を20万点以上にしたりなど、様々な活動を展開している。
さらにプロ向けには、貸し出しサービスでαを試してもらったり、プロフェッショナルサービス・サポートを拡大させている。またサポート拠点を欧州各国で拡大させているほか、プロ向けサービスも充実させている。
■「ハイレゾ、諦めずに粘り強く続ける」
粂川氏への質疑応答のうち、いくつかを紹介しよう。
粂川氏に欧州でのハイレゾ受容について尋ねたところ、「欧州は基本的にストリーミングなので、音楽をため込む文化がない。日本、アジアに比べると少ない」と説明した。ただし「高級プレーヤーなども出しているので、諦めずに粘り強く続けている」という。
またテレビのOSに関する質問に対しては、「購買動機で重視されているのは明らかに画質。ただしネットワークでコンテンツを楽しむ方は増えており、そうなるとGoogleとの連携が生きてくる。Androidの価値はこれから出てくる」とした。
一方で粂川氏は「今年のモデルのうち、4Kの一番下位モデルはLinuxを採用している。昨年はAndroidだった。これで売れ行きにどのような影響が出るのか、Androidがどの程度受容されているかを見ていきたい」と述べ、冷静に顧客の動きを分析する考えを示した。
ヨーロッパは国や地域の数が多い。現在ソニーヨーロッパでは、ロシアと旧CISを除く10の地域、40カ国の市場に向けて商品とサービスを提供している。ソニーヨーロッパには2,500名の社員がおり、この人員で40カ国への販売を行っているわけだ。担当領域はコンシューマー、プロ用機器、そして半導体および電子機器の3分野となっている。
ソニー全体の売上げのうち、ヨーロッパが占める割合は4分の1程度。それだけに、平井CEOがソニー全体の目標として掲げる「10%のROE、5000億円の営業利益」という目標に対し、欧州としても貢献していきたいと粂川氏は意気込む。
粂川氏はまず、ヨーロッパ市場の現状を紹介した。テレビは現在、前年比で微減しているが、ヨーロッパではユーロカップ、ワールドカップなどのスポーツ特需が大きく、その反動減が起きているからだという。この7月以降は前年並み程度の水準に市場が回復していると説明した。
カメラについては、コンデジが2ケタ減が続いている状況。ただしプレミアムセグメントはしっかり伸びているという。
それ以外の高級カメラでは、ミラーレス一眼が大きな伸びを示しており、昨年30%程度だった比率が、今年は40%へと伸びたという。
またヘッドホンの市場は堅調に推移。特にワイヤレスモデルが高い伸びを示している。
■引き続き「基本動作を徹底」していく
このような市場環境の中、粂川氏はソニー全社に対して欧州が貢献するには「販売会社としてやらなければいけない基本動作を徹底する企業文化」が必要と説く。
この基本動作の徹底は、以前にソニーヨーロッパ社長を務め、現在ではソニーマーケティングの会長として、グローバルセールス・マーケティングの責任者となった玉川勝氏が叩き込んだものと粂川氏は説明。「玉川が着任して基本動作を植え付けたことが、欧州ターンアラウンドのきっかけになった」と述べた。
粂川氏は「基本動作はどれも当たり前のことだ」と話し、だが「その『当たり前』なことこそ重要」と語る。「データの徹底的な収集」「費用投下の選択と集中」「働き方の徹底指導」「高付加価値商品への注力」がその要諦なのだという。
粂川氏は中でも、高付加価値商品への注力、そして費用投下の選択と集中という点について、数多くの例をもとに説明した。
たとえば液晶テレビでは、ソニーは平均単価が協業他社に比べて25%高いのだという。シェアもトータルでは10%程度だが、55インチ以上は19%、60インチ以上では23%のシェアを持っている。
また有機ELテレビについても、5,000ユーロ市場をBRAVIA A1が牽引している現状を説明。「高価格帯における圧倒的なシェアを取っている。有機ELテレビは、55インチ以上の売上構成比ではすでに液晶を上回っているが、早晩60インチ以上でも抜くことになる」と予測する。
デジカメについては、フルフレームでのブランドシェアで、安定して2位が取れるようになってきたと胸を張る。「右肩上がりにシェアが伸びており、ドイツやスペイン、スイス、オーストリアではフルフレーム市場で1位を取れるような状況になっている」という。
ヘッドホンについても、ノイズキャンセリングとワイヤレスが好調。特に昨年、MDR-1000Xを投入した効果が大きかったという。
もともとソニーはヨーロッパにおいて、ヘッドホンの台数シェアでは1位が続いていたが、金額シェアでは2位が定位置だったという。それが今年の6月からは金額ベースでもトップシェアとなり、今後も1000Xのシリーズ展開によって、「台数・金額共に期待が持てる」とした。
■「正しい商品を、適切な卸価格で、適切な販路で、適切な販売環境で」
今後の施策では、「顧客接点を広げ、クオリティを上げる」ことを課題として挙げる。「オフライン、オンライン共に、顧客との接点は現場、GENBA。そこでどうやって信頼を獲得できるか。とはいっても、ここでも近道はなく、『正しい商品を、適切な卸価格で、適切な販路で、適切な販売環境で販売する』ことが重要だ」と語る。
その一例として、工場出荷後、週次で店頭展示完了のスピードをモニターチェックしたり、アカウント毎の流通在庫の動きを週次でチェックして改善につなげたりといった、ある意味で愚直な取り組みを続けているという。
また店頭展示についてはワイヤレススピーカーの例を挙げ、「ヨーロッパでは静かな店が多いが、店頭でもなどをやると劇的に販売が伸びる。やることをしっかりやるとかなり伸びる印象で、まだ取りこぼしているところを取っていけるという感触がある」という。
オンラインについては、ヨーロッパはAmazonのようなグローバルオンラインショップのほか、家電量販店のオンラインショップ、そしてローカルショップのオンラインショップの3タイプがあると説明。
粂川氏はこれら3タイプの販売店について「どこもビジネスが伸びている」とし、公式サイトからこれらのオンラインショップへの誘導などをきっちり行うことを徹底している。これによって販売機会損失の最小化を図っているのだという。
さらに、ソニーが全社の課題として掲げている循環型(リカーリング型)ビジネスの追求については、デジカメ事業を例に説明した。
デジカメ事業は、たとえばαが一台売れると、交換用レンズやアクセサリー、オプション品、消耗品など、様々な周辺機器が継続的に売れていく傾向がある。
このためソニーでは、「欧州独自のフォト文化への経緯へと貢献」をキーワードに、プロカメラマンとのタイアップを行ったり、独自の写真アワード「SWPA」を10年間続けて応募作品数を20万点以上にしたりなど、様々な活動を展開している。
さらにプロ向けには、貸し出しサービスでαを試してもらったり、プロフェッショナルサービス・サポートを拡大させている。またサポート拠点を欧州各国で拡大させているほか、プロ向けサービスも充実させている。
■「ハイレゾ、諦めずに粘り強く続ける」
粂川氏への質疑応答のうち、いくつかを紹介しよう。
粂川氏に欧州でのハイレゾ受容について尋ねたところ、「欧州は基本的にストリーミングなので、音楽をため込む文化がない。日本、アジアに比べると少ない」と説明した。ただし「高級プレーヤーなども出しているので、諦めずに粘り強く続けている」という。
またテレビのOSに関する質問に対しては、「購買動機で重視されているのは明らかに画質。ただしネットワークでコンテンツを楽しむ方は増えており、そうなるとGoogleとの連携が生きてくる。Androidの価値はこれから出てくる」とした。
一方で粂川氏は「今年のモデルのうち、4Kの一番下位モデルはLinuxを採用している。昨年はAndroidだった。これで売れ行きにどのような影響が出るのか、Androidがどの程度受容されているかを見ていきたい」と述べ、冷静に顧客の動きを分析する考えを示した。